「人生観を変えるようなコンテンツを」を企業ビジョンに、コンシューマーゲームやアーケードゲームの開発を手がけるヒストリア。同社は自社パブリッシングタイトルのサバイバルアクションレースゲーム『Faaast Penguin』(ファーストペンギン)の開発にあたり、アマゾン ウェブ サービス(AWS)のゲームサーバー開発向けフルマネージドサービスであるAmazon GameLiftを採用。クラスメソッドからインフラ設計・構築の技術支援を受けながら開発し、2024年9月より配信を開始しました。プロジェクトについて、代表取締役の佐々木さん、エンジニアの馬場さんと高柳さんにお話をうかがいました。
たくさんのライバルペンギンとぶつかり合いながらサバイバルレースを勝ち抜く『Faaast Penguin』
人気ゲーム『Caligula2』の開発・PC版販売、『ライブアライブ』や『ジョジョの奇妙な冒険 ラストサバイバー』の開発などを手がけるヒストリア。メジャーゲームエンジンのUnreal Engine専門のソフトウェア開発会社として、ゲーム事業、エンタープライズ事業、コミュニティ活動の3つを軸として展開しています。エンタープライズ事業では、自動車業界、建築業界、映像・放送業界向けにUnreal Engineを活用したコンテンツを制作しています。
同社が、自社初となる大型ゲームパブリッシングタイトルとして開発したのが『Faaast Penguin』です。Faaast Penguinはたくさんのライバルペンギンとぶつかり合いながら、4つのコースを勝ち抜け方式でめぐる、爽快ではちゃめちゃなサバイバルアクションレースゲームです。ペンギンになったプレーヤーが、ライバルにアタックを仕掛けて飛び上がったり、スペシャルライドで巻き返したりしながら、誰よりも早いゴールを目指します。
基本プレイは無料で、2024年12月時点にてSteam/Epic Games Store/PlayStation5/Nintendo Switch/Xbox Series X|Sのクロスプラットフォームに対応。幅広いユーザーに親しまれています。
クロスプラットフォーム対応ゲームを効率的に開発するためAmazon GameLiftを採用
Faaast Penguinの開発にあたり、インフラ基盤は同社のテスト環境で利用実績があり、既存開発パートナーの株式会社ファインさんがノウハウを持つAWSをベースに検討。開発効率を高めるためにマルチプレイヤーゲーム用のフルマネージドサービスであるAmazon GameLiftの採用を決めました。
「クロスプラットフォームを実現するうえで必要なマッチングの機能(FlexMatch)と、オートスケーリングの機能が決め手となりました。既に経験があったことと、AWSさんによるサポート体制が充実している点も採用を決めた理由のひとつです」(佐々木さん)
インフラ領域の開発を担当するパートナーは、数社を比較した中からクラスメソッドを採用しました。
「インフラの知見が不足している私たちにとって、技術力の高いパートナーにお願いしたいと思っていました。その中で、技術ブログ(DevelopersIO)で積極的に発信しているクラスメソッドの企業文化が、週に1回10年間にわたってUnreal Engineの技術情報を発信している弊社の特性と重なるところがあり、親近感を覚えたのも採用の理由です。クラスメソッドなら積極的にプロジェクトにコミットし、的確なアドバイスがいただけることを期待してお願いしました」(佐々木さん)
密な連携によって開発課題を解決
本番環境を見据えたサーバー環境の開発は、2023年10月にキックオフ。開発体制は、ゲームアプリケーションをヒストリア、バックエンドをファイン、AWSの基礎構築やセキュリティ対策をクラスメソッドが担当し、AWSジャパンとも密に連携しながら進めました。
