三菱電機のスマートフォンアプリ「MyMU(マイエムユー)」は、アプリを通じてお客様とつながり続けることで、同社が提供している多彩な生活機器(空調・家電・住設機器)の価値を継続的に高めていくことを目指したIoTソリューションです。同社のクラウド型IoTライフソリューションプラットフォーム「Linova(リノバ)」と連携しながら、生活機器の遠隔操作や自動制御を実現したり、生活機器に関するメンテナンスやお得な情報をお届けしたりします。
同社はその開発の俊敏性を一層高めるべくアジャイル開発の導入に踏み切り、開発の新たなパートナーとしてクラスメソッドを選びました。クラスメソッドのサポートを土台にしたアジャイル開発の導入で、MyMUアプリの開発はどう変化したのか。開発をリードする三菱電機の石原さんと沖野さんに話を伺いました。
価値提供の俊敏性向上を目指しアジャイル開発へ
三菱電機では主要事業の1つ「ライフビジネスエリア」を通じて、より快適で安全・安心な生活空間を創造することを目指しています。その目標のもと、同社が提供しているIoTソリューションがMyMUアプリです。同アプリの役割について石原さんは次のような説明を加えます。
「生活機器は従来、ハードウェア単体でプロダクトとして完結していて、お客様による購入後に機器の機能が拡張されることは基本的にありませんでした。MyMUアプリは、そうした生活機器のあり方を変容させるもので、生活機器の価値を継続的に高めていくことを目指した戦略性の高いIoTソリューションです」
MyMUアプリは、2020年に最初のバージョンがリリースされて以降、生活機器の遠隔操作や自動運転を実現する仕組みを含め、継続的な機能強化・拡充が図られてきました。そして2024年9月からはクラスメソッドとともに開発を進め、「送風ファン」「エアコン」「環境(温度・湿度)センサー」を連携させて様々なスペースを快適にするマルチエリア空調「Good Share!(グッシェア)」に対応した機能も提供されています。Good Share!は、一般財団法人省エネルギーセンターが主催する 2024 年度の「省エネ大賞」における資源エネルギー庁長官賞(建築分野)も受賞しています。

「MyMUアプリは、市場や技術の変化に合わせて、多彩なソリューションを素早くお客様に提供することに力を注いできました。現在は2カ月に1回のペースで新機能をリリースしています」
もっとも、開発を巡っては当初、生活機器に組み込むソフトウェアと同じようにウォーターフォール方式のプロセスが全面的に採用されていました。そのため、開発のアジリティを向上するのが難しかったと沖野さんは振り返ります。
「MyMUアプリを通じて多様なソリューションを素早く展開するうえでは、開発のアジリティ向上が不可欠です。ところが以前はウォーターフォール方式で開発を行っていたため、設計仕様の変更に柔軟、すみやかに対応できないなどの問題があり、開発のアジリティをなかなか上げられませんでした。また、設計・実装・評価の各フェーズで都度改善活動を繰り返していましたが、それでも大きな成果にはつながりませんでした。そこで今回、あらたに開発する機能については、開発のプロセスと体制をアジャイル方式へと大きく変化させようと考えました」
開発パートナーの選定理由は提案力と実装力
アジャイル方式の採用に乗り出した同社では、アジャイル開発をバックアップする開発パートナーとしてクラスメソッドを選びました。選定の理由は、アジャイル開発に関する提案力と遂行能力の高さにあった、と石原さんは指摘します。

さらにもう1つ、同社ではクラスメソッドがベトナムなどの海外に拠点を構え、現地の技術者とスクラムを組みながらアジャイル開発を推進できる能力がある点にも注目しました。この点に関して、沖野さんはこう明かします。
「MyMUアプリ開発の予算にも上限があり、オフショアによるアジャイル開発によって、コストを可能な限り小さく抑えるのが理想でした。クラスメソッドは、その要望にも対応できることを知り、そこにも魅力を感じました」
オフショアによるアジャイル体制の確立

「アジャイル開発の立ち上げに当たっては、オフショアチームに対してMyMUアプリのシステム仕様や実装上の制約に関する情報をしっかりと伝え、理解を深めてもらう必要がありました。そこで、クラスメソッドに体制と環境づくりを伴走型でサポートしてもらい、オフショアチームとの橋渡しを都度担ってもらいました。結果として、アジャイル開発をスムーズに軌道に乗せることができました」(石原さん)
「クラスメソッドには、スプリントにおけるスクラムイベント(スプリント計画、デイリースクラム、スプリントレビュー、振り返り、など)のほかにも個別の技術的な打ち合わせに応じてもらうなど、アジャイル開発が軌道に乗るまで手厚いサポートを提供してもらいました。こちらがQA対応を迅速に行えないときも、確認事項や依頼内容、回答期限を明確にしたうえで問い合わせをしてくれました。当社の事情を勘案した配慮も十分にしてもらえたと感じています」(沖野さん)
手厚いサポートが高品質・低コストのアジャイル開発を実現
石原さんによれば、クラスメソッドの支援を通じて構築されたアジャイル開発の体制はオフショアチームとの連携がスムーズで、高品質な成果物がさまざまに得られたといいます。
「当社では、以前からオフショア開発を一部の開発で行ってきましたが、オフショアチームとの意思疎通がうまく図れず、オフショアチームから納入された成果物が、こちらの意図するものと大きく異なることもありました。一方で、クラスメソッドをスクラムマスターとするオフショアチームは、国内でアジャイル開発を行うのと遜色のないパフォーマンスを発揮してくれています。開発着手後に仕様変更・追加が想定よりも多く発生することもありましたが、クラスメソッドとオフショアチームは、開発の体制やスプリント期間の調整などを柔軟に行ってくれました。これにより、MyMUアプリの新機能を計画どおりに、かつ低コストでリリースできています」
この言葉を受けたかたちで、沖野さんもクラスメソッドが築いたアジャイル開発(スクラム開発)の体制を次のように評価します。
「クラスメソッドは、スクラム開発を滞りなく進めるための事前準備を入念に行ったり、先の見通しを立てながらスプリントの内容を精査したりと、アジャイル開発を計画的に進めるための数々のサポートを提供してくれました。しかも、毎週のスプリントレビューの際にクラスメソッドがデモしてくれる画面は1つ1つの完成度が高く、その実装力の高さにいつも感心させられました」
お客様への価値提供の近道
Good Share!の対応機能のリリースでMyMUアプリの機能強化・拡充が終わったわけではありません。三菱電機では同機能のリリース以降も、生活機器の新しい価値創出に向けてMyMUアプリの継続的なアップデートに力を注いでいます。その取り組みの中で、クラスメソッドの変わらぬサポートに期待を寄せています。その期待の大きさを沖野さんはこう表現します。

沖野さんと同じく、石原さんもクラスメソッドの今後の貢献に期待をかけます。
「例えば、MyMUアプリでは新たな機能提供のほかに、アクセシビリティを改善し、より広範なお客様のニーズに対応していくといった課題もあります。アクセシビリティの改善については、すでにクラスメソッドの助言に従って取り組みを始めていますが、それ以外の部分でもクラスメソッドならではの視点・技術をもって今後も支援いただきたいと考えます。その成果の積み上げによってアジャイル開発の有効性に対する社内の評価をさらに高め、MyMUアプリ以外の領域での採用が進むことも期待しています」
クラスメソッドは引き続き、MyMUアプリを通じた三菱電機の価値提供とビジネス変革の取り組みを支援していきます。