来年創業120周年を迎えるコクヨは、データとテクノロジーを活用できるスキルの習得による既存の課題解決、新規ビジネス創出を目指し「KOKUYO DIGITAL ACADEMY」を2023年に開校しました。従業員は身に付けたいスキルに応じた講座を選び、座学と実践を通してスキルを獲得することができます。
また、従業員が発案したアイデアを形にするために、全社員が利用できるチャット形式の生成AI環境「KOKUYO AI Chat」も公開しました。本案件では、この生成AI環境の構築・運用保守・技術支援などをクラスメソッドが担当しています。その運用状況や、今後の展望まで、コクヨビジネスサプライ事業本部 Bサプライ事業戦略室の鳥居さん、コクヨ経営企画本部 イノベーションセンターの小野寺さんにお話を伺いました。
社内に生成AIへの高い関心があった
コクヨは2023年6月に、社内向けのデジタル人材教育・実践プログラム「KOKUYO DIGITAL ACADEMY」を開校しました。IT、AI、DD(Data Driven)の3分野から好きな講座を選択し、座学・実践ワークショップを通して、それぞれの分野のリテラシーや実践スキルの獲得ができるというものです。
所属部署に関係なく全従業員が受講でき、座学やワークショップは勤務時間内に行われます。
「今の仕事の仕方ではダメだ、ITを学ばなければと危機感を募らせていた従業員が多かったんです。特にAIに関しては、事業部門側の熱量が上がってきているのを感じていました。アカデミーを開校しなくても各自でやり始める、そんな空気が醸成されていましたね」(小野寺さん)
KOKUYO DIGITAL ACADEMYの中のAI部門の講座である「文系AI塾」は9月下旬に最終講義を迎えました。その中で、業務改善やお客様にインパクトを与えるようなAIの企画を立案し発表する機会がありました。前もって募っていたアイデアも併せると、その数は3,000ほどにおよびます。
クラスメソッドと“実験精神”の共鳴
同社はKOKUYO DIGITAL ACADEMYの卒業生、卒業と同等のスキルを持つ従業員向けに、実践経験プログラムである「GPT-Lab」を設立。そして、従業員から集まったビジネスアイデア、業務改善アイデアを形にするため、社内専用の生成AI環境が必要になりました。
実は小野寺さんは、クラスメソッドの技術系ブログである「DevelopersIO」の読者でした。元々AWSを活用して、2013年頃に自社のコーポレートサイトをクラウド化するなどの業務を担っていました。その頃から、クラスメソッドの事例やブログ記事を参考にされていたそうです。
「さまざまなパートナー様がいる中、新しいサービスに対して実験精神をもって活用してみて、そこで得た知見を公開している企業は少ないと思います。エンジニアに有益な情報を共有しながら業界を引っ張っていくクラスメソッドさんのようなスタイルに対して非常に好感を持ちました。私たちの『実験カルチャー』と通じるところも感じましたので、今回の案件をお願いしました」(小野寺さん)
密なコミュニケーションで生成AI環境を作り上げる
今回クラスメソッドは、まず生成AIプラットフォーム「KOKUYO AI Chat」に用いられるインフラ環境の構築と運用保守という形で技術支援しました。生成AI環境に関しては、Amazon Bedrock、ChatGPT、Microsoft Azureなど複数の基盤モデルを一つの画面から簡単に切り替えられるようにしています。
契約は8月からスタートし、11月まではAWSインフラを含むAI生成環境の構築を行いました。AIが社内情報をソースに情報を生成しても安全な、セキュリティ対策が施されたインフラをクラスメソッド側でご用意しています。そして12月からは「GPT-Lab」でメンバーが実際にAI開発を行っているため、コミュニティ活性化を含めた実践的な支援などの目的で引き続きお手伝いしていきます。
クラスメソッドとともに生成AI環境を構築していく中で、小野寺さんと鳥居さんは以下のような感想を持ったと言います。
「生成AI自体が、ここ1年で急速に広まり、技術の進歩が速い領域です。システム構築の場合は私たちが事細かに、ベンダーさんに指示を出させていただくことが多いのですが、今回の場合はそうした未知の領域ということもあって、大まかな指示になってしまいました。しかし、クラスメソッドさんは私たちの方向性などをきちんと理解された上で構築していただきました。
また、ChatGPTに関する最新情報や、実際に生成AI技術に関わっている貴社のメンバーから実践的な話を聞くことも非常に勉強になりました。環境構築だけでなく、そうしたコミュニケーションを通じてお互い学びながら作り上げられたので、私たちプロジェクトメンバーの解像度も非常に上がりましたね」(小野寺さん)
「KOKUYO AI Chat」は2023年12月に社内リリースしたばかりということで、今後従業員の声も聞きながらアップデートや機能追加など、細かな改善を行っていく予定です。また、クラスメソッドは生成AIに関する技術的な支援もコクヨ様に対して行っています。同社では、「GPT-Lab」が本格スタートする前に、先行して「KOKUYO AI Chat」でどういったことができるか、有志メンバーで試したと小野寺さんが以下のように振り返ります。
「Google Colabなども使いながら、コードを実際に書いてみました。その際、うまく動かない箇所などは、都度クラスメソッドの担当の方に答えていただけましたし、気軽に相談できて良かったです。現在、GPT活用に関しては自分の入れたプロンプトに対し、生成させるだけを想定してますが、この次の段階として自社のデータを入れたいという思いがあります。そのこともクラスメソッドにご相談すると、データを入れた後に、どんな組み立て方があるのか、実際の改善事例や今後の展望も踏まえて適格にアドバイスいただけました」
生成AIを活用してビジネスアイデアを形に
同社は、今後「KOKUYO AI Chat」を活用し、2023年12月から従業員それぞれのAIビジネスアイデアを実際に形にしていく取り組みを「GPT-Lab」内で行っていきます。
GPT-Labではクラスメソッドは技術コンサルティングという形で支援を行っており、ビジネス目線での実現したい未来や解決したい課題に対してどのように生成AIが活用できるか?をテーマに伴走支援を実施しています。GPT-Labの活動として3月末に成果物を提出し、4月に最終報告会を開催。そこで授賞テーマを決めていく予定だということです。最終的にはそこから優秀なものを実装していくといいます。
「高集中ワーク、オペレーション改善、社内外の関係性構築という3テーマの企画を5つのチームに分かれて実装に向けて取り組んでいます。多様なアイデアが集まっており、これからどのようなアウトプットになるか、今から楽しみです。最終的にはお客様を含めステークホルダーの皆さんが活用できるような価値あるものを生み出せればいいなと期待しています」(鳥居さん)
「コクヨは2030年までにモノづくりの会社から”WORK & LIFE STYLE Company”になることを、2021年に策定した「長期ビジョン CCC 2030」で宣言しています。同時に、パーパスとして「ワクワクする未来のワークとライフをヨコクする。」を制定し、ワクワクする未来への挑戦が始まっています。この「ワクワク」を作っていく上で、生成AIの活用はまさにうってつけですし、これまでできなかった領域を切り開けると信じています。社内の参加者が多いのはまさに、みんなの熱量の表れだと思いますね」(小野寺さん)
クラスメソッドは今後もコクヨの「デジタル人材育成」という新たな挑戦を引き続き支援してまいります。