「阪急阪神東宝グループ」の一員として、阪急百貨店や阪神百貨店をはじめ、食品スーパー、商業施設などを展開するエイチ・ツー・オー リテイリング。スピーディーなシステム開発を目指して内製シフトを加速する同社は、AWS上にWebアプリを構築するノウハウの習得を目指し、クラスメソッドのモダンアプリケーション開発支援を採用して2カ月間のワークショップを実施しました。これによりAWSに対する理解を深め、内製案件の拡大が実現しています。支援要請の経緯と、ワークショップで得られた成果について三樹(ミツギ)さん、村上さん、池田さんにお話をうかがいました。
開発期間の短縮を目指してWebアプリの内製化からスタート
2021年に策定した「長期事業構想2030」において、目指すビジネスモデルを「コミュニケーションリテイラー」と定めるエイチ・ツー・オー リテイリング。デジタル技術とリアル店舗を融合した顧客とのダイレクトコミュニケーションを通して継続的な関係を築き、それをベースに様々な商品やサービスを提供することを目指しています。
それから3年が経過し、第2フェーズとして2024年5月に発表した中期経営計画2024-2026では、既存事業の深化に加えて、成長ポテンシャルの高い海外顧客ビジネスの強化、顧客サービス事業と顧客データ活用事業などによる新たな収益源の開発などに加え、それらを支えるIT/DX投資や人材育成に引き続き注力する方針を打ち出しています。
グループのIT/DXを牽引するIT・デジタル推進室では、DX戦略を加速するためにシステム開発の内製化に取り組んでいます。その狙いは開発期間の短縮です。
内製化の取り組みとして、2023年度はローコード・ノーコードツールを用いて、社内向け業務アプリの開発を手がけてきました。そこで一定の成果が得られたことから、2024年度はAWS上に構築するコンシューマー向けWebアプリ開発をテーマに設定しました。
「内製化をすすめることで開発が迅速化するだけでなく、ノウハウを社内に蓄積し次に生かせるメリットも明らかになってきました。次のステップとしてAWS上での開発を加速するため、まずはWebアプリの開発から取り組むことにしました」(三樹さん)
実践的な手法が学べるハンズオン形式のワークショップを評価
同社で内製開発を担うデジタルソリューション・開発部は、約10名の社員で構成されています。しかし、その中にはIT未経験者がいたり、システム開発の経験はあってもクラウド上の開発は未経験だったりとレベルは様々です。外部のパートナーについてもAWSの開発経験は乏しく、多くの知見を持ち合わせているわけではありません。そこで部署全体の技術の底上げを目指して、Webアプリの内製に向けた支援をクラスメソッドに要請し、「モダンアプリケーション開発支援」サービスを採用しました。
「クラスメソッドとはもともとAWSの利用を開始した2020年から請求代行サービスで取引があり、その流れから2024年3月頃に内製開発について相談したところ、今回実施した、AWS上でWebアプリを開発するためのワークショップを提案いただきました。ワークショップを座学だけでなく、初心者でも実践的な開発手法が学べるハンズオン形式で行うという提案をいただけたことが決め手になりました」(三樹さん)
Webアプリ開発を基礎から学んだことで無理なく知識が定着
ワークショップは、2024年6月から7月の2カ月間で実施。参加者は、デジタルソリューション・開発部を中心とした内製開発のメンバーが10数名で、そのうち村上さんや池田さんが所属するチームの5名が中心となってWebアプリを構築しました。ワークショップは1週間に1回の頻度で開催し、オンライン形式で1回に2時間程度実施しました。
Webアプリを基礎から学んだことで、開発初心者も無理なく理解を深めることができました。特に、IT開発未経験で、百貨店のランドセル売り場から希望して内製開発チームに異動してきた池田さんにとっては初めての経験でした。
ワークショップを主導したクラスメソッドに対しては、寄り添った対応を評価しています。
「ワークショップで理解できなかったことも、次の回で質問するとすぐに回答いただきました。ハンズオンで質問できなかったことも、後からグループチャットで回答をいただき、至れり尽くせりの対応に助けられました」(池田さん)
「メンバーのスキルやバックグラウンドに寄り添い、それぞれが理解できるようにカリキュラムを組んだり、ほどよい粒度の手順書を用意したりと、柔軟に対応いただきました。担当者の技術力・スキルも高く、あらゆる質問に対して的確な回答が返ってきました」(村上さん)
静的サイトをわずか1日でリリースして安定稼働を実現
ワークショップの成果は早々に発揮され、百貨店のイベント案内用の静的サイトの構築を内製開発チームが担当したところ、わずか1日でのリリースと安定稼働を実現しました。
「従来なら2カ月はかかるところが1日に短縮できたのは大きな成果で、結果として開発コストの低減につながりました」(村上さん)
内製開発の成果は、社員限定の技術ブログにも公開し、そのノウハウは社内で広く共有されています。
「他のチームが同様のWebアプリをAWS上に構築する際に役立つよう、注意点や必要なことをまとめて公開しました。開発メンバーからは、今後の開発に活かせる貴重な情報として好評を得ています」(池田さん)
2カ月のワークショップによってWebアプリ開発のノウハウを獲得したことで、対応案件の領域も拡大しました。開発チームのメンバーも内製開発の新たな武器を獲得し、より多くの案件に関わることができるようになりました。
「マネジメントとしての成果は、AWS上へのシステム構築が適切と判断した新規案件に対して、自信を持って『できます』『任せてください』と言えるようになったことです。今までなら断念せざるを得なかった案件に対して対応の可能性が広がり、部門側からこういったアプリが欲しいと相談を受けた際も、『AWSで作りませんか?』と提案できるようになりました」(三樹さん)
「AWSに対する抵抗感がなくなり、新たな武器を獲得できたことが私にとって一番の成果です。それによって、社内からの要望に対応できるようになり、技術者としての自信につながりました」(村上さん)
「AWSのサービスを理解できたことが一番の成果で、別のWebアプリに応用することも抵抗感がなくなりました。例えば、AWS Lambdaを使ってサーバーレスアプリを作ってみよう、生成AIの案件でAmazon BedrockでClaudeのAIモデルを使ってみようといったことが考えられるようになりました」(池田さん)
新たなモダンアプリの構築を通して技術の引き出しを増やす
今後は、新たなモダンアプリの構築を通して技術の引き出しを増やしていく方針とのことです。さらに今回のワークショップの続編として、クラスメソッドの支援を受けながらアプリ開発からサービス運用までの流れをカバーするテンプレートを作成し、多くの案件に適用できるようにする検討も進んでいます。
「今後も新しい案件を通して、様々な壁に突き当たることがあると想定されます。そうした際にクラスメソッドにはさらなる支援をいただくことになると思いますので、引き続きよろしくお願いします」(三樹さん)
外部ベンダーへの委託中心の開発から内製化へと舵をきり、社内文化の変革が進んでいるエイチ・ツー・オー リテイリング。クラスメソッドは、内製化支援を通して同社の組織内DXを支援してまいります。