
集英社の女性誌ポータル「HAPPY PLUS」 AWS移行からコンテナ化、今後の進化を総合支援
株式会社集英社
公開日:2022年12月6日
- 「HAPPY PLUS」プラットフォームのAWS移行とEC2運用を実施
- CMSの刷新を機会にEC2からコンテナへの移行を検討
- パートナーのクラスメソッドから定期的に情報を収集し課題解決の道を探る
- AWS Fargateを導入してコンテナ化を実現
- 運用コストの低減とインフラマネジメントの効率化に寄与
- AWSアカウントの運用管理ツールのnOps導入など改善を継続
女性のライフスタイルにハッピーをプラスする
集英社では「Seventeen」「non-no」「SPUR」「BAILA」「Marisol」など女性誌のWebメディアとオリジナルの媒体の計13サイトを一元化したポータルサイト「HAPPY PLUS」(ハピプラ)を運営しています。2022年7月末時点で会員数300万人、1588万ユニークユーザー、SNSフォロワーも2252万という巨大なファン層を抱え、メディアの中には月間1000本以上の記事が公開されるような大規模サイトの運営を、デジタルソリューション部プラットフォーム室のメンバーが支えています。

コスト削減を目指しAWS移行した2010年代前半
集英社がHAPPY PLUSのインフラ運用でクラスメソッドと出会ったのは2013年のことでした。12年11月に前身となるWebサイトをHAPPY PLUSへリニューアル。トレンド情報だけでなくECとの連携も強化し、アクセス数は大きく伸び始めました。
「集英社のデジタル環境の運用管理は当時SIerに委託していて、全社オンプレミス環境の一部でHAPPY PLUSを運用していました。リニューアル後はユーザー数増加やアクセス集中のトラフィック急増への対応、また規模の拡大につれてインフラコストが膨らむなど様々な課題が生じたため、独自のインフラを用意する必要に迫られ、パートナーになる会社を探し始めました」(横田さん)
可用性や柔軟性、コスト削減を考えるとクラウドへの移行が妥当な選択です。同社は複数ベンダーから話を聞き、クラスメソッドに白羽の矢を立てました。
「打ち合わせで細かい点まで説明をしてくれるだけでなく、ビジネス面にかかわる質問までしてくれました。単にAWSに詳しい会社ということではなく、どうすればビジネス要件にフィットする構成になるかを発注前から親身に考えてくれました」(横田さん)
そしてAWSへの移行は2014年に完了しました。「(2010年代前半の当時)集英社のクラウド採用第一号だったので、情報システム部門などから不安の声も上がりました。そこで、AWS移行でセキュリティを担保できることについて、クラスメソッドに社内向け説明資料を作成してもらったことも採用の後押しになりました」(横田さん)と振り返るクラウド移行は、オンプレミス環境と比較して約60%のコスト削減につながっています。
定例ミーティングからプラットフォーム移行のサポートに
運用フェーズに入ってからも、HAPPY PLUSとクラスメソッドとの関係はAWS総合支援サービスの技術アドバイザーで継続します。インフラからアプリまで全体の開発をまとめている田川さんは「月次の定例ミーティングで、AWSの最新のサービスや技術情報を共有してもらいながら、実際に構築してみたいシステムの相談などを受けてもらっています」と、その支援に安心感を抱いています。
同じくプラットフォーム室でCMS開発のマネジメントに携わる安達さんも「サポートのおかげでAWSならではの問題が起きてもすぐレスポンスがもらえて助かっています。クラスメソッドだけで解決できなかった事象をAWSと連携し解決してもらったことも何回かあります」と安心して運用できる環境が整えられていることを説明します。
そうした体制の中で、HAPPY PLUSのプラットフォーム上で動くアプリケーションにも動きがありました。大きなものとしてCMSの変遷があります。それまで外部に開発を依頼し、運用保守を集英社内でまかなう体制でしたが。媒体数が多く、更新機会が多いHAPPY PLUSは、CMSの内製を目指します。
田川さんは「CMS開発と移行の際に、社内ではまだインフラ面のノウハウが少なかったため、クラスメソッドにコンサルに入ってもらい支援してもらいました」と振り返ります。そしてCMSの移行とともにフロントのWebサイトも同じプラットフォームに乗せることとなり、プラットフォームの重要性はさらに高まってきました。
EC2からコンテナへの移行をクラスメソッドの支援で実現
