トルクツール大手の東日製作所では、AWS上に構築した「トレーサビリティ体系図」のシステムレビューをクラスメソッドの技術支援をもとに実施しました。システムを手がけた技術部 ISグループの金子さんに、レビューの内容や満足度について話を伺いました。
トレーサビリティ体系図の配布をDX化、有償から無償への切り替えで顧客満足度も向上
1949年(昭和24年)に設立、東京都大田区大森に本社を構える東日製作所。トルクツールの製造・販売を手がけ、同社の製品は世界100カ国以上で愛用されています。米国、欧州、中国、タイに拠点を持ち、国外の取り扱い代理店は200を突破。自動車などの製造業を筆頭に、化粧品、石油プラント、発電所、さらには航空、宇宙まであらゆる産業を支える優良企業です。

これまで東日製作所では、お客様のリクエストに基づいて紙ベースかつ有償でトレーサビリティ体系図を提供していました。しかしお客様が書類を記入して販売店に持参せねばならない、社内メンバーがトレーサビリティ体系図を紙に印刷する必要があるなど多くの課題を抱えていました。
「そこでペーパーレス化、作業の省力化を目指して、トレーサビリティ体系図をデジタルで配布できる仕組みを構築することにしました。業務コストが大幅に削減されるため、今後は無償提供に切り替えることにより、顧客満足度の向上と競争力強化も目的としています」(金子さん)
活用の深さが求められるAWSでのシステム運用、専門家によるアーキテクチャレビューが必須に
今回のシステムはトレーサビリティ体系図のPDFをブラウザ上に表示する仕組みです。コスト面や運用面を考慮した結果、金子さんはAWS上に試作システムを構築しました。具体的には校正証明書に記載しているQRコードを読み取ると、Amazon CloudFrontを介してAWS Lambdaに接続。自動で発行年月を印字したトレーサビリティ体系図が発行されます。
東日製作所ではクラウドファーストを推進しており、開発用サーバーとしてAmazon EC2を利用していました。「クラウドでのアプリケーション開発が一般化していた背景もAWSを選んだ理由の1つ」と金子さんは話します。
「ただしAWSの基本知識はあるものの、私にはそこまでノウハウがありませんでした。また、従来はAWSをデスクトップアプリとのデータ連携等の用途に利用していたので、今回のようにAWS上に自社システムを構築するとなると、より深い活用が求められます。そのため外部の専門家によるアーキテクチャレビュー支援を受ける必要性がありました」(金子さん)
アーキテクチャレビューをクラスメソッドに依頼したきっかけは、もともとクラスメソッドメンバーズでの接点があったこと、そして何より「技術力が高く信頼できる印象が強かったから」だと金子さんは振り返ります。
「普段から技術ブログの『DevelopersIO』も参考にしていましたし、クラスメソッドがAWS関連のコンサルティングに強みを持っていることは知っていました。相談したところ対応の速さや丁寧なコミュニケーションも好印象だったので、支援をお願いすることにしました」(金子さん)

適切な支援でセキュリティ、コストパフォーマンスの懸念を解消
レビューのプロジェクトは2025年1月から始まり、並行して金子さんは試作システムに磨きをかけていきました。レビューで重視したのはセキュリティとコストパフォーマンスです。
最も懸念していたセキュリティについてはAWS WAF、AWS Security Hubにて対応。不審なアクセスの自動排除、サービス内のアクセス制限などを通じて万全のセキュリティ体制を敷いています。金子さんは「通知や監視の仕組みを自前で用意するのは大変ですが、AWSにはセキュリティ関連のサービスがあらかじめ整っているのがメリット。常に守られている安心感があります」と語ります。
コストパフォーマンスに関してはAWS Lambdaの実行回数を減らすためにキャッシュを有効活用することが重要でした。当初はキャッシュが月をまたいでも更新されず意図した動作になりませんでしたが、クラスメソッドがDevelopersIOに東日製作所の問題を想定したエントリを掲載したことが解決のヒントになったそうです。
「コードを書くなどの技術的支援は契約のスコープ外でしたが、ご相談した初期の段階で当社のキャッシュ問題をクリアする記事を公開してくれたことには感動すら覚えました。今回のプロジェクトでは重要なポイントだったので非常に大きな助けになりました」(金子さん)

単なるパッケージコンサルではなく、気持ちを動かしてくれる存在
支援の評価について、金子さんは改めてこのように語ります。
「とにかく技術的な知識量が圧倒的でした。私の上司も『クラスメソッドに聞けば解決できる』と太鼓判を押すほどでしたから。その結果、当初は1カ月のレビューで支援依頼を完了する予定でしたが、2回にわたる追加支援も依頼しました。こちらが提示した課題がぼんやりしていても、エラーの内容を伝えるだけで的確に原因を教えていただき、とても助かりました。定期ミーティングでも『何か困りごとはありませんか?』と積極的に悩みを引き出していただき、普段の会話が起点となって前に進むことが多かったように思います。おかげさまで開発中に手が止まることがほとんどありませんでした」(金子さん)
トレーサビリティ体系図システムは金子さんがたった一人で構築したシステムです。「技術的な相談相手が社内にいない中で、クラスメソッドの担当者はまさに私にとってのメンターでした」としたうえで、金子さんは次のように続けます。
「オンラインで画面を共有しながら設定変更や修正ポイントについてアドバイスしてもらったり、ひとつひとつのやり取りを通じて信頼関係が築かれたと感じています。単なる技術コンサルではなく、気持ちを動かしてくれる存在でした。」(金子さん)
今回のシステムは2025年9月の外部提供を目標に、最後の仕上げに入っています。AWSでの管理により社内業務効率化にもはずみがつくと期待されており、「今後は社内での情報共有を進めていき、AWSのインフラ管理に対応できる人材を増やしていきたい」と金子さんは展望を述べました。
クラスメソッドはAWSに関する豊富な知見を活かし、これからも東日製作所のDXに寄り添っていきます。