新潟県の南西部である上越地方に位置し、県内では新潟市、長岡市に次いで第3位の人口を擁している上越市。現在、市民に向けて便利でよりよいサービスを提供するために自治体DXを推進しています。
クラスメソッドは、上越市役所の主に若手職員向けに生成AIワークショップを実施。よりよい結果を得られるプロンプトの作成方法や、文書作成支援ツールとしての活用法、行政での活用を想定したアイデア創出方法などを講義・実習しました。今回は、上越市役所のデジタル政策を手がける吉田さんと三輪さんにインタビューを実施。これまでの課題からワークショップで得られた成果と、今後のDX活用の展望までうかがいました。
職員の業務効率の向上と市民サービスの向上を目的とした生成AIチャットボットの導入
民間IT企業に勤める専門家をDX戦略官、DX推進官として迎え入れるなど、庁内のDXを推進する上越市。IT企業の誘致も積極的に行っており、新潟県と連携しながら、助成金の提供だけでなく検討時期から進出後のフォローまで手厚くサポートしています。
2003年には、上越市と当時の新井市(2005年に編入合併し、現在は妙高市)が働きかけ、有志企業によるNPO法人上越地域活性化機構(ORAJA/オラジャ)が設立されました。同団体は、上越地域においてITを基盤技術として提供することで、産業および地域活動を活性化するために活動しています。クラスメソッド上越オフィスもその会員であり、これまで「上越地域IT企業合同会社説明会」「大人のプログラミングコンテスト」といったイベント開催などの支援を行ってきました。
「生成AIの性能が急速に高まり社会現象になっていたことを受け、昨年は全国でも多くの自治体が生成AIを導入しました。全国的な生産年齢人口の減少を考えれば、今後当市職員の人的リソースはさらにひっ迫していくと考えられます。生成AIの活用で職員1人ひとりの業務効率を高められないか、また一層効果的な市民サービスの検討を補助できないかと考え、生成AIチャットボットの導入を決めました」(三輪さん)
庁内での生成AI活用の定着をめざしワークショップを開催
こうして生成AIチャットボットを導入した同市ですが、吉田さんは「思うように活用が進まなかった」といいます。
同市では、生成AIチャットボットを導入した4ヵ月後に、職員に対しアンケートを実施しました。その結果、業務で活用していたのは全体の3割程度で、その中でも“生成”用途で活用できていたのは2割程度にとどまることが分かりました。
そこで、職員のITリテラシーを向上させる目的で、生成AI活用ワークショップを庁内で実施。その講義をクラスメソッドが担当しました。講義は1日2回開催され、主に若手職員を対象に、各回対面30人程度、オンラインで20人程度が参加しました。
講義内容は「生成AIとは何か」といった基礎的なものから、プレゼンの構成案作り、行政文書の作成に役立つ活用方法などの実務的な活用法の紹介、さらに生成AIチャットボットの活用のポイントであるプロンプトについては、効果的な回答が得られるような書き方をフォーマット化し、ハンズオン形式で手を動かしながら解説するというものでした。
「1時間×2回という短い時間でしたが、生成AIの活用に必要なノウハウがギュッと凝縮されていると感じました。受講後の職員に対するアンケートでも好意的なものが多く、『使い方を学べてよかった』『プロンプトを書く際にハッシュタグで役割を与えることが効果的なのは知らなかった』、また『時間が短かったので、もっとボリュームがあっても良かった』といった感想までもが集まりました。講義後、クラスメソッドの講師に、複数の職員が質問に行く様子が印象に残っています」(三輪さん)
最終的には政策決定の場でも生成AIを活用したい
生成AI活用ワークショップ自体は主に若手職員を対象としたものでしたが、開催後はその録画映像を庁内で公開し、さまざまな年代の職員が視聴しているといいます。
また、6月から同市は研修シーズンに入りましたが、課長以下全員の必修講座であるDX講座の中でもその内容が教材として活用されています。
「生成AIチャットボットに期待している一方、現状は業務に活用できていない職員が多いので、利用者数を増やしていくのが今の第一目標です。そのためにも、様々な機会を捉えワークショップの内容を普及し、職員のITリテラシーの向上に努めていきたいです」(三輪さん)
一方、吉田さんは「上越市の地域DX」について、今後の展望を以下のように語ります。
「上越市では、人手不足に悩む企業も多く、あらゆる産業においてデジタル化による業務効率化は重要施策の1つです。そのために生成AIのような強力なツールをどこにどうやって活用していけばよいのか、具体的な施策に結び付けるため、今後も議論を進めていきます。また、市民に対しても、例えば行政サービスを自宅にいながら受けられるなど、デジタルツールを活用しながら、より便利な市民サービスを作っていければと考えています。将来的には政策決定の場においても、エビデンスベースの決断を支援するような形で、自然と生成AIが活用されている状態にしたいですね」(吉田さん)
最後に、日頃からORAJAを通じて密に連携しているクラスメソッド上越オフィスに対して、吉田さんと三輪さんに印象を聞きました。
「クラスメソッドはAWSなどのクラウドに関して指折りの知見を有しています。行政システムも従来のオンプレミスからクラウドへの移行が進んでいますので、今回のような生成AI以外にもさまざまな最先端領域に関しても知見をお借りしたいと思っています。ORAJAにクラスメソッドが参加していることは、上越市にとって非常にありがたいことです。今後も、行政・地域両面でDXを進めていく中で、力を借りられればと思います」(三輪さん)
一層市民が住みやすく、より豊かな街にするためにDXを進める上越市。クラスメソッド上越オフィスは、デジタルの力で今後も上越地域に貢献し続けます。