AWS移行の最適解はどう見つけるか?移行の進め方を解説

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オンプレミスで稼働するシステムのクラウド移行を検討する際、AWSは有力な選択肢の1つです。しかし、オンプレミスとは大きく運用環境が異なるため、どうAWS移行を進めればよいのか戸惑う企業も少なくありません。また、AWSへの移行が自社にとって最適な選択なのかを見極める必要があります。本記事では、企業の個別事情や状況に応じた最適な移行を実現するプロセスを紹介し、準備や移行作業で押さえるべきポイントを解説します。

AWS移行の必要性とメリット

AWSを導入する主なメリットとして以下の4点があります。

  • コスト:従量課金制を採用しており、初期費用が不要です。必要に応じてリソースを増減させることで、コストを最適化できます。
  • 拡張性:システムの負荷に応じてリソースを柔軟に増減でき、ピーク時の対応や無駄の削減が可能です。
  • 最新技術の導入:AWSで提供される200以上のサービスを活用することで、IoTやAIなどの最新技術を効率的に取り入れることができます。
  • セキュリティ:多層的な保護機能や国際規格の認証により、安全性が確保されています。

各メリットの詳細や、オンプレミスとの違いについては下記コラムで詳しく解説しています。
参考コラム:AWSとは?オンプレミスとの違いと4つの導入メリット

AWSへの移行は、コスト削減、柔軟なリソース管理、最新技術の活用、高度なセキュリティなど、多くのメリットをもたらします。しかし、ユーザーの設定ミスや不適切な管理により、予期せぬコスト増加やセキュリティ脆弱性などのリスクにつながる可能性もあります。これらのリスクを回避するには綿密な事前準備と計画が不可欠です。適切な設計を行うとともに、効果的な運用体制を整えることで、AWSのメリットを最大限に活用できるようになり、移行を成功へと導くことができます。

AWS移行の準備

現状分析と目標設定

AWS移行の準備として一番重要なのは「現状を詳細に分析し、移行目的を設定すること」です。クラウドの普及に伴い、多くの企業がAWSを利用していますが、全てのシステムにAWSが適しているわけではありません。まず社内のサーバー構成と種類を正確に把握することが必要です。現状を綿密に分析することによって、各システムのAWS移行の適否、実現可能性、さらにはコスト面の詳細な検討が可能になります。多角的な観点から現状を分析するためにも、AWSおよびAWSパートナーが提供するアセスメントプログラムの利用をお勧めします。
あわせて、システム移行の目的設定が必要です。ここで設定した目的が、移行プロジェクト全体の方向性を決定づけるため、最初の段階で明確に定義することが極めて重要です。

移行戦略の決定

現状分析と移行目的の設定が完了したら、次のステップでは移行戦略を決めます。AWSへの移行戦略には、極力既存アーキテクチャを維持する方法、AWSマネージドサービスを利用するためにOS・ミドルウェアを変更する方法、クラウドネイティブなシステムへ再構成する方法など様々なアプローチがあり、AWSではこれらのアプローチを7種類に分類し、「7R」と呼んでいます。どのシステムをどの方法で移行するのか、適した移行方法を見極めながら戦略を検討します。

  • Relocate:VMwareの仮想マシンを、Amazon Elastic VMware Service(EVS)に移行する
  • Rehost:既存システムのアーキテクチャを維持したまま、AWSに移行する
  • Replatform:OSやミドルウェアをバージョンアップ・変更して、AWSに移行する
  • Refactor:アーキテクチャをクラウドネイティブな構成に置き換え、移行する
  • Repurchase:SaaS製品に移行するなど、アプリケーションを再購入(切り替え)する
  • Retain:AWS移行できない・する必要がないシステムを、既存の環境で継続して稼働させる
  • Retire:不要なサーバーやアプリケーションを停止・廃止する

これらの移行戦略を選択する際は、長期的な目標と現実的な実装のバランスを考慮することが重要です。例えば、将来的にはサーバーレスなどクラウドネイティブな構成を目指すとしても、運用面での大きな変更を避けるため、「まずは運用を大きく変えない形で移行する」という段階的なアプローチを選択することも戦略の1つです。

AWSのベストプラクティスを参考にしつつ、自社の状況に最適なバランスを見出すことが求められます。

クラウド移行は単なる技術的な移行だけでなく、運用方法や設計思想の変更も含む包括的なプロセスです。短期的な実現可能性と長期的な最適化のバランスを取りながら、段階的に進めることが成功への鍵となります。

AWSへの移行方法

AWSへの移行作業は、一般的に下記のステップで進めます。

  1. PoC (Proof of Concept) 検証
    本格的な移行作業の前に、移行ツールの動作検証や小規模なワークロードの移行を通して、移行方法や手順を確認します。これにより、実際の移行作業の課題を事前に特定し、想定するツールやプロセスに問題がないかを確認できます。本番移行でのトラブルを避けるためにも、PoCにより必要な改善点を洗い出すことをお勧めします。
  2. AWS環境設計・構築
    AWS環境を設計する際は、AWS Well-Architected フレームワークを活用し、6つの柱(信頼性、セキュリティ、パフォーマンス効率、コスト最適化、運用上の優秀性、持続可能性)に基づいてベストプラクティスを適用することが推奨されます。特にネットワーク構成については、「VPC(Virtual Private Cloud)」など、オンプレミス環境とは異なる概念や技術が必要となります。そのため、AWSの特性を十分に理解した上でネットワーク構成を再設計することが欠かせません。
  3. 本番移行
    PoCによる改善点の洗い出しとベストプラクティスに基づいたAWS環境設計が完了したら、いよいよ本番移行です。AWSは様々な移行ツールとサービスを提供しており、用途に応じて活用することで効率的に移行できます。下記に、移行対象ごとの主なツール・サービスを示します。

