LookerによりECサイトのユーザー動向を可視化
70名の担当者に日次分析データを展開し活用

株式会社パル

執行役員 プロモーション推進部 部長 兼 コミュニケーションデザイン室 室長 WEB事業推進室 室長 堀田覚 様
WEB事業推進室 阿部知久 様
株式会社パル
公開日:2022年1月13日
BEFORE
  • データが複数システムに散在し、分析業務が属人化
  • データの抽出や加工に多くの工数がかかる
  • 月次や週次のレポートが中心で迅速な意思決定ができない
AFTER
  • 統合データ基盤を構築し、BIツールのLookerで可視化
  • 約70名の担当者が日次でダッシュボードを確認
  • データに基づく意思決定が浸透

パルグループの主力事業会社として婦人服や紳士服、雑貨などの企画から製造、卸、小売等の事業を展開するパル。アパレルブランドは、「Kastane(カスタネ)」、「Lui's(ルイス)」、生活雑貨では300円を中心とする雑貨を販売する「3COINS(スリーコインズ)」など、全国に50ブランド以上を展開し、総店舗数は900を超えています。ECサイトは自社サイトの「PALCLOSET(パルクローゼット)」を運用中で、2021年2月期のEC売上高は、外部のショッピングモールも合わせて全体で約237億円に達しています。

多数のブランドを展開する同社において、顧客の動向や趣味嗜好を把握するのは重要な業務です。そこで同社は、散在しているデータを統合するためのデータ分析基盤を構築し、合わせて数値情報(KPI)をグラフィカルに可視化するビジネスインテリジェンスツール(BIツール)として「Looker(ルッカー)」を導入しました。

クラスメソッドは、Lookerプロフェッショナルサービスを提供し、3カ月間にわたって初期導入支援と、データ分析担当者が継続的に運用していくための教育支援を担当しています。Lookerの採用経緯と、導入プロジェクト、実際の運用状況などについて、執行役員の堀田さんと、WEB事業推進室の阿部さんにうかがいました。

Lookerの初期導入支援と運用に向けた教育支援をクラスメソッドに要請

パルのマーケティングチームとECサイトのチームでは、顧客のタッチポイント、販売経路、商品の売上推移、SNSの反応などを見ながら、各種施策を実施しています。しかし、従来は担当者が各店舗に蓄積された履歴データ、ECサイトの販売データ、基幹システムの顧客データなど、複数のシステムから個別にデータを抽出し、システムに附属した簡単な管理画面やExcel、Accessなどを使って分析していました。その結果、業務が属人化し、担当者やブランド間で情報が分断してしまう問題が発生していました。データの抽出や加工にも多くの工数を要するため、定型レポートの作成は月次が中心となり、必要な数値を見たい場合でも週次での把握が限界でした。

「データを活かして次のアクションにつなげたいと思っても、週次や月次では過去の情報から判断することになり、タイミングを逃してしまいます。迅速かつ確実に意思決定するためには、リアルタイム、最低でも日次でデータを見られるようにする必要がありました。加えて、マーケティングチームだけでなく、Web事業に関わるすべての担当者、さらにブランド担当者も合わせて、誰でもデータにアクセスができ、共通のKPIをもとに議論できる環境を構築することが必要でした」(堀田さん)

株式会社パル

課題解決に向けて同社は、散在しているシステムのデータを統合する分析基盤の構築を決断し、Google Cloudの採用を決めました。同時に統合データから見たいKPIを抽出して可視化するBIツールとしてLookerを採用しました。Lookerは、Googleが提供するデータ探索とデータディスカバリーのためのデータプラットフォームです。同社は、Lookerの他に、他社のインストール型BIツールを比較したうえで、Lookerを選択しました。

「本格的なBIツールの利用は初めてでしたので、まずは早い段階で使ってみようという思いがありました。中でもLookerは、Google CloudのDWHであるBigQueryや、CXプラットフォームのKARTEと相性がよく、データ連携に有利になると判断したのが採用の理由です。GoogleのLookerチームとサンプルデータを使ってPoCを実施し、データ加工の方法やダッシュボードの見え方なども確認しました」(堀田さん)

Lookerの導入に際してはクラスメソッドに支援を要請し、Lookerプロフェッショナルサービスを採用しました。クラスメソッドは、同社のGoogle CloudやBigQueryの構築でも、プロジェクトに参画して支援してきた実績があり、LookerとBigQueryの双方に対応できるクラスメソッドを選択するのは自然の流れだったといいます。

「当初はLookerの自社導入も考えたものの、時間的にも力量的にも現実的ではないと判断して、プロの力を借りることにしました。ただし、導入後のデータ活用は、自社で対応していかなければならないため、継続的に活用ができるようにしっかりサポートしてもらおうと考えました」(堀田さん)

