ホームセンターのチェーンストアを運営する株式会社カインズは、デジタル戦略を加速させるための活動拠点として、東京・表参道「CAINZ INNOVATION HUB(カインズ イノベーションハブ)」を設置しています。2020年6月、この拠点の1階に「CAINZ COFFEE STAND&SPACE」を新たにオープンしました。カインズブランドの情報発信、研究開発拠点としての役割も担う本スペースは、イノベーションを生み出す場として新たな試みを積極的に取り入れています。
その一環として、クラスメソッドのクラウドサービス「CX ORDER」を採用し、モバイルオーダー用LINE LIFFアプリを作成。2020年12月にモバイルオーダーを店舗へ導入されました。本サービスを導入するにあたっての経緯や課題、導入時のエピソードや今後の展望まで、デジタル戦略本部デジタルイノベーション室長(当時)の内山さんに、詳しくお話をうかがいました。
コロナ禍での危機感から、新しいデジタル化施策を積極的に採用
表参道に位置する「CAINZ INNOVATION HUB(カインズ イノベーションハブ)」は、カインズのデジタル部門の拠点を担っています。この拠点の1階にオープンさせた「CAINZ COFFEE STAND&SPACE」では色々な新たな仕掛けを構想していました。その第一歩となる取り組みが“キャッシュレス”。管理コストがかかる現金を店舗に置かないことで、スタッフや店舗の負担を軽減する意図があったそうです。
「カインズでは、社会のデジタルシフトを牽引する業界のリーダー的な存在として、クラスメソッドの横田社長を2019年から社外アドバイザーとして迎えています。このカフェについてもオープン当初から、今後いろいろな取り組みのお手伝いをお願いしたい、とお声がけしていました。キャッシュレスのレジはクラウドPOSを導入しています。キャッシュレスであれば“レジ上げ”と言われるような精算業務が一切ありません。現場スタッフにとっても負担が減って、素晴らしいと思いました」(内山さん)
一方で、キャッシュレスストアであるというだけで、注文はレジに並ばないと出来ませんでした。またカインズのオフィスの1階にあるカフェという特性上、社員からの注文が多く、注文のために足を運び、列に並んで順番が来るまで待つという時間をどうにかできないか、という課題が上がっていたといいます。
「カフェオープン後は、新型コロナウィルスが蔓延する状況への危機感が募っていた時期でもあります。そんな時、デジタル化のアドバイザリーであるクラスメソッドさんからモバイルオーダー導入をご提案頂きました。レジ前での“密”を回避するためにも素晴らしい仕組みだと思いましたので、LINEアプリでのモバイルオーダーを導入する方針をすぐに決めました」(内山さん)
非エンジニアでも直感的に理解できるUIで、短期にモバイルオーダー導入
もともと実験的な店舗だったため、LINEアプリでのモバイルオーダーを新しく導入することについては何も問題なく、積極的に進めることができたといいます。準備に2ヶ月半程度をかけてのリリースとなりました。
「自分はプログラミングについての知識はゼロですが、実際にモバイルオーダー用LINE LIFFアプリを準備する作業に入ってみると、既に用意されているパーツを繋ぎ合わせればいいだけという手軽さでした。結論から言えばクラスメソッドさんに操作を問い合わせることなく、本当に手軽に作ることができました。LINE LIFFアプリの作成にかかった期間はたった4週間程度でした」(内山さん)
時間がかかったのは、写真をはじめとした商品情報を用意することや、LINEのリッチメニュー表示内容、メッセージ、お客様に対してどういう問いかけをしたらいいかなど、情報やデザインを整理することだったそうです。決済方法については、オープン時から入っているシステムとLINEでの会計を統合しようと検討したものの、すぐに対応するのは難しく、当面は2つの会計方法を併用することとしました。2系統の会計について合算する仕組みを用意することで、現場のスタッフが負担に感じないような運用になっているとのことです。
「導入後はまず社員全員にLINE公式アカウントを友だち追加してもらい、モバイルオーダー機能を利用してもらうようにしました。自分のデスクから、自分のスマートフォンで注文できるようになり、また商品の準備が完了するとLINEに通知が来るのでスムーズに商品を受け取ることができるようになりました。『並ばなくていいって、こんなに快適だったのか』という声が聞こえてくるようになりましたよ」(内山さん)
1ヶ月間、従業員限定で利用し、大きな問題がないことを確認してから一般公開に踏み切りました。その後、リピーターのお客様ほど、モバイルオーダーを利用して注文するようになったそうです。
「現場スタッフとしては、LINEアプリを使うことで『注文が完了しました』『準備ができました、取りに来てください』とお客様にメッセージが送れるようになったのがすごく嬉しい機能だったようです。お客さんから『まだできないの?』と聞かれることも無くなった、と言っていましたね。このモバイルオーダーの仕組みを知った他店舗から『うちでもお客様にメッセージ送れるようにしたいです』と言われたりするんですよ」(内山さん)
この一連のシステム導入は、現場スタッフにとって作業というほどの負担もなくスタートでき、大変スムーズに運用できているといいます。自分たちでメニューやメッセージを作成しているため、現場で運用をしながらエラーやボトルネックになっている部分を確認し、運用しているスタッフ自ら改善できるという点も利点と感じられたようです。
「CX ORDERを利用することで、エンジニアリングの知識が無くてもモバイルオーダーを素早く導入できるのはもちろん、小売店舗が必要としているものを理解された上でサービスが設計されているのが凄いと思いますね。クラスメソッドさんが運営されているキャッシュレスカフェ『DevelopersIO CAFE』の経験が生かされていると感じました」(内山さん)
お客様の気持ちに寄り添いながら、カインズ店舗へモバイルオーダー導入検討
コロナ禍で東京の状況が難しくなるにつれ、メインのユーザーとして想定していた社員の出社も減り、表参道に位置する「CAINZ COFFEE STAND&SPACE」は休業日が多くなってしまっています(✳︎本インタビューは2021年6月に行われました)。一方で、カインズの主事業であるホームセンターはこのコロナ禍で需要が高まっていることもあり、併設カフェの稼働は求められています。
店舗での“密”を避けるため、またお客様の利便性を考えると、カインズ店舗内のカフェにもモバイルオーダーを導入していきたい、と語る内山さん。現場スタッフからも、お客様と現金のやりとりをせずに済み、注文待ちなどの密の回避になるなら早く導入して欲しいという声も多いそうです。一方でなかなか導入に踏み切れないのは、ホームセンターという幅広いユーザー層が来店する場で、スマートフォンをあまり使いこなしていないお客様への対応も求められることが理由の一つだと言います。
「モバイルオーダー導入は、まだ対応に気配りが求められるタイミングなのかなと思っていますが、モバイルオーダーを実験的に導入したいという声をあげてくれる店舗もありますので、仕切り直して進めていきたいと思っています。また、いま社内で検討しているのはテイクアウト専用窓口。『テイクアウトの方はモバイルオーダーをお使い下さい、早くお出しできます』としたらどうかと考えています」(内山さん)
クラスメソッドは、LINE Biz Partner Programの Technology Partnerとして、またカインズのデジタルアドバイザリボードのメンバーとして、LIFFアプリおよびLINEミニアプリ開発をはじめとした技術力と経験により、今後もカインズのデジタル化施策に貢献してまいります。