デジタル地図や位置情報技術を活用したオートモーティブビジネスを始め、防災・災害対策などの公共システムや、トラックやタクシーの配車システムなど多様なシステムに利用可能なGISビジネス、人流を活用したマーケティングリサーチなどのアプリケーションビジネスを展開するジオテクノロジーズ株式会社。2021年にパイオニアグループから独立した同社は、他社のクラウドサービス上で運用していた地図検索サイト「MapFan」の会員管理システムを、VMware Cloud on AWSへ移行しました。プロジェクトを担当された沼野さん、根本さん、守國さんにお話をうかがいました。
地図サービスの会員管理システムの運用を自社管理に切り替え
1994年創業のジオテクノロジーズは、カーナビを軸としたオートモーティブ分野に特化したデジタル地図を整備してきました。GIS分野にも事業を拡大し、アプリケーションやクラウドサービスも手がけています。法人向け・個人向けに幅広いサービスを提供する中、個人向けとしては移動するだけでポイントが貯まるポイ活アプリ「トリマ」を2020年にリリース。2024年4月現在、1,800万ダウンロードを超えるアプリとして成長を続けています。
同社の個人向けサービスの中でも、老舗のサービスが1995年にPC用電子地図ソフトとして発売され、1997年からWebサービスとして提供している国内最大級の地図検索サイト「MapFan」です。誰でも利用できる地図サービスですが、会員登録することで地点・ルートのブックマーク機能やお出かけプランの作成機能が利用可能になり、利便性がより高まります。そのため現在は登録会員数が300万人を超える人気サービスとなっています。
「MapFanの会員管理システムの管理は、外部に委託し、他社のクラウド上で運用していました。そのため運用委託費用が割高になりがちで、運用費込みでのトータルコストの削減が課題となっていました」(沼野さん)
「外部に運用を委託し続けるということは、自社で自由にサーバーを立てて開発を継続することも難しく、対応に遅れが発生します。加えて、作業できる内容や作業時間にも制限があり、申請・承認の手続きにも時間を要していました。自由度とスピード感を高めるためにも自社運用への切り替えが必須でした」(根本さん)
VMware Cloud on AWSへ既存インフラをそのまま移行
MapFanの会員管理システムの移行を検討した同社は、ジオテクノロジーズの標準クラウドであるAWSを採用し、VMware Cloud on AWSへの移行を決めました。VMware Cloud on AWSを採用した理由は、既存のVMware基盤を“そのまま引っ越しできる”ことにありました。
「既存のVMware環境はシステムが古く、ネイティブなAWSに移行するとアプリケーション改修が発生してコストがかかり、移行期間も長くなります。そこで将来的にネイティブAWSサービスでアプリケーションを作り直すことを見据えて、まずは移行を最優先することにしました」(沼野さん)
技術支援のパートナーについては、同社とAWS関連のプロジェクトでさまざまな実績があるクラスメソッドを指名しました。
「過去にMapFan APIのAWS移行や、MapFan APIの新機能開発などを支援いただき、技術力の高さは高く評価していました。今回も迷うことなくクラスメソッドにお願いすることにしました」(沼野さん)
迅速なレスポンスで約60台の仮想マシンを8カ月で移行
移行は当初、既存IPアドレスを活かしたL2延伸で行う予定でしたが、当時の委託先のネットワークセキュリティの都合などでL2延伸が利用できず、方針を転換してファイルのエクスポート/インポートで実施しました。
「移行作業は泥臭く進めました。運用中のサーバーに関しても、日々の差分を更新しながら、地道に反映させていきました」(根本さん)
移行に際しては、既存環境のデータを精査して不要なサーバーは削減し、移行時の負荷を軽減する工夫もしています。
「開発メンバーにも確認しながら、サービスが終了しているドメインなど、明らかに不要な仮想マシンを削減しました」(守國さん)
プロジェクトではその他にもAWS ENIを介したネイティブAWS環境のロードバランサー(ALB)との連携や、AWS Backupを用いた仮想マシンのバックアップ環境の構築などを実施しています。クラスメソッドとは、レスポンスの速いやり取りで開発をスピーディに進め、「1年以内に移行する」という計画通りのスケジュールでプロジェクトを完結しました。
「初歩的すぎるかも、と思うような質問であっても定例会やBacklogで気軽に聞ける環境があり、和やかな雰囲気で進めることができました。不慣れなVMwareの管理ツールについても教えていただき、頼りになりました」(根本さん)
「委託先の環境からIPアドレスやファイアウォールも含めて移行する際も、クラスメソッドのエンジニアがドキュメントをBacklogのwikiにまとめてくださったので、ネットワーク構成を理解することができました」(守國さん)
アプリケーションを改修しながらネイティブAWSへ移行
MapFanの会員管理システムをフルマネージドなVMware Cloud on AWSに移行したことで、当初の課題であった運用費込みのトータルコストは軽減できる見込みとなりました。自社管理への切り替えにより自由度も高くなり、運用の効率化に向けてさまざまな対策が打てるようにもなりました。
「まずは300万人の会員が利用するシステムを、致命的なトラブルや不具合がなく移行ができたことが一番の成果です。一方、移行を最優先としたために、古いOSやアプリケーションは旧態依然のままですので、半期ごとに計画を立てながらモダナイズに取り組み、アプリケーションを改修しながらネイティブAWSへの移行も含めて検討を進めていきます」(根本さん)
「今回のプロジェクトを通して、ファイアウォールのルール設定やロードバランサーの設定といったノウハウを獲得でき、自分たちでも対応できるようになりました。今後も開発の自由度を活かしてデプロイの自動化や、AWSのサービスと連携した会員データの集計自動化などにも取り組んでいけたらと思います」(沼野さん)
GitLab SaaSを導入してセキュリティを強化
クラスメソッドとは本プロジェクトの終了後も関係を維持し、2024年4月にはアプリケーション開発支援ツールのGitLab SaaSを導入しました。同社では、バージョン管理を主体としたアプリケーション開発支援ツールとしてGitLab Premiumプランを導入済みですが、グローバル展開、ガバナンス・コンプライアンス強化に向けて柔軟でスピーディなアプリケーション開発環境の構築は重要なテーマとなっていました。
そこでセキュリティ強化の一環としてDevSecOpsを採用する方針を固め、より充実したセキュリティ機能が利用できるGitLab Ultimateプランへのアップグレードを検討しました。1カ月間のPoCで同社の評価基準を満たすことを確認した後、クラスメソッドを介してAWS MarketplaceからGitLab Ultimateプランを年間契約で購入しました。
「ジオテクノロジーズの近年の取り組みとして、アプリケーションのセキュリティを重視しています。特に海外向けのサービスは、攻撃者からアプリケーションの脆弱性を狙われることが多いことから、セキュアな開発を推進するためにGitLab Ultimateプランを採用しました」(沼野さん)
その他、今後もAWSの新たなサービスの導入を通して、システムのモダナイズやコスト低減に取り組んでいく方針で、クラスメソッドの継続的な支援に期待を寄せています。
「AWSは長らく利用していますが、世代更新は必ず必要になってきますので、当社の課題改善につながるサービスが出てきましたら、いち早く紹介していただけるとありがたいです」(根本さん)
位置情報/人流データをはじめとする膨大なビッグデータと先端技術を組み合わせて新たなビジネスを続々と打ち出しているジオテクノロジーズ。クラスメソッドは技術支援を通して、システム環境の強化と事業の成長に貢献してまいります。