フリーランスや転職、新卒の領域でエージェントやスカウト、プラットフォームの各サービスを展開するレバテック株式会社。開発部では約50人の開発者がサービス開発・運営を担っています。
技術広報の取り組みとして、2024年2月に技術者のための情報共有コミュニティ「Zenn」の企業・組織向け機能「Publication」を用いて自社テックブログ「レバテック開発部」を開設しました。その成果は目覚ましく、投稿数は月10件以上のペースを維持しています。どのようなチャレンジを行ったのか、開発部のエンジニアでテックブログの編集長も務める瀬尾さん、DevRel/事業企画室 山本さんにお話を伺いました。
テックブログ運営の「失敗要因」は再現性が高い
これまで、レバテックでは従来から人材の採用・定着・育成を目的に、技術広報に取り組んできました。そして、さらなる取り組み強化のため、2024年1月に技術広報チームを発足しました。営業・マーケティング・開発の各職種を横断したメンバーで構成される同チームが最初に目を付けたのは、改善に着手しやすく、資産化もしやすいテックブログでした。
従来、レバテックの開発部では親会社であるレバレジーズ株式会社のテックブログに記事を投稿していました。この運用では、レバレジーズグループの発信を一手に担っていたため、公開までのチェックが負担となりがちで、気軽に執筆しづらかったといいます。PVが伸びづらいことも執筆のモチベーション低下の要因となっていました。
技術広報チームは社内ヒアリングを通じて、書くことがない、書くのが面倒、書いても読まれないといった運営上の「負」を把握し、テックブログに関する失敗事例などもリサーチを実施。結果、他社のテックブログに共通する成功要因は見出しづらいものの、失敗要因は再現性が高い、ということが分かってきました。
そこで以下の2つの方針を打ち出しました。
- 定石に則った「アンチパターン」(よく陥りがちな悪い例)の排除
- 自社の風土に合わせた「ローカライズ」
Zennで自由に投稿できたら、書いてくれると想像していた
アンチパターンを排除する取り組みでは、執筆のハードルを可能な限り下げることに注力しました。投稿時にレビューを原則不要(希望者のみ実施)としたほか、運営の目標を投稿本数やPVではなく「アウトプット継続」としました。またレバレジーズのテックブログから分離する形でZennでPublicationを開設。そうした取り組みにより、投稿本数およびPVが大きく改善しました。
- 2023年 月間平均投稿本数(月0.16本) / PV(700)
- 2024年 月間平均投稿本数(月15本) / PV(27,000)※2~4月で集計
体制面では「編集長」のポストを新設しました。そこで白羽の矢が立ったのが、開発部の瀬尾さんです。
編集長としての日常業務は、前月の投稿本数やPVの部内共有、各記事の社内への宣伝といった地道なコミュニケーション。テーマ選びに困っているメンバーには、週次の業務報告などを手がかりに「ネタ出し」の支援もしているそうです。
瀬尾さんは、レバレジーズのテックブログから分離する形で、ZennのPublication開設を提案した一人でもあります。過去数年、SNS上でZennの記事を目にする機会が増えており、プラットフォームとして勢いを感じたことが決め手でした。
「もともとボトムアップ的に、友達のような感じでネタ出しを手伝っていました。エンジニアにとって馴染み深いZenn をアウトプット先として、自由に投稿できる環境を作れば、みんな書いてくれると想像していました」(瀬尾さん)
また、レバテック開発部では日々のアクセスの把握や、希望者へ行っているレビューの効率化を目的に、2024年3月にアクセス分析・レビュー機能などを備えた有償版の「Publication Pro」にアップグレード。費用に見合った効果を感じているといいます。
「アクセス分析はもちろんのこと、レビュー機能が使用できるようになったことで、別ツールとの二重管理がなくなったことが嬉しいです。」(瀬尾さん)
「書きたいことを書く」という運営思想
「中でも、ソフトウェアエンジニアリングが好きという点が大事ですね。”バズればいい”というのは違うと考えています。テックブログ運営における考え方、運営の思想があることが重要でした」(山本さん)
瀬尾さんは、社内にテックブログの運営方針を提示しました。それは「いいねが多い記事が、いい記事というわけではない」、そして「自分が書きたいことを書くべき」というものです。編集長として、書くことの魅力を伝播させ、書きたい人の数を増やすための雰囲気づくりに腐心したと振り返ります。記事のPVが伸びている時や、SNSなどで反応があった時は、執筆者や同僚に必ず伝えているそうです。
「この3か月は、書くのにポジティブになれる雰囲気づくりを行ってきました。執筆に消極的なチームには、記事がきっかけで新しいエンジニアが加わるかもしれない、という発信の効果を伝えたり。改善を回すというより、まず、書き手に”火をつける”ことに取り組んでいます」(瀬尾さん)
内部に発信意欲がある組織はPublicationが使いやすい
瀬尾さんはPublicaitionの開設後、自社ドメインに比べて、Zennは圧倒的に読まれやすいと実感したそうです。山本さんも、自社ドメインでのテックブログ開設はすでに知名度のある大企業のような「強者の戦略」だといいます。
「これから技術広報を頑張っていきたい企業で、社内に著名なエンジニアがいるわけではないけれど、内部に発信意欲があるという組織には、Publicationが合うと思います」(山本さん)
「組織で発信するという意味では、ZennのTech(技術記事)とIdea(キャリア・組織など技術以外の記事)のカテゴリ区分は良いですね。まずはIdeaでも良い、とハードルを下げてくれます」(瀬尾さん)
運営が軌道に乗った今、次の目標はテックブログを「カルチャー」に昇華させることです。これまで記事を投稿していない人にもヒアリングを進め、属人化せずに皆が書く雰囲気を醸成したいといいます。PVやいいねなど外形的な目標を掲げたために、モチベーション維持に苦しむ企業は多いといいます。レバテックの「アウトプット継続」を重視する取り組みは、参考にしたい事例ではないでしょうか。