開発は、フェーズ1とフェーズ2に分け、フェーズ1ではクラスメソッドがAmazon GameLiftによるインフラ設計と構築を支援しました。AWS環境は開発、QA、ステージング、サブミッション、負荷試験/本番の5環境を用意し、一部マルチアカウントにより環境を分離してオペレーションミスの防止とユーザー権限管理の簡易化を図っています。Amazon GameLiftのマッチング機能(FlexMatch)の設定については、AWSジャパンの支援を受けながら、定例ミーティングの中でヒストリア、ファイン、クラスメソッドの3社で確認を取りながら進めました。
世界配信に向けてAWSのリージョンは日本以外にも北米・欧州を選定し、複数のロケーションにフリートを配置するマルチロケーションフリートを採用しています。
開発のフェーズ2では、主に監視運用環境の設計・構築と負荷試験を中心に行いました。運用環境は、ユーザー体験の向上に向けて、安定稼働を維持しながら、ランニングコストを抑制することを3社で意識しながら設計・構築し、可用性とコストのバランスを図っています。リリースの1カ月前から実施した負荷試験は、クラスメソッドから専用のツールの手配や環境構築の支援を受け、さらに予算感のアドバイスを受けながら実施しました。
「クラスメソッドさんからは、サーバーの上限緩和の申請に関して教えていただいたり、負荷試験の金額を圧縮するためのアドバイスをいただいたりしました。予算を預かるプロデューサーとして、どれだけのコストがかかるか不安の中、予算感を示していただけたことで、安心してゴーサインを出せました」(佐々木さん)
ゲームリリース時には、ヒストリア、ファイン、クラスメソッドの3社で待機。深夜0時のリリース以降も見守り続け、トラブルなく本稼働を迎えました。
Amazon GameLiftを使ったゲーム開発の知見を獲得
Faaast Penguinは、配信開始から2か月で累計50万ダウンロードを突破し、すでにユーザー主導の大会が数多く開催されるなど、ユーザーコミュニティが形成されており、多くのユーザーに愛されるゲームへ成長しています。同社ではタイトルリリース後も細かなトラブルに随時対処しながら、ユーザーがより快適にゲームを楽しめるように改善を重ねています。
リリースまでの開発を終えた現時点の総括については、Amazon GameLiftを使ったゲーム開発の知見が獲得できた点や、サーバー運用コストを軽減できたことに手応えを感じています。
「ベータテストの段階では、想定外のトラブルに遭遇した時も何度かありました。しかし、それらの経験はAmazon GameLiftを使ったクロスプラットフォーム対応のコンシューマーゲームの開発における知見として、今後に活きる知見となりました。また、運用監視によりサーバーコストを最適化し、ゲームのプロモーション予算に回せたのも良かったです」(佐々木さん)
プロジェクトを支援したクラスメソッドについては、スピーディな対応と的確な技術支援を評価しています。
「『これをやってみたい』と漠然とした相談を持ちかけた時も、素早く回答をいただきました。必要な要素や手順を示し、コストも考慮したアドバイスがいただけるので、ジャッジの際も困ることなくプロジェクトを前進できました」(高柳さん)
アップデートでFaaast Penguinをより魅力的で楽しいゲームへ
同社は、Faaast Penguinをより多くのユーザーに楽しんでもらうべく、短サイクルでのアップデートを継続していく方針です。さらに、今回の経験を活かしてネットワークゲームの開発の知見をより高めていく構想も描いています。
「まずは、Faaast Penguinを応援してくれるファンの期待に応えるため、メジャータイトルとして世の中に広めるべく全力で取り組んでいきます」(佐々木さん)
「今後のコンシューマーゲーム開発では、ネットワークやAWSの開発ツールの知識が不可欠になると思います。エンジニアとして知識を深めながら、社内ブログなどで社内の情報共有を進めていきます」(高柳さん)
「今回の開発案件を通して、ネットワークゲームやAmazon GameLiftの経験が積めましたので、選択肢のひとつとしてゲームの企画提案に活かしていきたいと思います」(馬場さん)
クラスメソッドは、Unreal Engineで高い技術力を持つヒストリアのゲーム開発を、引き続き支援してまいります。