CMSの移行は、インフラやアプリケーションの入替えを段階的に進めるフルリプレースになりました。田川さんは、その経緯について「最初は@BAILAのサイトリニューアルから実施したのですが、この時点ではインフラはEC2のオートスケーリングの構成を採っていました。トレンドに沿ってコンテナ化も検討していましたが、Fargateの料金が高かったことや、コンテナやインフラのステートレスの考えに対する知識が不足していたことから、この時点ではEC2を継続したのです」と語ります。
ただし手をこまねいていたわけではありません。「Fargateでコンテナ化をすると、EC2のようにマシンイメージを作り続けなくて済みます。EC2自体の管理をしなくても良いメリットも生じます。Dockerfile の書き方やDocker Composeの勉強もしていて、技術的なチャレンジという側面もあります。Fargateの料金が低廉化してきたタイミングでコンテナ化に踏み切ることにしました」(田川さん)。
2020年、同社はMAQUIA ONLINEのニューアルからコンテナ化を実施し、それ以降は@BAILAも含めFargateを利用する形でリニューアルしていきました。現在は13メディアのうち3分の2が実施済みです。
「Fargate利用にあたっては、AWSのリソース構築の知識が不足していたので、クラスメソッドには基盤面でかなり補完してもらいました。コンテナ化したシステムで重要になるテストやビルドを短期間に実施し品質を維持するCI/CDとの連携部分や、Dockerfileの作成にフォーカスできましたね」(田川さん)
横田さんは「全体のトラフィックが増加する中で、CPM(広告のインプレッション単価)は確実に下がりました。2022年秋の時点で移行前の3分の1近くです」と効果を実感。安達さんも「CDNのキャッシュの効果とともに、コンテナ化も低コスト化に寄与しています」と分析します。
こうした定量的な効果だけでなく、プラットフォーム室の業務効率も上がっているようです。田川さんは「コンテナ化すればEC2に比べ若干コストは上がってしまいます。それでも、EC2の管理などインフラに対してかけていたリソースを、アプリケーションの開発や運用に振り分けられるようになった効果は大きい。インフラマネジメントの側面で、格段に楽になりました」と語ります。
コストや運用性を追求して挑戦を継続
集英社はさらに新しい取り組みを進めています。「運用コストは常に検討していて。最近では無駄なAWSのリソースがないか可視化できるnOpsを提案してもらい、導入しました」(田川さん)。
横田さんは、集英社の情報システムへの考え方として「新しい挑戦を止めることはあまりありません。媒体数も多く、リニューアルのタイミングも多くあるため、その都度、最適な技術を取り入れる挑戦をしていて、挑戦がうまく行けば横展開につなげています。一方で、1媒体で問題があっても全体のパフォーマンスに影響を及ぼさない独立した体制であることも、挑戦しやすい環境の一因かもしれません」と語ります。
運用コストを管理するnOpsの導入だけでなく、大手ポータルサイトで記事が取り上げられることによるトラフィックの急増に耐える体制の強化も怠ることはできません。
プラットフォーム室では技術的な挑戦を支援する環境として、テックフォーカスデイ(TFD)という日を設けているそうです。安達さんは「現在は毎週金曜日をTFDに当てています。普段の開発をするのではなく、新しい技術への挑戦などに集中しています。最近では、オンデマンドのオートスケーリング設定が可能なAmazon Aurora Serverlessの最新版であるv2の導入検討を行っています」とさらなるチャレンジに目を向けています。
田川さんも「Aurora Serverless v2についても、クラスメソッドからコストメリットや運用面の注意点などの情報を共有してもらっています。私がシミュレーションしたところでは現状よりも高額になりそうでしたが、クラスメソッドからは最適な導入でコストダウンできるというアドバイスももらいました」と、プラットフォーム室の努力とクラスメソッドのサポートがチャレンジの両輪となっていることを改めて感じているようです。
こうしたクラスメソッドとの関係について、横田さんは、「インフラについては、問題ないときはあまり何かを感じることはありません。クラスメソッドとの関係の中で、問題が起きていないことはありがたいですし、新しいチャレンジをサポートするように今後もお付き合いを続けてもらいたいと感じています」と語ります。クラスメソッドのAWS総合支援は、HAPPY PLUSのインフラ担当の役割を担いながら、これからの発展も支えていくようです。