98万点のロイヤリティフリー音源を提供するサービスのアクセスログを活用。分析・可視化基盤を構築し、データ分析の自走を開始

株式会社オーディオストック

開発部 部長 小西雅也 様
公開日:2024年6月13日
BEFORE
  • Webサービスのアクセスログを分析する基盤がない
  • ユーザーから問い合わせを受けた際は生ログを手動で検索
  • 開発部に分析基盤の構築ダッシュボードの作成ノウハウがない
AFTER
  • 時系列ベースの詳細なデータ分析の実現
  • データに基づくサービス施策ビジネス施策の実現
  • 分析・可視化のノウハウ獲得によるデータ分析の自走を開始
株式会社オーディオストック 世界最大級のロイヤリティフリーのストックミュージックサービス「Audiostock」を運営する株式会社オーディオストック。Audiostockのサービス提供プラットフォームにAWSを採用している同社では、WebアプリケーションのログをAmazon CloudWatch Logsに出力していますが、ログデータの利活用ができていませんでした。

そこで、クラスメソッドの技術支援を受けてAmazon AthenaとAmazon QuickSightを中心としたデータ分析・可視化基盤を構築し、データドリブンによるサービスやマーケティングの強化を始めています。基盤構築のプロジェクトについて小西さんにお話をうかがいました。

アクセスログの分析・可視化基盤の構築を検討

岡山県に本社を置くオーディオストックは、「クリエイターがもっと活躍できる世界に」をビジョンに、BGM、効果音、ボイス、歌もの曲を提供する「Audiostock」を運営しています。ロイヤリティフリーの音源は98万点以上、音源を提供する登録クリエイターは3万名以上にのぼり、ユーザーは高品質で多種多様な音源を、動画広告、アプリ、ゲーム、YouTube、テレビ、ラジオなど幅広い用途で利用することができます。

株式会社オーディオストック

料金体系は、単品購入と使い放題の定額制プランから選択が可能で、定額制プランでは個人向けのリーズナブルな「動画配信者プラン」、すべての映像制作者向けの「スタンダードプラン」、企業やチーム向けの「エンタープライズプラン」を用意しています。

Audiostockのサービス提供プラットフォームはAWSを採用し、ユーザーID、フォームへの入力内容、アクセスURL、サイトパスなどのWebアプリケーションログは検索や分析が容易なJSON形式に変換してAmazon CloudWatch Logsに出力しています。しかし、ユーザーからの問い合わせを受けてサービスの不具合の原因を調査したり、新たな機能追加時に影響を調査したりする際は、生のログを手動で検索して調べる必要があり、システム管理者の負担になっていました。そこでアクセスログの分析・可視化基盤を構築しようと考えたのが、プロジェクトの始まりです。

将来的な自走を見据えて技術力が高いクラスメソッドに

アクセスログの分析・可視化基盤の構築を検討した同社ですが、ログやITインフラのオペレーションをメインで担当しているエンジニアは3名程度しかおらず、なおかつサービス開発と兼務しているために社内の開発リソースは圧倒的に足りません。自社には分析・可視化基盤に関するノウハウも乏しいため、将来的な自走を見据えて、外部のパートナーに構築の支援を要請することにしました。

株式会社オーディオストック 「最終的な目標は、自分たちでさまざまなデータを集めてダッシュボードが作れるようになることです。そこで第一歩として、音源の再生履歴ログを活用した分析・可視化基盤を構築し、ユーザーから曲名の問い合わせを受けた際に回答したり、時系列ベースで詳細なデータ分析したりできるようにしたいと考えました」(小西さん)

パートナーには、2021年以来、同社のAWS環境におけるWAFの導入、APIの実装など、AWSアーキテクチャの設計と構築を支援してきたクラスメソッドを選定しました。

「AWS上にシステム基盤を構築する難しさは、大量にあるAWSのサービスの中から最適な組み合わせを見つけて、着実に実行することにあります。AWSのノウハウが少ない自分たちで対応するのは難しいですが、クラスメソッドは私たちが『こういうことがやりたい』と伝えると、コストパフォーマンスも考慮して最適解を見つけて提案してくれます。過去のお付き合いから、AWSに関しては実績も豊富で技術力が高いことは実証済みでしたので、迷うことなくクラスメソッドにお願いすることにしました」(小西さん)

開発の主力メンバーがダッシュボード作りに関するスキルを獲得

プロジェクト期間は、2023年9月中旬から2024年2月末までの約5カ月半。アーキテクチャは、クラスメソッドが提案したスタンダードな構成を採用しました。具体的には、アプリケーションが稼働するAmazon ECSからCloudWatch Logsに出力したログデータを、ストリーミングデータ配信のAmazon Data Firehose経由でストレージのAmazon S3に転送します。S3に蓄積したデータからETLのAWS Glue Data Catalogでデータテーブルを作成し、クエリサービスのAthenaに転送して分析、QuickSightで可視化する流れです。

