株式会社テイツーは、「古本市場」「ふるいち」「トレカパーク」などの店舗にて、書籍や家庭用ゲーム、CD、DVD、トレーディングカードなど、メディア商材の新品販売とリサイクル買取・販売をしています。アウトドアグッズや服、雑貨なども一部の店舗では手掛け始めている総合リサイクルショップです。これまでは実店舗をメインの販路としており、ネット販売は他社プラットフォームにて展開していましたが、デジタル化を見据えてWebプラットフォームの開発に着手し始めました。
この構想の一環として、プラスチックカードで発行していた会員証をデジタル会員証に置き換え、年に1〜2度しか実施できていなかったDMやクーポンの送付を充実すべく、2021年5月にLINEミニアプリにて「テイツー公式ポイントアプリ ふるいち」をリリース。クラスメソッドが本アプリの開発を担いました。Web運営、LINE公式アカウントなど各種SNS運用、店頭POPなど、販促全般を担当する商品企画部の篠原さんに、LINEミニアプリ開発に至る課題から今後の展望まで、詳しく話をうかがいました。
効果が見えづらくコストのかかる従来型のマーケティングからデジタルタッチポイントの獲得へ
テイツーには従来より独自のポイント会員システムがあり、プラスチックカードタイプの会員証「テイツーポイントカード」を発行していました。とはいえECサイトもネイティブアプリも無く、お客様とのタッチポイントは年始に送る「お年玉」のダイレクトメールだけだったそうです。Webの会員ページでは、ポイント残高の確認と会員情報の更新、購入履歴の閲覧が可能でしたが、店舗からお客様にお知らせを送るような機能はありませんでした。
また、ハガキで郵送するDMは、印刷コスト、郵送コストなどが負担になってくるだけでなく、宛先不明により必ず一定数が戻ってくるため、無駄なコストが多く発生していたそうです。紙のクーポンを配っても、マーケティングデータとしてお客様情報と紐づけて把握することは難しい状況でした。こうした課題を受けて2019年頃より 、DM送付の効率化とデジタル化を進めることを考え始めました。
「従来はお客様にメールアドレス等の会員情報を登録していただいても、個別のお知らせを頻繁に送ることはできず、年に1〜2度クーポンをお送りするにとどまっていました。そこで、会員システムを全て刷新して、そこに紐付くアプリを作り、デジタルタッチポイントを作り出そうという構想が立ち上がりました」(篠原さん)
テイツーはデジタル決済をいち早く店舗に導入し、現在は電子マネー、IC決済はほぼ網羅しています。2018年にLINE Payを導入してからはLINE社との取引が深まり、情報交換をする中で「LINEミニアプリ」プラットフォームについて聞く機会があったそうです。デジタルタッチポイント作りに向けて、ネイティブアプリとLINEミニアプリ、どちらで開発するか悩んだ末、お客様の利用ハードルが低いというメリットから、LINEミニアプリでの開発を決めました。
「検討し始めた当時は、LINEミニアプリがまだパイロット段階で情報も少ない中でしたが、LINE社からクラスメソッドさんをご紹介いただくことができました。その時点で既に開発実績があり、知見があるベンダーさんということで心強かったです。また弊社ではあまり利用実績のないAWSに特化した技術力をお持ちであることも、最終判断の決め手でした」(篠原さん)
初めての完全オンラインプロジェクト進行も、関係構築ノウハウでスムーズに
テイツーとクラスメソッドは2019年秋に最初の打ち合わせを行い、会員システムのリプレイスと並行してLINEミニアプリの開発をスタートさせました。 LINEミニアプリでの開発内容としては、まず既存のポイントカードとしての利用や、会員ページ機能は同様に実装したいということ。さらに、課題として感じていたマーケティングプラットフォームとしての機能を盛り込んだものを希望されました。
「LINEミニアプリを導入するにあたって、ミニアプリとLINE公式アカウントの違い、公式アカウントのプッシュ配信、ミニアプリへのお知らせ配信、コストや運用の違い、ネイティブアプリ比較でのメリット・デメリットなど、判断の要素として理解を深める必要があることが多くあります。当時はまだLINEミニアプリはパイロット段階だったため情報が少なく、LINE公式アカウントとの区別が付きづらいこと、ネイティブアプリとの違いの説明という点で開発意思決定に対しての要素をまとめることに苦労しました。」(篠原さん)
クラスメソッドからもLINEミニアプリの開発事例や機能について、たびたび紹介をさせていただき、最終的に篠原さんが判断要素をとりまとめて提案することで社内の承認を得られたそうです。
