WebサイトをオンプレミスからAWSへ移行
5分間700万のアクセス急増時もCloudFrontで安定稼働

サイボウズ株式会社

ビジネスマーケティング本部 第2プロダクトプロモーション部 浅野亜未奈 様
サイボウズ株式会社
公開日:2022年1月27日
BEFORE
  • コンテンツのデプロイやサーバー設定変更が情報システム部門に依存し、運用負荷が増大
  • サイトオーナーからの更新要望や即時公開への要望に柔軟に対応できない
  • オンプレミス環境での運用のため、サーバー保守等の負荷が発生
AFTER
  • Webチームによる運用体制への移行により、突発的な要望にも柔軟に対処
  • AWSのマネージドサービスの活用等で運用工数を大幅に削減
  • 会社やサービスがテレビ番組等で取り上げられた際の急激なアクセスピークにも対応

サイボウズは、業務改善プラットフォームの「kintone(キントーン)」をはじめ、グループウェアの「サイボウズ Office」などのクラウドサービス事業を展開しています。kintoneは2020年12月に初のテレビCMの放送を開始し、国内でもサービスの知名度は一気に向上しました。海外進出にも積極的で、kintoneはアメリカ、オーストラリア、東南アジアなどにも展開し、着実に売上高を伸ばしています。多様な働き方にチャレンジする同社は、ワークライフバランスやダイバーシティの観点から注目を集めることも多く、講演や企業研修を通してサイボウズ流のチームワークや働き方改革のメソッドを提供するコンサルティングサービス事業にも注力しています。

こうした同社のサービスや取り組みを発信するWebサイトは、タッチポイントの入口の役割を担い、その重要性は年々増しています。一方でWebサイトはこれまで自社のオンプレミス環境で運用してきたために、ビジネススピードに追いつかなくなる課題が発生していました。そこで、一部のサーバーの保守期限が切れることを機会に、アマゾン ウェブ サービス(AWS)への移行を決断し、クラスメソッドの支援を受けてプロジェクトを推進しました。クラウドへの移行により、急激なアクセスピークに耐える拡張性の強化、運用負荷の軽減、事業継続対策(BCP)の強化などが実現しています。Webサイトの移行プロジェクトについて、ビジネスマーケティング本部 第2プロダクトプロモーション部の浅野亜未奈さんにうかがいました。

柔軟性や俊敏性が高く、運用負荷がかからないWebサイトに移行

サイボウズのWebサイトでは、製品情報を筆頭に、ニュースリリース、CSR、セミナー・イベント、企業情報、ブログ、オウンドメディア(サイボウズ式)など、さまざまな情報を発信しています。これまでは、各部門のサイトオーナーごとにWeb制作会社に作成してもらったデータを、HP更新チームという専属のチームがオンプレミスのサーバー環境にアップし公開していました。しかし、即時公開やサーバー設定の変更(リダイレクトやbasic認証)を実施する際は、サーバー管理者である同社の情報システム部門やインフラ部隊のSREチームに頼らざるをえず、柔軟性や俊敏性に欠けていました。こうした課題がある中、管理系サーバーの一部が保守期限を迎えることから、新たなシステムへの乗り換えを検討したのがプロジェクトの始まりです。

「Webサイト用のサーバー群は、情報システム部やSREチームが管理する業務向けサーバーの一部を間借りしていました。運用はお任せすることができたものの、情報システム部やSREチームからは、本業の製品やサービスの開発・運用に専念したいという要望が寄せられていました。Web制作チームとしても、任せ切りでは急な更新要望や即時公開にも対応ができないため、サーバー環境も自分たちで運用する体制に改めることにしました」(浅野さん)

新しいインフラには社内で実績があり、マネージドサービスが豊富なAWSを採用し、自社構築することにしました。移行パートナーは、複数のAWSパートナーを比較・検討した中から、クラスメソッドを選定しました。

「複数のAWSのプレミアコンサルティングパートナーに声をかけて提案を受けた中で、私たちの必須要件であるGitHubを用いたサイト構築と運用、リダイレクト設定、認証設定等、すべてに対応していたのはクラスメソッドとパートナーのJIG-SAWだけでした。」(浅野さん)

サイトの性質に合わせて複数のアーキテクチャを採用

Webサイトの移行プロジェクトは、2018年7月からスタート。最初は規模が小さく、周囲に与える影響が少ないコンテンツをピックアップして5ドメインずつ移行し、合計で約20ドメインを移行しました。その後、規模が大きく重要度の高いドメインを移行し、2021年12月末時点では合計42ドメイン、国内の静的Webサイトのほぼすべてと一部の海外サイトをAWS上で運用しています。

移行作業は、まずAWS上に本番環境と検証環境を構築した後、オンプレミスの既存環境から設定ファイルやデータを移行し、DNSを切り替える形で実施しています。移行の際は、Webサイトの更新作業を止めたものの、大きなトラブルもなくスムーズに進みました。

「サイトオーナーとの日程調整は苦労しましたが、平均で1週間の更新停止期間を設けることで、余裕を持って切り替えることができました。プロジェクト期間中は、新たな要件への対応を迫られたり、新たな移行ドメインが見つかったりしたものの、サーバーの保守期限終了までに対象ドメインをすべて移行することができました」(浅野さん)

