2020年6月には、これまでのiOS版に加え、LINE LIFFアプリ版がクラスメソッドの支援によってリリースされました。LINEアプリ版は、アカウントの友だちになるだけで利用できる手軽さがあり、画像保存という機能拡充も行われています。サービス開発担当の藤井さんに、このLINEアプリを導入した背景や効果について、詳しいお話を伺いました。
自宅のホワイトボードから思いついた手書きアプリ
大阪ガスでは、これまで、燃料電池、ガス給湯器、ガスコンロ、ガス漏れ警報器をIoT化し、スマートフォンアプリや新しいサービスをリリースしてきました。ユーザーがこれらのアプリやサービスを利用するには、IoTに対応した商品を購入する必要があります。IoT対応商品の購入前でも利用できるサービスを模索する中で、小さなお子さんのいるヤングファミリー向けのアプリの検討が始まりました。
開発を始めるにあたり「子どもたちとより豊かな関わり方をデザインする」BUTTONをパートナーに選定。藤井さんは「当初は、家族がスマホで投稿した写真やメッセージを一覧できる掲示板アプリをイメージしていました。検討を重ねる中で、家族間のやりとりはメールやLINE等にシフトしているのに、小さな子どもたちとのやりとりはアナログのままであることに、あらためて気づかされました」と振り返ります。
例えば、共働きの親の帰りが遅くなるときに、温め直せば食べられる料理が冷蔵庫の中にあるというメモが、扉に貼ってあったりします。夜遅くに帰宅すると、お子さんの手書きの「おやすみなさい」のメモがテーブルの上に置いてあって、ほっこりするという話も聞きます。そこで、小さな子どもでも簡単に使えるように、機能をできるだけシンプルにして、手書きの文字や絵をリアルタイムに共有できる「家族の手書きホワイトボードアプリ」の開発を決めました。
手書きならではの温かみを残すことで、普段、子どもや家族の間では普段はなかなか言えない感謝の気持ちを伝えるツールとしても活用できます。
LINEアプリの知見、アイディアを実現する技術力が決め手に
Kytell(カイテル)は、スマホやタブレットを使って、家族でひとつのキャンパスを共有し、指で直接イラストやテキストを描いて共有できるコミュニケーションアプリです。
iOS版をリリースした直後、Android版のリリースを検討していましたが、ちょうどLINEアプリを実現するLINE Front-end Framework(LIFF)が公開された中で、異なるOS上で動く2つのアプリを開発、アップデートするよりも、OSに依存しないLINEアプリを開発するほうが効率的と判断したとのことです。
LINE版の開発の前提として、iOSと同等のユーザーインターフェース(UI)をLINEアプリで実現することとしました。開発期間を短縮化するため、iOS版に使用されていた、クロスプラットフォーム開発が可能なモバイルアプリケーションフレームワークReact NativeのソースをベースにLINE版に応用。移植に加え、かつiOS版にはない画像保存・読み込み機能を追加する方針となりました。
LINEアプリの開発にあたり、複数のベンダーを検討するなかでクラスメソッドを選んだ理由について、藤井さんからは以下のようにご評価いただきました。
「LINEの開発パートナーとして、LINEでのサービス開発に関する知見を蓄積しており、かつReact Nativeについても実績を持っていて安心感があったことがひとつ。もうひとつは、Developers.IO CAFE等の取り組みを見て、発想したアイディアを技術力で素早く実現するパワーを感じた点です」
コロナ禍のなかでのリモート開発
KytellのLINEアプリは、2020年早々に開発がスタートしました。新型コロナウイルス感染症の拡大が始まる直前だったこともあり、打ち合わせは主にオンラインで行われました。3カ月の開発期間の中で、必ず週に1回、2回、30分程度のミーティングを行いました。
藤井さんは当初「オンラインのミーティングでどこまで細かいやりとりができるのか」と不安もあったといいますが、「短い打ち合わせでも、必ず最初にアイスブレークをするところも含めて、コミュニケーションは非常にスムーズでした。開発途中で出たアイディアをどこまで実現するか議論になったこともありましたが、結果的には最後までオンラインで十分にコミュニケーションが取ることができました」と評価。さらにオンラインではスケジュール調整もしやすく、限られたミーティング時間内でテキパキと決定がなされるというプラス面もあったといいます。
クラスメソッドの開発チームに対し、藤井さんは「やりたいところと技術的、スケジュール的にできることとのバランスを考えながら、前向きなアイディアをたくさん出していただいた」と明かしています。LINE上で動くアプリの開発は初めての経験だった大阪ガスには心強かったようです。「皆さんとは、とても話しやすく、楽しく仕事ができました。また一緒に仕事ができる日が楽しみです。」と今後の開発にも期待を寄せています。
LINEアプリならではのUXの向上でターゲット拡大を目指す
グループトークに「おえかき」「Kytell」「カイテル」のいずれかを投稿すると、共有用のホワイトボードのリンクが表示されます。リンクをクリックするとホワイトボード画面が表示されるしくみです。
なるべくLINEのタイムライン上で操作ができるように、「投稿(カメラ)」ボタンで、トーク画面に絵を一定期間保存でき、保存された状態から書き直しができるようになっています。
今回のアプリのリリースによって期待される効果として、家族だけではなく、親戚、友だち同士など、これまでのユーザー以外にもリーチするチャネルが広がったことが挙げられます。「LINEの強みは8000万人を超えるユーザー。一方で、アップデートが頻繁で、追加機能が次々と出てくるので、クラスメソッドさんにはLINE側のアップデートの情報などを適宜フィードバックしてもらえたら助かります」と、今後のフォローアップにも期待されています。