LINEミニアプリの開発が実質的なスタートを切ったのは2020年2月でした。コロナ禍という状況も相まって、コミュニケーションはオンラインで行うことが余儀なくされました。毎週1〜2回行われたオンライン会議と、チャットツールやタスク管理ツールなどを駆使した開発スタイルは、メールや電話で仕事を進めていた篠原さんにとって新鮮な体験となったそうです。
「毎回ミーティングの冒頭に、アイスブレイクとして全員が仕事とは直接関係ない話題提供をして意見交換する時間を設けて、プロジェクトメンバーが打ち解けやすい雰囲気を作っていただきました。こちらから課題感や要望もお伝えしやすく、また逆にクラスメソッドさん側から『それはできません』といったことをスムーズにお伝えいただけるような良い関係性を早い段階で作れたことには驚きました。さまざまなプロジェクトに関わらせていただく機会がありましたが、このような関係性を早期に構築するプロジェクト進行には驚きました。」(篠原さん)
ポイントシステムのリプレイスと並行して開発を進め、LINEミニアプリ「テイツー公式ポイントアプリ ふるいち」は2021年3月にリリースとなりました。約100店舗の店頭で、新規会員加入やアプリ会員への移行がスタートしています。お客様にとって利用ハードルの低いLINEミニアプリとはいえ、レジでの案内が複雑化すると待機列を作ってしまいます。そこで、導入すればすぐに仮会員カードとして機能する仕組みを作り、詳細説明はアプリ内でご確認いただけるようにしました。
「既存のお客様からLINEミニアプリ移行に際していただいた問い合わせは、移行方法や手元のカードの取り扱いなどに関するものが多く、機能面では会員カードのデジタル化によるメリットを提供できているように思います。マーケティングという面でも、これまで年2回程度しかお送りできなかった値引きクーポン等のDMや、会員様向けの情報を、今は毎月1回以上、配信できるようになりましたので、お客様に利便性を感じていただけると信じております。」(篠原さん)
アプリリリースがスタート地点、今後ますます拡がるデジタル戦略
LINEミニアプリによるポイントサービスのリリースから約3ヶ月経ち、新規のお客様の多くへはアプリ会員への加入を案内しているそうです。スマホを利用されていないお客様もいらっしゃるため、LINEミニアプリリリース後も、既存のポイントカードの運用を残しているといいます。
「ご来店いただくお客様の多くが既存会員様なのですが、現在の移行率は2割程度です。弊社はポイントの有効期限を最終利用日から1年としているので、アプリリリースから1年後まではプラスチックカードタイプのポイントカードと同じ運用を続け、しっかりとお客様にアプリ会員への移行をご案内いたします。アプリ会員はポイント付与率、クーポン配信等、メリットを感じていただける仕組みですのでアプリ会員への移行は今後加速していくと考えております。」(篠原さん)
LINEミニアプリ会員にはクーポンやお知らせが配信しやすくなったため、従来抱えていたマーケティングの課題が1つ解消されつつあります。「販促担当としては施策の結果が見えやすく、配信後の確認が楽しみです」と笑顔で語ってくれた篠原さん。
デジタルタッチポイントとなってからはDM配信のコストも圧縮されたため、年2回程度ハガキのDMとして発送郵送していたクーポンはより高頻度にミニアプリへ配信できるようになりました。今後はますますLINEミニアプリ会員の獲得に注力していきたいとのことです。
「クラスメソッドさんには、新しい技術やサービスに対しての深い知見をふまえて、多くの提案をしていただきました。特にユーザー目線での『このアプリを利用するユーザーさんはこういうことを求められるのでは』という提案が充実している印象を強くもちました。元々考えていた機能も、より良い提案をいただいたことで、さらにグレードアップしたものになることがよくありました。またいろいろご相談させていただきたいと思っています。」(篠原さん)
今回リリースしたLINEミニアプリの開発はその後も継続しており、計画当初から考えていたいくつかの機能が今後追加されていく予定です。また現在はリアル店舗がメインですが、今後はWeb販売プラットフォームの構築を見据えているといいます。1年後にLINEミニアプリ会員が増加するタイミングを見据え、引き続き開発を進めていきたいと語る篠原さん。多彩なデジタルマーケティングの展開に着手したテイツーを、クラスメソッドは引き続き技術力で支援していきます。