新しいWebサイトは、サイトの性質やサイトオーナーの要望に応じて、複数のアーキテクチャで構築しています。メインはCDNサービスのAmazon CloudFrontを入口に、Amazon S3をサーバーとするタイプと、Amazon CloudFrontとApacheをインストールしたAmazon EC2をサーバーとするタイプの2つの構成です。2つの構成は、本番環境と検証環境の2面を用意し、検証環境で問題がなければ、本番環境へとデプロイする運用としています。これらの環境はAWSのマルチAZで構成し、耐障害性と可用性を確保しました。

Webサイトの開発と運用は、AWS CodeシリーズのAWS CodePipeline、AWS CodeBuild、AWS CodeDeployを活用し、GitHubを用いてコンテンツの更新を自動化しています。これにより更新状況が可視化され、開発と運用の効率化が実現しました。

メインのアーキテクチャ以外にも、Webサイトからマーケティングオートメーション(MA)ツールへの連携機能をAWS Lambdaで実装する工夫もしています。具体的には、Webフォームツールと連携し、フォームから問い合わせが来るタイミングでAWS Lambdaが自動的に起動。そこからMAツールにデータを転送する流れです。サーバーレスの活用により、サーバーコストを大幅に軽減することができました。

サイボウズ株式会社

AWSのサービスを活用し、開発専用サイトとDR環境を構築

Webサイト42ドメインの移行を終えた後も、同社は改善に向けた追加開発を続けてきました。2021年にはさまざまなツールセットを組み合わせることで、Webアプリの高速リリースを実現するAWS Amplifyを採用し、開発専用のサイトを構築しました。

「1つのドメインで複数機能の更新作業が発生すると、検証環境から本番環境にデプロイする際に、コンフリクトが発生します。その結果、整合性を持った形で更新されなかったり、更新漏れが発生したりするリスクがありました。クラスメソッドに対応を相談し更新確認用のサイトをAmplifyで実装していただきました。」(浅野さん)

その結果、1つのドメインで複数機能の更新作業が走っても、Webサイト本体に影響を与えることなくなり、開発ブランチごとに同時に変更を進めていくことが可能になりました。さらに最終的なマージ前に表示確認ができるようになり、整合性も確保されています。開発ブランチの進捗管理には、同社のkintoneを活用して開発者間で情報を共有し、レビューもkintone上で実施することで作業効率を高めています。

サイボウズ株式会社

開発専用のサイトの構築後、現在新たに対応を進めているのは災害時に早期復旧を行うためのDR(Disaster Recovery)環境の構築です。これまでは同一サイト内でバックアップは取得していたものの、東京エリアで災害が発生した際のBCP( Business Continuity Plan:事業継続計画)が課題となっていました。そこで、AWSのシンガポールリージョンにDR環境を構築し、東京リージョンでの運用が困難になった場合でも、Webサイトの閲覧ができるようにしました。DR環境ではAmazon CloudFrontを採用し、エラーを感知した時点でシンガポールリージョンに自動的に切り替える環境を構築中で、2021年度中には開発を終える予定です。

Webサイトの移行からDR環境の構築までを支援したクラスメソッドに対しては、課題に合わせた提案内容と親身になったサポートを評価。浅野さんは「私たちにサーバーやAWSに関する知識がない中、さまざまな質問に対して嫌な顔ひとつせず答えていただきました。おかげさまで少しずつ理解できるようになり、クラスメソッドには感謝しています」と語ります。

テレビ番組で紹介された際のアクセスピークにも余裕で対応

AWSに移行したWebサイトは現在まで安定稼働を続けており、パフォーマンスの低下や障害によるサーバーダウン等は一度も発生していません。テレビ番組で同社が取り上げられた際のアクセスピークにも余裕で耐えることができました。

「2020年5月にNHK『ニュースウォッチ9』で当社が紹介された際は、5分間で700万のスパイクアクセスがあり、同年7月に民放の経済番組で紹介され、青野がゲスト出演した際も、アクセス数は1時間で200万に達しましたが、事前に特別な準備をすることなく対応できました。テレビへの露出やkintoneのテレビCM等の影響もあり、Webサイト全体のアクセス数も右肩上がりで伸びているものの、コストを最小限に抑えながら安定性の高い運用が実現しています」(浅野さん)

これまで情報システム部やSREチームに依存していたサーバー設定変更など、クラスメソッド(とJIG-SAW)に移管され、突発的な更新やサイト改善にも柔軟に対処できるようになりました。AWSのマネージドサービスの効果もあり、運用コストも大幅に軽減されています。「Web制作チームのうち、インフラ運用に関わっているのは実質的に私1人だけですが、大きな負担はかかっておらず、人的なコストは劇的に下がっています」と浅野さんは語ります。

サイボウズ株式会社

機動力と自由度を活かして動的Webサイトの構築なども検討

Webチームでの運用に切り替わったことで、機動力と自由度も大幅に高まりました。サイトオーナーは、AWS上にWebサイト以外のプログラムを導入したりすることで、新たなことに取り組むことも可能になっています。

「今後はこの環境を活かして、さらなるチャレンジを続けていく予定です。ユーザーの属性や動向に合わせて表示内容を変化させる動的Webサイトの構築、レコメンド機能の実装ができたら面白いなと考えています。AWSのレコメンドエンジンの活用も考えてみたいと思いますので、クラスメソッドさんにはさまざまな技術提案を期待しています」(浅野さん)

クラスメソッドは、サイボウズのビジネスを支えるWebサイトを進化させるべく、引き続きサポートしていきます。

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