観光施設に特化したリゾートバイト紹介サービス「リゾートバイトダイブ」をはじめ、テクノロジーとオペレーションの2つを強みに観光HR事業や地方創生事業を展開する株式会社ダイブ。「リゾートバイトダイブ」では観光施設と派遣スタッフ(以下、スタッフ)をマッチさせる前後でコミュニケーターと施設ごとの営業担当からのLINEによるサポートを提供し、よりよいマッチングの実現や就業後の不安・トラブル解消を実現しています。

スタッフの就業前後をLINEでサポート。LINE公式アカウントの運用で抱えていた3つの課題
リゾートバイトダイブは、地元での雇用が中心だった観光施設に向けて、テクノロジーを活用してスタッフを紹介し、観光地側の人手不足の解決とスタッフへの異文化体験・成功体験といった価値提供を両立させています。その際、応募者の不安や疑問を解消できるよう、同社はテキストコミュニケーションによるサポート体制を構築していました。
幅広い年代に浸透していることやマーケティング活用などの面から、コミュニケーションのプラットフォームとして「LINE公式アカウントマネージャー(以下、LINE OAM)」を活用していた同社。しかしサービスの成長に伴い新たな課題が発生していました。1つ目の課題は基幹システム「Dive Admin」とスタッフ情報を自動で連携できなかったことです。就業ステータスや就業先の施設情報などが蓄積されているDive AdminはLINE OAMとの連携ができないためLINE対応時に一人ひとり個別スタッフ情報の確認を確認したり、対応後もスタッフ情報も手入力をしたりする必要がありました。

さらには日々メッセージが大量に届くため、繁忙期などでは既読管理も煩雑になり、一部では対応漏れも発生していました。コミュニケーターの佐野さんは当時抱えていた課題について振り返ります。
「私たちの繁忙期は、長期休暇の前、特に夏休みシーズンに向けてスタッフさんを採用する時期です。ピーク時には月間メッセージ送信件数が6万3,000件におよびました。就業先が決まっていないスタッフさんは、別の仕事を並行して検討する場合も多く、迅速な対応は業務効率化だけでなくマッチング件数を増やすことにも繋がるため、観光HR事業にとって重要なポイントだったのです」(佐野さん)
QCDの観点から外注を決定。クラスメソッドの決め手は、提案力と技術力に対する評価
こうした課題を解決すべく、同社はMessagingAPIとLINEチャットPlusを活用したチャットシステム「Staff Communication Tool(以下、SCT)」の開発を決定しました。当初は社内エンジニアリングリソースによる開発を模索していたものの、事業における重要度の高さ、システムの品質や採用におけるコスト、そしてスケジュールというQCDの観点から、開発支援を手掛けるパートナー企業に依頼する方針となったそうです。

サービス資料や過去の実績などから『実現したい機能が揃っているSCTを開発できそうか』という視点を第一に事前調査で数社にお声がけ、比較検討しています」(加藤さん)
オウンドメディア「DevelopersIO」での技術情報発信や開発実績などを以前から認識されていたこと、初回のお打ち合わせ時に同社が実現したいことから逆算したシステムを提案できたこと、そして技術的な質問への回答内容をご評価いただき、クラスメソッドへ開発をお任せいただきました。
丁寧なUX設計と短期間のMVP開発とスムーズな引き継ぎ

初期対応を行ったマッハチームは、要件定義のフェーズにてコミュニケーター・施設ごとの営業担当の方へユーザーインタビューを実施しました。これまで職人技のように対応されてきた複雑なサポート業務への理解を深め、業務フローの抜け漏れをなくしています。その他にも、将来的に想定されるメッセージ件数や社員数の増加に耐えられる設計などを考慮し、UXの理想像を描きました。
MessagingAPIとLINEチャットPlusを活用したSCTの開発では、要件定義からプロダクトの土台と必要最低限の機能(MVP)を構築するチームと、初回リリース以降の追加機能やシステム改善など柔軟に対応するチームという2つの開発チームを組み合わせてご支援しました。
初期対応を行ったマッハチームは、要件定義のフェーズにてコミュニケーター・施設ごとの営業担当の方へユーザーインタビューを実施しました。これまで職人技のように対応されてきた複雑なサポート業務への理解を深め、業務フローの抜け漏れをなくしています。その他にも、将来的に想定されるメッセージ件数や社員数の増加に耐えられる設計などを考慮し、UXの理想像を描きました。