CVR、販売推移、Web会員数の推移が見られるダッシュボードを構築

Lookerの導入は、2021年4月から7月までの3カ月で実施しました。最初はECサイトの分析にターゲットを絞り、コンバージョンレート(CVR)、商品の販売推移、Web会員数の推移が見られる3つのダッシュボードを構築しました。プロジェクトチームは、エンジニア、マーケティング担当など7名で構成し、週に1回、1時間程度のWebミーティングを通して、Lookerの使い方やデータの加工方法を学んでいきました。

「クラスメソッドからは、Lookerの基礎から教えてもらい、徐々に自分たちで手を動かしながらダッシュボードを仕上げていきました。Web会議以外でもタスク管理ツール(Backlog)を介したQA対応などで随時伴走していただき、初期構築を無事終えることができました」(堀田さん)

構築過程ではLookerへの理解、複数システムと連携するためのデータ加工、データ粒度の整合性確保などいくつかの難所が現れたものの、何とか乗り越えていったといいます。Lookerでは、SQLを簡易化した独自のモデリング言語であるLookMLを使用し、データ定義や抽出などの操作が簡単に実行できるようになっています。データエンジニアとマーケティング担当は、期間中にLookMLの習得を目指しました。

「クラスメソッドのトレーニングを受けたり、いただいた資料を見たりしながら、実際に作業してみてLookMLを覚えていきました。データを成形するのは初めての経験でしたが、何とか3カ月で入口までたどり着くことができました」(阿部さん)

データから得られる示唆をスピーディにビジネスに反映させることが重要

Lookerプロフェッショナルサービスの利用を終えた2021年8月以降は、自社運用に向けた体制を整備し、2021年11月より50以上のブランドの担当者にダッシュボードを展開しました。BigQueryに蓄積しているデータは、現時点でGoogleアナリティクス、KARTE、ECデータの3つで、それらをもとに日次でダッシュボードを更新しています。

Lookerは、分析モデルやグループ、ユーザー単位で細かくアクセスコントロールができることも特徴です。ユーザーが必要とする機能に応じてライセンスタイプを選ぶこともでき、同社ではこの使い分けによって社内へのデータの展開・活用を進めています。
現在はデータエンジニアと阿部さんの2名が開発権限をもってデータセットやExplore(探索画面)の操作、ダッシュボードの作成などを担当。2021年12月時点で、マーケティング担当者、ECサイトの担当者、ブランドの担当者合わせて70名程度がビューワーの権限でダッシュボードを閲覧しています。

「ビューワーのユーザーには、毎朝出社したタイミングでダッシュボードを見て欲しいとお願いして確認してもらっています。ブランドの担当者からは『見たい数字が見られるようになってありがたい』といった反響が届いたり、『この項目にデータを追加して欲しい』といた要望も届いたりしています。今後はこうした要望も精査しながら対応していきます」(阿部さん)

株式会社パル

Lookerの導入により、課題としていた分析業務の属人化や、データの分散化は解消されました。レポート作成工数の削減も実現し、データ活用にまつわる負担は軽減されました。データも日次ベースで確認ができるようになり、意思決定の迅速化に貢献することが期待されています。

「日次でデータを見られるようになったことで、担当者は日々の優先順位が付けやすくなっていると思います。KPIがダッシュボードの形でわかりやすく可視化されているため、部門内やブランド内での情報共有スピードも従来以上に早くなっています」(堀田さん)

BIツールの導入効果は費用対効果として現れるものではなく、データから得られる示唆をもとに、現場で打ち手をスピーディに考えて対処できることにあると堀田さんはいいます。こうした文化を社内に浸透させ、担当者のマインドセットを変えていくことが今後の発展につながると期待を寄せています。

「データをただ集めるだけでなく、実業務で使えるように意味のあるものにしていくことこそが重要です。そのために、現在もLooker推進チームを設け、活用部門からの相談に乗ったり、データ活用の重要さを啓蒙したりしています」(堀田さん)

AI/MLを活用した意思決定の見える化・自動化へ

データの可視化に向けて第一歩を踏み出した同社では、今後もLookerの活用レベルを高めるための施策を検討しています。データの連携元の拡大、多角的分析のためのデータテーブルの結合、データ連携頻度の短縮、リアルタイム連携等、必要に応じて機能を強化し、より使いやすくしていく考えです。Lookerの利用者拡大についても、費用対効果やユーザーメリットを慎重に吟味しながら、将来的には全国の店舗に展開してデータに基づく店舗運営の実現を目指しています。

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