ビジョナリーホールディングスは、2020年12月に「アイケアアンバサダー」LINE公式アカウントにてLIFFアプリをリリースしました。「アイケアアンバサダー」とは、メガネスーパーをはじめとするグループ企業の各店舗を利用したユーザーが、LINEを通じて家族・友人などに口コミとともにクーポンを発行し、サービスを紹介することができる仕組みです。
紹介を受けたユーザーは、ビジョナリーホールディングスグループのメガネスーパー、メガネハウス、シミズメガネ、アイスタイル、メガネのタカハシ、メガネの大学堂を対象とする全国約330店舗にてクーポンを利用し、商品を購入することができます。またその購入商品や額が一定条件を超えることで、紹介元となったユーザーもインセンティブとして特典チケットを受け取ることが可能となっています。
「紙のクーポン」に感じていた課題をテクノロジーで解決
メガネスーパーとして2014年からアイケアを重視したサービス・接客を展開し、2017年からグループとして眼・耳・リラクゼーションのトータルケアを展開するビジョナリーホールディングス。メガネでは最大60項目、1時間程の入念な検査を行うことで、各顧客に適した商品を提案し、価格競争とは一線を画すサービスで評価を得てきました。この充実したサービスを行う約330店舗のユーザーが、家族・友人・知人に紹介する場合、割引の特典が受けられるクーポンを従来は紙で発行していました。
折しも世界的な感染症である新型コロナウイルスが猛威を振い始めた時期でもあり、対面で紙のクーポンを渡す、ということが難しくなっていることも課題として加わっていました。4月頃、企画の起案と機能の洗い出しを行った後、5月にはベンダー選定のプロセスに進んだといいます。
「今回は、開発費や開発工程などを考えた時にネイティブアプリ(スマートフォンアプリ)ではないプラットフォームにしよう、というところからスタートしました。最終的にLINEでアプリを作ることを選択しましたが、当初はカスタマイズ性や柔軟性、初期コストの低さなどを考えて、あるコマースプラットフォームを使ったWebサイトとして作ることも想定していました。最終的に、ユーザー登録の障壁が最も低く、ある程度どの年代でも家族・友人・知人との連絡として使っているLINEでサービスを作ることを決めました」(川添さん)
ビジョナリーホールディングスではLINEアカウントを2013年から運用しており、ユーザー用途に合わせた使い分け(サービスごと、店舗ごと等)で多くのアカウントが存在しています。そのためLINEアカウントでのサービス運用であれば、ユーザーに対してどのようにアクションできるか想定しやすく、また運用側がフットワーク軽く動きやすいということもわかっていました。
「LINEでサービス提供しようと決めた後、お願いするベンダー候補にまず挙がったのはクラスメソッド社でした。弊社は2013年からLINEを運用しておりユーザー企業としてはそれなりの知見を持っているつもりです。我々がやりたいことが、ほぼスクラッチ開発しなければならないことは分かっていました。それをLINEのインターフェース上で実現が可能な人達は誰かと考えた時に、やはりB2CにおけるコミュニケーションツールやLINE関連アプリ開発の実績の多さからもクラスメソッドだろう、と。」(川添さん)
クラスメソッドがこれまで手掛けてきたLINE LIFFアプリ、LINEミニアプリの経験はもちろん、完全キャッシュレスで、レジも無いウォークスルー型購買体験を実現した店舗「DevelopersIO CAFE」での取り組み等も評価いただき、技術支援にて本プロジェクトへ参画することが決まりました。
「やりたい事」から「やる必要があること」を2社で議論しながら抽出し構築
「アイケアアンバサダー」の仕組みは、LINEの各種APIを使用し、企業のLINE公式アカウントのトーク画面からWEBアプリケーションと連携できるLINE LIFFアプリとして実装されています。クラスメソッドは、LINE LIFFアプリのUI/UX設計と実装、LINEログインによる認証、Messaging APIを活用したメッセージ配信、およびAWSを利用したLINEユーザーIDと顧客データの照合基盤の構築などを行いました。
