Webサイト「ほぼ日」の運営や、「ほぼ日手帳」の企画・販売、「生活のたのしみ展」などのイベント開催を手がける株式会社ほぼ日。同社は自社ECサイト「ほぼ日オンラインストア」や各種コンテンツに関するお客様問合せ対応として、クラウド型カスタマーサービスプラットフォームの「Zendesk」を採用。クラスメソッドの支援のもと、検討から約4カ月で導入し、運用を開始しました。プロジェクトとその成果について、経営企画管理チームの宮さん、カスタマーリレーションズチーム(以下、CRチーム)の中島さん、堀江さんにお話をうかがいました。
年間問合せ数の5分の1が「ほぼ日手帳」発売月に集中
コピーライターの糸井重里氏が立ち上げたWebサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」。現在は、名称を「ほぼ日」に変更し、サイトの運営に限らず、「ほぼ日手帳」などオリジナル商品の企画・開発・販売や、学びのプラットフォーム「ほぼ日の學校」の企画・開発・運営、「TOBICHI」「生活のたのしみ展」などの店舗・イベントの企画・運営も行っています。そんな同社の屋台骨を支えているのが「ほぼ日手帳」。2025年版は過去最高の96万部を販売、北中米・ヨーロッパを中心に海外にも展開し、ほぼ日全体の売上高の67.4%がほぼ日手帳(2025年8月期)と、同社の成長を牽引しています。
同社のCRチームでは、自社ECサイト「ほぼ日オンラインストア」で販売する「ほぼ日手帳」をはじめとした多種多様な商品、「ほぼ日の學校」などのアプリサービス、イベントに関するお客様からの問合せに対応しています。
「様々な問合せが寄せられる中、ピークを迎えるのが『ほぼ日手帳』の新年版の発売日である9月1日です。CRチーム全体で対応する年間の問合せのうち、約20%が9月単月に集中しています」(中島さん)
問合せのほとんどはメールによるもので、CRチームはフリーワードで記載された件名と本文を読みながら対応してきました。しかし、記載されている内容ですべてを把握することが難しい場合も多く、お客様に詳細を再度メールで確認する作業も発生していました。
「本文中にご注文番号やお電話番号などのご注文に関する情報の記載がない場合、こちらでお客さまのご注文情報を特定することがむずかしく、確認のためにあらためてお客さまに情報をお知らせいただく必要があります。ほぼ日手帳の売上の半分以上が海外ということから、海外から英語で寄せられるお問合せも多く、英語対応も課題となっていました」(堀江さん)
くわえて、メールシステムにかかる負荷の軽減や、システムダウンへの対応も急務となっていたこともあり、ほぼ日のサイト内に問合せフォームを設置して効率化を図ることにしました。
「1998年の創刊当時より、ほぼ日ではお客様お一人おひとりとのメールを通じたコミュニケーションを積み重ね、大切に育ててきました。この「つながり」を維持しながら、拡大するサービス規模の中で、いかにして快適なサポートをお届けできるかが私たちの課題でした。 議論の末、お客様のご状況をいち早く理解し、解決へと導くための手段としてフォームを活用することこそが、お客様の満足につながると確信し、導入へと踏み切りました。」(中島さん)
こうしたカルチャーを守る意味で、Zendeskの導入後もお客様との対話用にはメールのリンクを残しており、問合せ窓口との棲み分けを行っています。
お客様とのあらゆるやり取りを本質的に管理するZendeskの思想に共感
問合せフォームの設置を決めた同社は、複数のカスタマーサービスプラットフォームを比較。顧客対応に関する様々機能を網羅しており、国内外で多数の導入実績を誇ることからZendeskの採用を決定、クラスメソッドの支援のもとフォームの設置を含めた問い合わせ対応機能全体をZendeskで構築することにしました。
