京阪グループは、京都と大阪をつなげる京阪電気鉄道から始まりました。今では運輸業、不動産業、流通業、レジャー・サービス業など、様々な事業・サービスを展開し、お客さまのくらしに寄り添い、必要な価値を将来にわたり、京阪ならではの視点で提供し続けていくことを大事にしています。
これからは持続可能な循環型社会の実現に向けて、京阪グループの新たなブランドとして確立に取り組んできた「BIOSTYLE(京阪版のSDGs)」を経営・事業活動の軸に据え、社会的価値と経済的価値を両輪で創造する「BIOSTYLE 経営」を推進していくことをテーマに掲げています。
京阪グループでデータ利活用を推進しているのが、京阪ホールディングス IT推進部です。同部は京阪グループのITインフラ保守・運用のほか、デジタルマーケティング施策の企画および推進、社内のシステム構築に関わるプロジェクトマネジメントを支援しています。今回はクラスメソッドの課題整理支援パックとデータ活用のアドバイザリーサポートをご利用いただいた経緯や効果について、同部の西尾さんと松田さんにおうかがいしました。
きっかけはLINEアプリを活用したデジタルチケットの導入支援
業種や業態を問わず「DX」や「データ利活用」は企業の成長に欠かせないテーマです。京阪グループでも取り組んできたものの、人材育成や実践ではまだ模索もありました。
転機となったのは2022年夏。京阪ホールディングスが、LINE公式アカウント「比叡山・びわ湖<山と水と光の廻廊>」を通じて新サービスを展開しました。例えば「デジタル比叡山フリーパス」は、比叡山エリアの乗り放題乗車券と、比叡山延暦寺の諸堂巡拝券がセットになったデジタルチケットです。他にもスタンプラリーやカフェのモバイルオーダーなど、新しいデジタル体験を企画しました。
このキャンペーンのLINEアプリを活用したサービス導入をクラスメソッドが支援したことがきっかけで、データ活用での支援につながりました。経緯について西尾さんは、次のように振り返ります。
「キャンペーンのデータ分析結果をBIツールのTableauで可視化しようと構想していたものの、想像以上にTableauの習得に時間がかかり苦戦していました。そこでクラスメソッドさんに相談し、BI専門部隊を紹介いただいてハンズオンとダッシュボード構築でスポット的に支援してもらったのがはじまりです」(西尾さん)
Tableauの選定理由として、松田さんは「Tableauは幅広い業種・業態での導入実績があり、加えてETL機能が簡易的に使えると聞いていました。当時展開していたデジタルチケットでは、さまざまなサービスを横断してデータを統合しますので、Tableauなら要件に適していると考えました」と説明します。
データ利活用のボトルネックはシナリオの検討や課題解決方針の定義
それまでIT推進部では、グループ全体のデータ活用力を高めようと内製の「データ分析の基礎」研修を展開していました。データ活用のボトルネックを探るために、研修の受講者アンケートでデータ活用における課題を質問したところ、資料を作るだけで時間を使ってしまい、クリエイティブな仕事に入れないという回答が寄せられたそうです。そこでIT推進部では、データ活用推進とともに、業務の効率化による時間捻出の必要性も痛感しました。
情報収集を進めた結果、IT推進部はデータ活用のボトルネックに「データ活用シナリオの検討」や「データを活用した課題解決方針の定義」にもあると考えました。そこであらためて現場部門の担当者とともに課題整理を行い、データ活用方針を定めたうえで課題解決の実務に取りかかろうと考えました。
目指すのは、現場におけるデータ利活用や課題解決だけではなく、データ活用人材の育成やノウハウ獲得、内製で各種プロジェクトを進めていける組織作りです。この課題整理を進めていくにあたり、クラスメソッドの「課題整理支援パック」と「アドバイザーサポート」の両サービスを利用しました。
実際の課題整理はクラスメソッドが支援しながら、IT推進部が事務局・実行役となり、現場を支援する座組としました。まずは京阪電鉄の企画部門の課長・係長・スタッフに対して、個別にデータ活用状況をアセスメントし、組織・業務で抱える課題を洗い出しました。
それぞれのアセスメント結果や洗い出された課題を互いに共有して認識のずれを補正し、共通理解を導き出しました。最終的には、課題解決に向けた施策を難易度と期待効果を軸にマッピングし、課題の優先順位をつけてロードマップへと落とし込みました。京阪電鉄のメンバーの負担を軽くするために、定例会は設けずに業務の繁閑に合わせて進めていきました。
グループ内でデータ利活用の機運が高まってきた
半年に渡る取り組みを振り返り、西尾さんは「鉄道部門においてデータ活用で解決できる課題が明確になりました。目指すべき方向性を共有でき、次のアクションにつなげられていることが大きな成果です」と言います。具体的には、部門の垣根を越えて鉄道データの活用を主題としたワーキンググループが始動したことなどを挙げています。
最近では、京阪電鉄の担当者がIT推進部に「対話の機会が増え、気軽に相談できる距離感・関係性を築けています。今まで以上に助けてもらっており、大変頼りにしています」とねぎらいの言葉をかけてくれたそうです。
「個人的にはとてもうれしかったです。こうしてどこかの部門を支援して、しっかり成果を積み上げていく活動が最もふさわしいと思います」(西尾さん)
またデータ分析を進めていくなかで「前からこうだろうなと想像していたが、確かだった」という具合に、現場の暗黙知にデータの裏付けがつくようになったことも顕著な変化の1つです。
「データを帳票で見るよりも、優れたビジュアルで伝えることで、より確かな実感が持てます。今後もますます視覚化を浸透させていきたいです」(松田さん)
社内に浸透してきたデータ利活用の取り組み
クラスメソッドとのデータ活用課題整理の取り組みを、次のように振り返ります。
「伴走支援という形で支援してもらったのが、プロジェクトを推進するうえで大変心強かったです。おかげさまでデータ利活用の取り組みは社内でも浸透してきています。今後はさらに認知を広げ、現場の課題をしっかりと拾い上げて継続的にサポートしていきたいと思います」(西尾さん)
「高い技術力にも助けられましたし、働く姿勢も尊敬できる部分が多くありました。我々の知識・スキルが追いつかないなかで、よく『また何かお助けできることはありますか』と声をかけてくださり、たくさん相談させてもらいました。それは成果にも繋がりましたし、学びも多かったです」(松田さん)
クラスメソッドは、これからも社内データ利活用を通じて、京阪ホールディングスのビジネス発展に貢献していきます。