株式会社FLINTERSは、セプテーニグループの開発組織を背景に持ち、そこで培われた高い技術力で企業のDXを支援しています。同社は現在、エンジニアの採用ブランディングと技術力のアピールを強化するため、技術ブログのプラットフォームとしてZenn Publication Proを活用しています。かつてはブログ運用が途絶えてしまった経験を持つ同社が、どのようにして「書く文化」を再始動させ、顕著な成果を上げているのか、その中心人物である広報の会田沙良様、CTOの河内崇様、サーバーサイドエンジニアの野崎様にお話を伺いました。
9割は採用アピール。しかし「書く文化」は途絶えていた
多くの技術系企業にとって、テックブログは技術力のアピールと採用ブランディングの重要な柱です。しかし、その「継続」は永遠の課題です。
同社も例外ではありませんでした。広報の会田さんは、テックブログの目的を「9割方、採用アピールです」と断言します。ところが、会田さんが入社する前、テックブログの運用はうまくいっていませんでした。
「2020年以前にも、社外向けの発信を活発化させようという動きはあったようです。ですが、個人ノルマ的な運用がうまくいかず、結局フェードアウトしてしまったと聞いています」(会田さん)
会田さんは入社後、既存のプラットフォームで創業10周年記念のブログリレーを実施したり、「役員自身にもブログを書いてもらう」というアプローチで、執筆への抵抗感を減らす取り組みをし始めました。
しかし、一般的に、エンジニア組織のアウトプットを広報が主導して継続させるのは困難を極めます。同社も「アウトプットへの熱量は、全体としてあまり高くないと感じていた」といいます。
また当時、複数の技術情報共有サービスを併用しており、プラットフォームが分散し、企業の資産として集約しにくいことも課題でした。加えて、汎用的なブログサービスでは、プロジェクトマネージャーの記事からエンジニアの記事までが混在し、内容の精査が難しく、技術ブログとしての体裁が崩れていました。
転機は「会社方針としての」発信の強化。「広報主導」の再始動とZennへの移行
そのような中、FLINTERSとして、全社的にブログでの発信を強化していこう、という方針が掲げられました。この決定を受け、活動を本格化させるための場所として白羽の矢が立ったのがZennでした。
「移行の決め手は、もともとエンジニア社員から『Zennが良い』という声が上がっていたことです。見た目が綺麗なこと、そして何より『技術にフォーカスしたかった』というのが最大の理由です」(会田さん)
エンジニアコミュニティで既に愛好されていたZennへの移行に対し、すでにZennに触れていた社員が多かったこともあり、反対意見は一切なかったといいます。
Publication Proと「広報の伴走」が生んだアウトプットの仕組み
会田さんは、Zenn Publication Proというツールに移行したことを機に、緻密な戦略で「書く文化」の醸成に乗り出しました。
マネージャーを巻き込む「仕組み化」経営層からのコミットメントに加え、記事の継続的なアウトプットを個人の熱量だけに依存させない仕組みを導入しました。CTOの河内さんも、この仕組みの重要性を語ります。
「チームの技術力が会社の力であり、チーム横断的に『どんな人がいるか』を知った方がいい。そのために勉強会や発信を推奨してきました。マネージャーにはメンバーの育成責任があり、発信を促すことはその一環でもあります」(河内さん)
この方針に基づき、外部発信への積極性をマネージャー自身にも持ってもらえるように促しました。
Publication Proが実現する「ワークフロー革命」
Publication Proの機能は、この広報主導の取り組みを強力に後押ししました。
特にインパクトが大きかったのが、アカウント発行の簡便さです。
「以前はサービスごとにID登録が必要でしたが、Zennでは社内wikiに記載した特定のURLからアクセスするだけで、誰でもすぐに執筆を始められるようになりました。この手軽さは大きいです」(会田さん)
さらに、会田さんはZenn Publication ProのAIレビュー機能を活用し、記事化のハードルを劇的に下げるワークフローを考案しました。
「社内勉強会の書き起こしをブログ記事として発信するアイデアを試しています。会議録からブログを執筆し、Zennに貼り付けてAIレビューにかける。この作業は30分以内に完了できます」(河内さん)
AIレビュー機能が誤字も指摘してくれるし、内容の評価もある程度してくれるため、「公開しても大丈夫だな」という安心感を持てたと会田さんは評価します。
「熱意が冷めないうち」に公開へ。広報の徹底した伴走
ツールや仕組みだけでは、文化は定着しません。会田さんは、執筆者のモチベーション維持にも心を砕きます。
「無理やり書せるのではなく、『めちゃくちゃがっちりしてなくてもいいから、最近やってることとかでいいよ』と伝え、書くことの楽しさやメリットを丁寧に伝えています」
その姿勢はレビュープロセスにも表れています。
「私自身が、誤字脱字の指摘や内容の評価を含む『超ハードルの低いレビュー』を心がけています。そして、執筆者の熱意が冷めないよう、記事が上がってきたら私は基本的にすぐ見て、すぐ返します。当日公開も全然ありますし、遅くとも翌日には確認して、熱が冷めないように気をつけています」(会田さん)
新卒エンジニアのバズが新たな熱を生む
この広報主導の取り組みとZennというプラットフォームは、着実な成果を生み始めました。
最大の目的であった採用において、「ブログを再開したところ、最終面接を受けた候補者がブログを100%見ているという、非常に良い反応がありました」と会田さんは顔をほころばせます。
そして何より、社内にポジティブな変化が生まれました。
新卒で入社したサーバーサイドエンジニアの野崎さんは、研修後に記事執筆を開始しました。「研修が終わり、プロジェクトの進め方を工夫して少し手が空いたタイミングで、『とりあえず書いてみるか』と思って書きました。それまでブログは誰かが既に書いている内容かもしれないと懸念していましたが、書いてみて考えが変わりました」(野崎さん)
そして、野崎さんの書いたもののうち1本が特に大きな反響を呼びました。
「友人やXで多くの反応があり、特に尊敬している人に内容を認められたのがうれしかったです。ブログは『自分がこういうことをしてるよっていうのを発信できる機会』であり、フィードバックをもらえる場だと感じ、執筆へのハードルが下がりました。」(野崎さん)
「今後は、執筆者のモチベーションをさらに高めるため、ゲーミフィケーション的な要素などもZennに期待したいです」と会田さんは語ります。広報主導で始まった技術発信の挑戦は、確かな手応えとともに、次のフェーズへと進んでいます。
クラスメソッドは、今後もZennを通じてFLINTERSの技術広報活動を引き続き支援して参ります。