「お客様とのあらゆるやり取りを本質的に管理するZendeskの思想に共感したのが採用の決め手です。またZendeskについて調べて理解していくにつれて、いずれは社内の他システムとの連携も必要になると考え、信頼できるパートナーを探すことにしました。クラスメソッドには以前にデータ分析基盤の構築で支援をいただいた実績があり、プロジェクトマネジメントや技術力に対して好印象を抱いていましたので、Zendeskの導入もお手伝いいただくことにしました」(宮さん)データ分析基盤構築は2024年に実施したプロジェクトです。クラウドデータプラットフォームのSnowflakeとBIツールであるTableauのライセンスリセールをクラスメソッドが提供、また技術パートナーも紹介することで、3社体制での構築を行いました。
こうして始まったZendeskの導入プロジェクトは、経営企画管理チーム、ITチーム、CRチームのメンバー計5名がメインで担当。まずは2025年3月から5月にかけてトライアルを実施しました。2週間のPoCではパフォーマンスやシステム間連携などシステム側の対応をチェック。CRチームでもいち早くZendeskに触れ、問合せフォームのデザインなどについて、様々なリクエストをクラスメソッドに送りました。
PoCや環境構築と並行してCRチームでは既存の業務を洗い出し、標準化を図ることにしました。
「ほぼ日手帳発売の9月は、1日に大量のメールが寄せられます。これまでは、お客様のご希望や緊急度(出荷スケジュール等)にあわせて一番よろこんでもらえる対応を行うために、1件ずつメールに目を通し、人の手による分類を行っていました。 この丁寧な確認は私たちが大切にしている工程のひとつですが、確認作業に時間がかかってしまうため、結果として返信のスタートを遅らせる要因にもなっており、「丁寧さ」と「スピード」をどう両立させるかが大きな課題でした。そこで、過去の問合せ内容をもとにチーム内で分類方法を相談し、問合せフォームからの受信時に自動分類ができるようにしました」(中島さん)
要件定義の過程において、同社は問合せフォームだけでなく、ヘルプページもZendeskで再整備することを決定し、ほぼ日のサービス全体のヘルプページポータルとして「ヘルプセンター」を設置することにしました。
「Zendesk導入のメインの目的は、ほぼ日オンラインストアやほぼ日手帳のお客様対応ですが、アプリサービスの『ほぼ日の學校』や犬猫のSNSの『ドコノコ』などのヘルプページが分散している問題もありました。そこでほぼ日を利用するすべてのお客様、および自社の社員が困った時にいつでも見られるヘルプセンターを目指して整備することにしました」(宮さん)
クラスメソッドの支援を受けて4カ月で導入
3カ月のトライアルを経て、2025年5月よりZendeskの本格導入に着手。基本トレーニング、メールデータの移行、ヘルプページのデータ移行や記事のカスタマイズ、外部システムとの連携を実施し、6月6日より問合せフォームによる受付とヘルプページの公開を開始しました。
「ほぼ日27周年の創刊記念日である2025年6月6日にサイトをリニューアルし、『ほぼ日刊イトイ新聞』の名称も『ほぼ日』に変更しました。それに合わせる形でフォームやヘルプセンターの運用開始を計画していたこともあり、導入作業はタイトなスケジュールになりましたが、クラスメソッドの献身的なサポートのおかげで業務を一切止めることなくZendeskによる運用に切り替えることができました」(宮さん)
メールやヘルプページのデータ移行はクラスメソッドが主導。移行後の確認、カスタマイズなどは同社のプロジェクトチームが主導し、クラスメソッドが後方支援を担当しました。
「過去のメールデータの移行をする上では、どこまでのデータを移行してどこまでをアーカイブすべきか、パフォーマンスとの兼ね合いを考慮した適正ラインをアドバイスいただけたのが助かりました。また英語版のヘルプページは単なるデータ移行ではなくフルスクラッチに近い形で作りこんでいただき、海外のお客様でも迷わない、わかりやすいヘルプページを作り上げることができました」(宮さん)
検討から導入まで約4カ月にわたりプロジェクトを支援したクラスメソッドに対しては、緻密なプロジェクト管理と、寄り添った対応を評価しています。
「以前に私が担当したデータ分析基盤の構築プロジェクトにおいても、こちらのやりたいことに対して的確な提案があり、様々な質問に対し明瞭な回答をいただいた記憶が残っています。今回のZendeskの導入でも、私たちの漠然とした要望に対して意図をくみ取ったうえで必要な要件を引き出してくれました。おかげさまでプロジェクトもスムーズに進み、スケジュールに間に合わせることができました」(宮さん)