AWSが提供する移行ツール・サービス

  • サーバー移行:AWS Application Migration Service(AWS MGN)
    仮想サーバーおよび物理サーバーをAWS環境(Amazon EC2)に移行するツールです。

  • データベース移行:AWS Database Migration Service(AWS DMS)
    各種データベース(Oracle Database/SQL Server/PostgreSQL/MySQLなど)に対応し、AWS環境(Amazon EC2/Amazon RDS)のデータベースに移行します。

  • データ移行:AWS DataSync
    オンプレミスからAWSへ、オンラインでデータを移動するためのツールです。ファイルストレージのデータをストレージサービス(Amazon FSxやAmazon EFSなど)へと移行します。

AWS移行後の最適化

オンプレミス環境では、サーバーの購入・構築が完了すると、当面は構成変更が難しくなります。それに対して、クラウド環境は、移行後も迅速かつ柔軟にリソースを調整できることが大きなメリットです。もちろん、事前にリソースの使用量などを見積もった上で構成を決定しますが、実際の運用が始まると予想外の状況に直面することも少なくありません。例えば、想定よりもリソースの使用が少なく、スペックを下げられる可能性が出てくるケースや、逆に予想以上にコストがかかってしまうケースも見られます。そのため、AWS移行後も継続的に利用状況や料金を確認し、必要に応じてリソースの棚卸や構成の見直しを行うことが重要です。継続的に最適化を行うことで、パフォーマンスを維持しながら、コスト効率を高めることが可能になります。

さらに、長期的な視点での最適化として、先進的な技術やサービスの導入も検討したいポイントです。例えば、コンテナ化やサーバレスアーキテクチャの採用、マネージドサービスの積極的な活用、そしてインフラの構築・運用・監視プロセスの自動化などがあり、これらを適切に活用することで、より効率的でスケーラブルな環境を構築できます。

AWS移行後の最適化は1度きりの作業ではありません。継続的なプロセスとして捉え、クラウド環境の柔軟性を最大限に活用して、常に変化するビジネスニーズに迅速に対応することで、AWS移行の真の価値を引き出します。

移行を成功に導くAWSパートナーの活用

AWSは環境構築の容易さが大きな魅力ではありますが、特有の設計思想や考慮すべきポイントにより、移行プロセスが複雑になる可能性があります。データ移行1つを取り上げても、データの量や種類によって最適な方法は異なり、さらにシステム停止時間の許容度など、業務への影響を慎重に評価する必要があります。

また、実際の移行プロセスでは、予期せぬ課題に直面することも少なくありません。例えば、オンプレミス環境がインターネットに接続されていないために想定していた移行方法が使えないケースや、OSのバージョンが古く事前のアップグレードが必要なケース、他システムとの密接な連携により影響範囲が広大になるケースなどが挙げられ、スムーズな移行を実現するには、PoCを通じた段階的な検証が不可欠です。

AWSの知識をゼロから学んで、移行の全てを自社で進めようとすると、大きな時間と労力がかかってしまいます。最終的に内製化を目指すとしても、必要なノウハウを迅速に獲得して効率的に移行を進めるために、初期段階は経験豊富なAWS パートナーの支援を受けることをお勧めします。

クラスメソッドの移行支援内容

クラスメソッドでは、延べ4,000社以上に及ぶ導入支援の実績をもとに、包括的なAWS移行支援サービスを提供しています。移行ステップを「評価」「準備」「移行」「運用」の4つに分け、お客様ごとに最適なAWS移行戦略を策定・実行します。豊富な専門知識と経験を活かし、潜在的な問題を早期に特定し効率的に解決することがクラスメソッドの強みです。さらに、移行後の最適化や継続的な改善にも貢献します。

<クラスメソッドの移行支援事例:株式会社近鉄百貨店様>

業務システムをAWSに移行するにあたって、当初は内製での移行を想定していたものの、8TBに及ぶデータの移行はAWSに詳しいベンダーの支援が必要と、クラスメソッドの移行支援サービスを利用することに。AWS MGNの仕様によるトラブルなども、クラスメソッドに問い合わせしながら1つずつ解消したほか、テストインスタンスでの予行演習も実施し、本番移行はダウンタイムをわずか30分ほどに抑え、スムーズに完了しました。

移行作業を全て任せるのではなく、内製化や自走に向けた“伴走”に徹した支援により、コストを抑えながら社内のナレッジ蓄積にもつながりました。その後、SAPシステムのAWS移行に着手、さらに複数システムのAWS移行を内製で進める計画です。

株式会社近鉄百貨店様事例:大容量のサーバーのAWS移行を伴走支援 内製化をサポートして外部委託コスト大幅圧縮を実現

AWS移行支援サービス資料

AWS移行支援サービスは評価・検討から移行後の運用まで、一貫したAWSへのマイグレーションを支援します。課題や体制に合わせて必要な支援の選択が可能です。

もくじ

  • クラウドサービスの導⼊で得られるメリット
  • クラスメソッド移⾏⽀援サービス
  • AWSへの移⾏⽀援のモデルケース

など

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