順天堂大学、東京工業大学(現東京科学大学)、慶應義塾大学の研究者らによって2020年に創業したメタジェンセラピューティクス(以下、MGTx社)。次世代医療の1つとして注目されるマイクロバイオーム医療・創薬シーズの事業化に挑む医療系スタートアップの先駆者です。
マイクロバイオームとは多様な微生物が集まったコミュニティのこと。とりわけ近年では腸内のマイクロバイオームである「腸内細菌叢(さいきんそう)」が注目を浴びています。MGTx社では健康な人の便に含まれる腸内細菌叢を患者の腸内に移植し、ディスバイオーシス(腸内細菌叢の乱れ)を改善する治療法を確立しようとしています。これまでに累計19.3億円を調達した実績からもわかるように、各方面から大きな期待を集める存在です。
そんなMGTx社のID管理、PCデバイス統制を、クラスメソッドと、グループ会社でありクラスメソッドの情報システム部門を担当するアノテーション、同じくグループ会社のプロパゲートの3社が一丸となって支援しました。急成長するスタートアップのIT事情を支えた裏側について、事業統括部の黒澤さんに伺いました。
成長に見合ったID管理とPCデバイス統制の強化が必須に
前職は製薬会社で新規事業、データ分析、ITインフラ運用などを担当していた黒澤さん。MGTx社では便を提供してくれるドナー向けのサービスやシステムを企画・設計運用するプロダクトマネージャーの立場にあり、並行してITインフラ全般を管理しています。
MGTxは山形県鶴岡市に本社を置き、ほかにも東京や神奈川に拠点を構えるなど分散型のワークスタイルを実践しています。現在の人員規模は20名ほどですが、リモート前提の働き方を推進する中でITガバナンスの課題が浮上してきました。黒澤さんは「急激に組織が大きくなったこともあり、ITガバナンスへの対応が遅れがちでした。そのため、ID管理とPCデバイス統制の見直しに迫られていました」と語ります。
また、製造部門と規制当局の折衝が増えるにつれて、使用アプリケーションの互換性の観点からこれまで主流だったMacに加えてWindowsを活用したいとのニーズが増加。MGTx社ではGoogle Workspaceによるドキュメント共有が浸透しており、折衝先で使用しているWordやExcelに書き出すとレイアウトが崩れてしまう現象が多発していたためです。
Microsoft 365を効果的に使える状態ではなかったので、これを機に利用OSに依存しないMicrosoft 365の利用環境を強化することにしました。ただし、ドキュメントの共有や共同作業はGoogle Workspaceをそのまま維持して生産性を落とさないように、Microsoft365とGoogle Workspaceのハイブリッド環境を採用しました。スピード感を重視する当社の事業にとって、Google Workspaceでの共同作業は欠かせないからです」(黒澤さん)
求めていたのは一緒にプロジェクトを進める仲間
前職時代にAWSのプロジェクトでクラスメソッドと仕事をした背景もあり、転職後も黒澤さんはコンタクトを続けていました。
「ある会合でクラスメソッドの営業さんにMGTxのITに関する悩みを話したところ『”情シス as a Service”のようなプランを構想中なので、メドがついたら連絡します』と言われて。前職のときからノウハウやベストプラクティスを惜しみなく提供してくれる姿勢を信頼していましたし、クラスメソッドに依頼すれば必ずよいものを提供してくれるに違いないと思っていました」(黒澤さん)
他社のソリューションも探したそうですが、MGTx社の要求には合わなかったと話します。「我々はITオペレーションを丸投げしたいわけではなく、先進的かつ効率的な運用が得意な会社と一緒になってプロジェクトを進めたいとの思いがありました。その点でもクラスメソッドとの協業は理にかなっていました」(黒澤さん)。
2024年春には準備が整い、アノテーションとの要件定義を開始。アノテーションから情シス業務のノウハウを持つメンバーを2名、そしてクラスメソッドグループの人材サービス子会社であるプロパゲートから1名、合計3名をアサインして同年6月から本格的に実装がスタートしました。
MGTx社のエンドポイント管理に採用したのはMicrosoft Intuneです。30台程度という管理対象端末の台数をふまえるとコストパフォーマンスが良いこと、またMicrosoft IntuneによるWindowsとMacの管理はクラスメソッド社内でも検証して技術ブログのDevelopersIOで公開しており、黒澤さんがそれを読んで内容を把握していたことも決め手の一つとなりました。
また、Microsoft Entra IDを活用してID管理を統合し、Google WorkspaceなどのサービスとSSOを連携することで、シングルサインオンによるシームレスなアクセスを実現しました。さらに、Apple Business ManagerやIntuneとの連携によりデバイス管理を強化し、より安全なリモートワーク環境を構築しました。メンバーのオンボーディングに必要なIT関連業務の定型化・自動化ができたのは大きな成果です。
「私は実質的に一人情シスですから、管理ツールを1つでも減らしたいのが本音。それもあって今回の提案はフィットするものでした」と黒澤さんは語ります。
本プロジェクトが“情シス支援サービス”の足がかりに
プロジェクトは想定以上に早く進行し、わずか1カ月ほどで完了しました。黒澤さんは、アノテーション、プロパゲートの仕事ぶりをこのように評価します。
さらに成功事例だけではなく、失敗事例も含めて豊富な知見を提供してくれたこともありがたかったと振り返ります。
「これまでにITサービスの運用やAWSの管理は担当していましたが、Microsoft Entra IDやIntuneの管理は初めて。『ここまで自分たちのことを明かしてくれていいのか』と思うほどの詳細な資料をいただいたことに感謝しています」(黒澤さん)
現在、MGTx社では事業の拡大に合わせて採用を積極的に増やしています。「ひとまずIT管理の要点は押さえられましたが、さらにレベルを高め、爆速で進むMGTxの事業を支えていきたい。次はスマートフォンの管理をどうするかが喫緊の課題です。その際も専門家の知見は不可欠ですから、これからもクラスメソッドの力を借りたいと考えています」と黒澤さんは今後の展望を話してくれました。
クラスメソッドは今後もお客様の課題に柔軟に応えられるよう、アノテーション、プロパゲートと一丸となって、同社のITガバナンスへの対応を支援してまいります。また今回のプロジェクトを契機に、今後情シス支援サービスとしてのメニューも展開していく予定です。新たな支援サービスの登場にご期待ください。