「まずはビジョナリーホールディングスがやりたいことを描いていったのですが、そこから何が本当に必要で、作るべき機能はどこなのか、どこまで作り込み、初期段階ではどこまで実装するのかを、要件定義レベルで具体化していきました。
例えば、CRMの観点では『クーポンはLINEだけでなくハガキ(DM)で送りたい』というような要望もありました。そういう“やりたいこと”を一度リストにして、そのうちから本当に必要なものだけを取り出してスリム化して、ファーストフェーズの機能を決めていきました」(川添さん)
例えば今回、LINEユーザーIDと顧客データの照合をしていますが、どのデータをもって照会するのか、パスワードをつけるのか、紹介の特定精度をどの程度担保するのか、またクーポンを送る宛先を個人とグループにする、クーポンを送った場合の紐付けの仕組みをどのようにするかなど、開発コストや時間を実際のフローに落とし込み、「本当にやる意味がある開発なのか」を2社で議論をしながら決めていったと言います。
「当社は普段から専門性を持つ協力企業と知見を出し合い、議論しながらサービスを構築していくスタンスなので、クラスメソッド社のように技術的知見が豊富な企業と議論しながら進めて行くのはとてもやりやすかったです。また多くのプロジェクトを手掛けられているだけに、小売のことを予想以上に理解されていたので、コミュニケーションにつまずくこともなく、運用サイドとしてのアドバイスをいただけたのも助かりました。我々が望むパートナーそのものだったと思います」(川添さん)
満足度の高い顧客からの紹介で、導入後3ヶ月間の紹介実績は前年比150%に
2020年12月にリリースされた「アイケアアンバサダー」は、徐々に現場への導入や認知度向上を行っているところです(※本インタビューは2021年3月に行われました)。店舗コミュニケーションについては、普段コンタクトレンズの買えるネイティブアプリや、LINEアカウントの運用をしており、デジタルと店舗の架け橋の役割を担っている中川さんが担当されています。アイケアアンバサダーでも、運用面や、店舗への周知、QAなどの店舗の問題を解決している役割を担っておられます。
「店舗がメインの接点になっている企業の中で、そこを巻き込む施策はデジタルチームが単独で動いても限界があると、過去の経験から学びましたので、今回は各部門とコンセンサスをきちんととって、それぞれの部門での役割を決めながら進めています。例えば本案件は、マーケティングとデジタルコマースチームの協業として、“新しいデジタル施策”ではなくて『マーケティング施策の一環です』という言い方をしています。スタート時を盛り上げるために、登録~紹介を行っていただいたお客様へのインセンティブとして『メガネの鼻パッドをプレゼント』などの企画も加わりました」(川添さん)
2021年に入って再度の緊急事態宣言が発出されたため、多くの小売と同様に店舗への来店数は減少してはいるものの、この手軽に登録できる「アイケアアンバサダー」があったために、店舗の手厚いサービスに満足した方からの確かな紹介として、お買い上げの確度が高い新規のお客様が来店するということが実際に店舗では増えてきていると言います。
「特に2月は非常に来店数が厳しかったのですが、アイケアアンバサダーリリース後3カ月間は前年比で150%と紹介経由の売上がアップしています。紹介クーポンの利用は新規のお客様が約65%となっており、嬉しい成果ですね。アイケアアンバサダー経由の売上そのものも、3月では紙の紹介クーポンとほぼ同額まで増えており、店舗スタッフがコツコツとお客様にオススメしていることが着実に結果に表れてきていると思います」(中川さん)
「今回のLINE LIFFアプリについては、検証段階になって『こうすれば良かった』と気づいたことが沢山あります。予想をはるかに上回るスピードで結果が出ているアプリですので、早々に継続開発に取りかかっていきたいと考えています。また、これからますますデジタルツールを活用し、業務を効率化することで、スタッフの働きやすさとお客様の満足度を高めていきたいです。沢山ある“やりたいこと”の相談相手を常に求めていますので、今後も是非クラスメソッド社とご一緒できればと思います」(川添さん)
クラスメソッドは、LINE LIFFおよびLINEミニアプリ開発、LINEのAPIの活用を始めとした総合的な技術支援にて、お客様のビジネス拡大に今後も貢献してまいります。