株式会社オーディオストック
「分析や可視化について私たちには知見がありませんでしたので、全体的な設計を含めてすべてクラスメソッドにお願いしました。業務要件をヒアリングし、最初に最適な提案を提示していただいてから進めたこともあり、安心して任せることができました」(小西さん)

プロジェクトでは、再生楽曲のログだけで1日数万レコードに達する大量データを効率的に処理するために、一定の日数でログを区切って取り込む工夫をしました。また、プロジェクトの途中で発生した新たなログデータを分析対象に加える要件にも対応しました。その他、Audiostockの本番環境のVPCにある楽曲のデータベース情報を蓄積したRDSとQuickSightをネットワークインターフェースのElastic Network Interfaceを介して連携し、楽曲データを参照しながらデータ分析ができるようにしました。

さらに今回は、今後の自走に向けて、クラスメソッドからアーキテクチャに関してひととおりの説明を受けたり、設計・構築資料の提供を受けたりした後、主力メンバーの2名がダッシュボードの作り方についてスキルトランスファーを受けました。

これらのプロジェクトは、同社の岡山の拠点と、クラスメソッドの拠点(北海道・福岡・大阪・東京)をオンラインで結んだ完全リモートで実施し、定例会やタスク管理ツールのBacklogでコミュニケーションを取りながら進めました。

「オーディオストックはコロナ禍以前からリモートワークを取り入れており、現在は開発部門のエンジニアは全員がフルリモートワークです。今回のプロジェクトも私を含めたエンジニアは一度も出社することなくすべてリモートで対応ができ、非常にスムーズに進みました」(小西さん)

音源の再生履歴の分析で得られた「気付き」をサービスにフィードバック

クラスメソッドとのプロジェクトで作成した音源の再生履歴を可視化するダッシュボードでは、指定した期間内の再生数、アクティブユーザー数、再生のカテゴリー比率、再生数ランキングなどをグラフで確認することができます。現時点(2024年4月)でサービス部門への提供はしていないものの、社内の反響は高く、近々の公開を予定しています。

「サービス部門の担当者にダッシュボードのプロトタイプを見てもらったところ、『特定の楽曲が一定の期間で集中的に再生されていることが改めてわかった』、『今まで気が付かなかった再生の傾向が見えるのが画期的』といった意見や、『早く業務で活用してみたい』といった声が寄せられました。マーケティング部門からは検索キーワードのランキングをダッシュボードに追加して欲しいといった要望も届いており、新たなダッシュボードを作成した後に担当者への公開を開始する予定です」(小西さん)

ログデータの分析・可視化基盤の構築によって同社が得られたメリットは、サービス部門でのデータ活用やビジネスへの貢献だけではありません。開発部内でもデータ活用の意識に変化が生まれ、関心が高まりました。

「これまでも曲の再生数はDBに記録していたものの、データ量が多いためにパフォーマンス上の制約があるという、技術的な理由で分析を断念することがありました。今回のデータ分析基盤ではこれらの技術的な問題がクリアでき、使いたいデータはログで保存してさえおけば、ユーザーIDと紐付けた時系列でのデータ分析が手軽に実行できることがわかり、開発時の発想を転換することができました」(小西さん)

獲得したノウハウを活かした分析環境の横展開を検討

今後は、今回のプロジェクトで獲得した分析基盤の構築とダッシュボードによる可視化のノウハウを活かして、ログ分析の自走や、分析環境の横展開を進めていく予定です。

「Audiostockでは、ログデータ以外でもさまざまなデータ分析を行っています。しかし、それらの分析・可視化ツールはオープンソースを利用したアプリケーションが中心で、アプリケーションやサーバーの運用保守やセキュリティ対策等もすべて自前での対応が必要です。Amazon QuickSightやAthenaといったフルマネージド型のクラウドサービスなら面倒な運用保守がなくなり本質的な分析に集中ができますので、必要に応じて活用することを検討しています」(小西さん)

AWSについては、データ分析だけでなくAI系のサービスの活用も検討中で、引き続きクラスメソッドへの支援に期待を寄せています。

「今まで何度も支援を依頼してきましたが、あらゆる相談に確実に応えていただき満足していますので、これからもよろしくお願いします」(小西さん)

クラスメソッドは、各種の技術提供を通して、クリエイターの持続的な創作活動を支えるオーディオストックを支援してまいります。

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