「私はDive AdminとSCTを連携し、スタッフさんの情報がやり取りされる仕組みの実装に携わりました。特に印象的だったのが、短期間でアジャイル開発していくためのサイクルや優先順位付け、ポイントなど、しっかりした『型』をお持ちだったことです。この『型』のおかげで開発・改善スピードが速くなり、手戻りは最小限でした」(水澤さん)
2つの開発チームの引継ぎ時には、オフショアの開発先として選ばれたベトナム現地でのキックオフを実施しています。同社もご同行いただき、開発ベンダーに対して実際のテキストコミュニケーションによるサポートの実態やどのような思いでSCTを活用する予定かを直接ご説明いただきました。キックオフについて加藤さんが以下のように振り返ります。
「私自身の経験から、オフショア開発はうまくいかないイメージがありました。オフショア開発がうまくいかない理由のひとつに、現地のエンジニアは上から『これを開発しろ』とだけ指示を受けて開発しただけで『どんなユーザーのために、何の業務のために、何を開発しているのか』を想像できず、開発に対してモチベーションが維持できないことが考えられます。しかし今回は営業企画やコミュニケーターというユーザーとエンハンスチームのエンジニアが直接コミュニケーションできたことで『これならできそうだ』と手応えを感じました」(加藤さん)
システム連携やサポート業務の効率化を実現。さらに質の高い提案も
2025年3月現在、本プロジェクトの目的であったLINE OAMから新しいチャットシステムであるSCTへの移行は完了し、実際のサポート業務にご活用いただいています。SCTへ移行して得られた成果として第一に挙げていただいたのが、テキストメッセージの月間送信数が増加したにもかかわらず、対応時間が短くなったことです。
従来、18時半までに寄せられた新規メッセージを同社がチャットで返信し終わるまでには30分以上の時間がかかっていました。しかし現在は平均して19時前に完了。比較すると2割弱の工数削減に成功しています。また、チャットの対応漏れをチェックする作業も、検索機能の向上と「未対応」などステータス表示機能を実装したことで1日あたり1時間かかっていたものが15〜30分まで短縮されています。
さらに同社の基幹システムであるDive AdminとSCTのデータ連携によっても業務の効率化を実現しています。一人ひとりのスタッフに返信するスピードが向上し、限られた営業時間内でやり取りできるキャッチボールの回数が増えました。特に印象に残っているサポート内容の質の変化について、コミュニケーターの稲毛さんにお聞きしました。

マッハチームによる二人三脚のプロジェクト立ち上げ、そしてエンハンスチームへのスムーズな引継ぎによって開発期間を抑えられたことも、高く評価いただいています。社内のエンジニアリングリソースだけで開発を進めたと仮定した場合、SCTのリリースは半年から1年は先延ばしになり、求められる要件も変わっていた可能性もありました。
テクノロジーの活用と人にしかできない対応で、スタッフとクライアント双方に価値を
コミュニケーター・施設ごとの営業担当の業務を効率化する目的を達成し、今後はDive Admin上に蓄積されたスタッフとのチャットデータを活用し、よりよいマッチングの提案や就業後の悩みに対するより親身な対応の実現を目指していくとのことです。生成AIといった最新の技術を活用しつつ、年齢層や一人ひとりの性格に合わせた人にしかできない親身な対応をさらにブラッシュアップすることでスタッフのリゾートバイトに対する不安を払拭し、満足度向上に努めていく予定です。

SCTの開発プロジェクトは観光HR事業グループだけでなく、社内のシステム開発を担う事業開発グループにも変化をもたらしました。マッハチームとエンハンスチームの2つの開発チームを組み合わせたアジャイル開発は今後の社内開発にも参考にしていきたいとのことです。
クラスメソッドは、LINE認定パートナーとしての開発実績を活かし、LINEを通じたユーザーとのコミュニケーションに取り組むお客さまをさまざまな形で支援してまいります。