構築時のドキュメントをきっかけに社内ナレッジ蓄積
社内情シスの“参考書”として継続活用

株式会社コミックス・ウェーブ・フィルム

システム管理部 都川 眞栄様
株式会社コミックス・ウェーブ・フィルム
公開日:2023年7月6日
BEFORE
  • システム管理のナレッジ蓄積がなく、どう構築すればいいのかわからない
  • 一人情シスでキッティング、運用、ユーザー対応まで担える幅広い技術理解が必須
  • 自社環境の類似事例が一般には公開されておらず学びの機会が得られない
AFTER
  • 初期設計プロセス、構築思想、設定、パラメータ等をドキュメント化してナレッジ蓄積
  • 環境構築や問題解決が求められる際にWikiを参考に内製で構築、検証などが可能に
  • 数多い社外パートナーに対して社内環境の情報共有が容易に

株式会社コミックス・ウェーブ・フィルム(以下、CWF)は、作家マネージメント、アニメーション映画の製作・制作・劇場配給・パッケージ販売、海外セールスまでを一気通貫で行っています。同社は2022年11月公開の映画『すずめの戸締まり』制作において、AWS上にレンダリング環境とデータベースを構築することを決定しました。CWFとして初めてのクラウド利用という状況下で、クラスメソッドはPoC段階で技術支援を行いました。支援時に作成したドキュメントが、運用開始後のチューニングの助けになりました。システム管理を一手に担うシステム管理部・都川さんに、クラスメソッドの提供した詳細なナレッジ、継続的な利用実態や社外コミュニケーションでの活用まで、詳しくお話を伺いました。

スケーラブルな環境を求めAWSの利用を決意

株式会社コミックス・ウェーブ・フィルム 同社は、大ヒット映画「君の名は。」「天気の子」を生み出したスタジオです。「天気の子」制作時、オンプレミスのストレージサーバが複数あることで、データ管理が煩雑化。また、想定を超えた同時接続数やデータ使用量により問題が生じました。そのことからスケーラブルに対応できるクラウド活用を検討し始めました。
レンダリング(絵を描き出す作業)時のディスパッチャーツールAWS Thinkbox Deadlineがリリースされ、クラウド環境でディスパッチャーツールが利用できるようになったことをきっかけにクラウド環境の導入を推進。プロジェクトのスタート時に必要となる容量、スペックが確定しづらい状況の中、クラウド上でストレージやインスタンス数を自由に可変できるスケーラブルなAWS環境は魅力でした。

「前作『天気の子』制作時には、CG部と撮影部それぞれの部署ごとに、ソフトウェアとディスパッチャーツールが異なりました。それぞれのソフトウェアごとにレンダリング環境を変える必要があり、オンプレミスレンダリングサーバを借りて対応していましたが、電源容量、排熱の対策、収納場所も考えながら用意をすることは大変でした。『すずめの戸締まり』は前回よりも大規模になることが想定できたので、AWS Thinkbox Deadlineをメインディスパッチャツールにしたいという思いでスタートしました」(都川さん)

PoC支援での経験を元に新環境構築は内製対応

クラスメソッドが初期設定や環境構築を支援した時点では「Amazon FSx for Windows file server」を利用していましたが、その後「Amazon FSx for NetApp ONTAP」がAWSからリリースされ、CWFはこれを本採用することに決定。この環境構築は、都川さんが自ら内製されました。この内製対応では、クラスメソッドの作成したドキュメントが助けになりました。

「納品時のドキュメントでは、設定の最終的な結果だけが書かれているものが大半です。しかしクラスメソッドさんにいただいたドキュメントは、構成のパラメータや命名規則などはもちろん、テストシナリオなども書いてくださり、環境構築手順を学ぶ非常に良い参考書になりました。CWFの環境に特化した形で学べ、問題への“解き方を教えてくれる”ドキュメントになっていました」(都川さん)

クラスメソッドのメンバーがAWS利用に際する膨大な知見を執筆・公開している技術ブログ「DevelopersIO」と合わせて、自社に合わせて作成されたドキュメントを参照することで自社環境の理解を深めた都川さん。新環境構築の際にはクラスメソッドの支援内容を応用することで、問題解決することができる状態になっていました。

クラスメソッド作成のドキュメントで社内ナレッジ蓄積が習慣に

情報システム部門としての人数が少ない会社ほど、ナレッジの蓄積による恩恵は大きいものです。クラスメソッドのドキュメントをきっかけに、都川さんはナレッジ蓄積の習慣がついたそうです。

「社内システム管理担当として、どのようなトラブルが起きても対応できなければ現場に迷惑をかけてしまいます。社内情シスとしてトラブルに対応するためにも、常に勉強を続ける必要があり、様々に公開される新しい技術を理解するためにも情報を整理する必要があります。実情は、システム管理の現場で目の前のトラブルシューティングや構築作業、エラー解消作業に追われ、ドキュメント管理まで手が回りませんでした。クラスメソッドさんにナレッジベースの基礎をフォーマット含めてつくっていただいたことで、自社のナレッジベースの構築を始めるきっかけになり、本当に感謝しています」(都川さん)

自社フォーマットが整っていることで、社外とのコミュニケーションについても話しやすいとメリットを語ってくださいました。

クラウド利用の最適解を探し試行錯誤を続ける

AWSでThinkbox Deadlineを使うようになり、“1人情シス”である都川さんにとって、業務負荷を減らすメリットが多くありました。

「以前エラーが発生した時は、ユーザーから送られてきたエラーログのスクリーンショットを確認したり、実際に席に呼ばれて対応したりと都度その現場に行って対応していました。今ではAWS Thikbox Deadlineの機能で、エラーログが一元管理されるようになりました。
また、クラスメソッドさんに設定していただいたAWS CloudWatchの機能を使って様々なエラーが発生した際に、システム管理者にリアルタイムで共有されるようになりました。エラーログが一元管理され、連絡が来ることで、そのエラーをナレッジベースに登録する癖も付きました。」(都川さん)

AWSに環境構築したことで、物理サーバーの故障に伴う調整、見積もり交渉、稟議決済、サーバールームの排熱や電源管理など、それぞれに発生する業務負荷が減ったことも、都川さんにとっては助けになりました。『すずめの戸締まり』制作期間中は世界的な半導体供給不足という事態のため、PC始めIT関係の物理的な購入が困難を極めた時期でもありました。そんな状況下でもAWSであればワンクリックで、希望のスペックで環境が拡張できます。このような状況下でのAWS利用のメリットは金額的なことに留まらず、調達に関わる全ての業務コスト軽減という視野で考えることも出来そうです。

「リモートワークという考え方が定着してきた昨今、様々な場所から仕事ができる環境構築が必要になると感じます。ただシステム管理者としては、データはリアルタイムで同期、一元管理したいです。そこでクラウド環境というのは、もの凄く力を発揮すると思います。今回のCWFでの取り組みをきっかけに、もっとクラウド環境を利用していく仲間が増えるといいなと思っています。今後もクラスメソッドさんにお手伝いいただきながら、最適解を探していきたいです」(都川さん)

クラスメソッドはこれからも、様々なテクノロジーの知見をもって、コミックス・ウェーブ・フィルムの企業活動を継続してサポートしてまいります。

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