「『多くのお客様が楽しみにしてくださっている9月を、万全の体制でお迎えしたい』という強い想いでスタートしたプロジェクトでした。だからこそ、現場で培ってきた経験や気付きを余すところなくシステムに反映させるべく、クラスメソッドの担当者様には思いつく限りリクエストを投げかけさせていただきました。難しいお題に対しても実現方法を一生懸命に考えてくださり、『これができたら』と相談したことが気づけば実装されているという理想的な状態だったと思います。プロジェクト中も常に一緒に走っている感覚があり、心強い存在でした。」(中島さん)
「スムーズな対応を行うためにも、業務の流れを大きく変えたくないという思いもありました。クラスメソッドの担当者様にはチケット管理のビューの見せ方や、ステータス管理の分類など、何度もリクエストしました。本当に細かい依頼も多数出したのですが、ひとつひとつ丁寧にご対応いただき、使いやすいシステムになりました」(堀江さん)
9月の問合せ集中時も安定対応。しっかりとお客様と向き合える体制を実現
Zendeskの導入を経て迎えた2025年9月の発売時期には、お問い合わせが集中する局面でも混乱することなく、お一人おひとりへ落ち着いてご案内をお届けすることができました。CRチームの負担も前年までと比べて大幅に軽減されたといいます。
「お問い合わせの内容はシステムによって自動的に分類され、お急ぎのご用件などがひと目でわかるようになりました。 これにより、全員が「確認」ではなく「回答」にいち早く取り組むことできるようになり、お客様へのご返信をこれまでよりも早く始めることができました」(堀江さん)
「以前のメールシステムでは、構造上どうしてもお問い合わせの受信までにタイムラグが生じることがありました。 Zendesk導入後は、お客様からのメッセージがリアルタイムに届くため、お待たせすることなく、スピーディーな一次対応が可能になりました。また、対応状況や優先度が可視化されたことでチーム全体で効率よく業務を進められるようになり、繁忙期であっても落ち着いた環境で、確実なオペレーションを行えるようになっています」(中島さん)
ヘルプページの内容を充実させ、お客様が自己解決しやすくなったことも、問合せ対応業務の効率化につながっています。
「体感として、お客様ご自身ですぐに解決できるような、よくあるご質問へのお問い合わせは減っている印象です。 ヘルプページをご覧いただいたうえでお問い合わせくださっていると感じることが増え、私たちも状況をすぐに理解でき、よりスムーズなご案内ができるようになっています。」(堀江さん)
Zendeskの分析機能やAIチャットボットを活用しながらサービス改善を継続
CRチームを対象にスモールスタートで開始したZendeskの活用は、順次「ほぼ日手帳」、アプリサービス、イベントの企画・開発・運営チームに横展開し、基幹ツールとしての地位を高めつつあります。2025年10月リリースの「ほぼ日手帳アプリ」でも、Zendeskの柔軟性を活かして短期間に問合せ対応のシステムを立ち上げることができました。
今後はお客様から寄せられた問合せやヘルプページで参照された記事などをZendeskの分析機能を活用しながら深掘りし、業務のさらなる効率化に取り組んだり、サービス改善に取り組んだりしていく方針です。
また、ZendeskのAIチャットボットを活用したリアルタイム応答も検討中で、「評価を続けていきたい」と宮さんは語ります。
「幅広い商材を扱うほぼ日オンラインストアですので、AIチャットボットで気軽に問い合わせることができれば、お客様の利便性も向上すると考えています。とはいえ、私たちはお客様とのコミュニケーションも大切にしていますので、カルチャーも考慮しながら将来のあり方を追求していきます」(宮さん)
クラスメソッドには、ほぼ日のカルチャーに寄り添う形でお客様の困りごとが解決できるよう、Zendeskを始めとしたソリューションの提案や、新たな情報提供に期待を寄せています。クラスメソッドは、ほぼ日が取り組むCXの強化と業務の効率化に引き続き貢献してまいります。


