AWS管理代行サービスを活用する博報堂アイ・スタジオ
総合的なデジタルマーケティング・デジタル広告制作を主な事業としている博報堂アイ・スタジオは2000年設立。スマホカメラを活用した素肌測定アプリを提供しトイレタリー企業の新しい価値創造の支援を行ったり、人気カプセルトイを公営競技とコラボレートや、地方自治体と人気テレビゲームを組み合わせたプロジェクトなどの企業の知名度を上げるための施策を展開したりと、デジタルを軸にしつつも高いクリエイティビティを武器にクライアント企業のビジネス課題の解決を支援しています。
近頃のデジタルコンテンツではバックエンドにクラウドサービスを使うのも当たり前。案件ごとにWeb、データベース、動画配信などのサービスが求められるため、同社ではクライアントごとよりも細かい、プロジェクトごとにAWSのアカウントを作成し、運用管理していました。
クラスメソッドはAWS管理などを行う総合支援サービス「クラスメソッドメンバーズ」を提供しています。博報堂アイ・スタジオには
・AWS利用料金の一律割引
・円建てで請求書発行
・専用ポータルサイト
・カスタマーサポート無料付帯
・損害保険無料付帯
・AWS CloudTrail/Config有効化
を提供する「請求代行プラン」にご契約いただき、アカウントに関する業務を弊社に一括委託。本来集中すべきクリエイティブとそれを支えるエンジニアリングに業務フォーカスを当てることに寄与しています。
クリエイティブ分野でのクラウド利用と弊社サービスの活用について、同社のクラウドソリューション部 部長の川添昌彦さん、インフラストラクチャーエンジニアの髙橋幸恵さんにお話を伺いました。
パブリッククラウドの活用から入る
博報堂内のコンテンツ制作部門が母体となっている同社。過去にはフィーチャーフォン向けのWebコンテンツも制作しており、2012年ごろまではデータセンターにサーバーをラッキングするようなオンプレミスのシステム構成が主流でした。「プライベートクラウドから構築していこうと思ったのがその頃でした」と川添さんは語ります。
と当時から現在を振り返ります。サービスとしてのパブリックとプライベートの使い分けを、髙橋さんが解説してくれました。
「システムの柔軟性、可用性、スケーラビリティを考えるとクラウドは本当に便利です。当社のビジネスとしては、収益性が高いのはプライベートクラウドを活用したもの。反対にパブリッククラウドは、柔軟で自由なサービス提供ができるものになっています。動画ストリーミングや動画生成エンジンを載せたりするのはパブリックの方が使いやすいんです。逆に、GDPR(EU一般データ保護規則)の適用が2018年5月から始まったことで、プライベートクラウドを進めやすくなっていますね」
クラスメソッドのサービスを活用
2017年10月にクラスメソッドメンバーズの契約を結んだ同社。当社との契約について、川添さんは次のように振り返ります。
「パブリッククラウドに知見のある専門パートナーとタッグを組むべきと思ったのです。自社のリソースには何かと限りが出てきますので、専門家とアライアンスを組むことが大切だと思ったんです。さまざまなパートナー候補がありましたが、セミナー・カンファレンスに部員に参加してもらおうと情報を集めていたら、登壇者や技術ブログでクラスメソッドの名前をよく見ることに気づいたんですね」
当時の印象を語った上で、契約から1年経った今についても
「情報のキャッチアップがとにかく早いですね。技術に特化したエンジニアが在籍していて継続してコンサルティングサービスができるのが素晴らしいです。また、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)の利用も安くAWSの申し込みもしやすくなりました。金銭的コストも人的コストも安くなって助かっています」
と契約メリットを説明していただけました。
クラスメソッドとは2017年に契約、翌2018年には早速環境の移行を始めました。
「まずはアカウントの移管と支払い代行から着手しました。ドル建てでの支払いで使っていた時には、運用で1円しかかかっていなくても送金サービスの利用料で高くつく、というケースもあったんです」
AWSの活用にブーストがかかる
クラスメソッドと契約すると同時に、AWSでの事業を強く推進するようになります。なぜAWSを推し進めるようになったのでしょうか?これについて、髙橋さんはコスト面の優位性がクライアントに響きやすい現状を解説してくださいました。
「動画生成を考えてみますと、サーバーレスでやろうとなればAWSを選びたくなりますし、キャンペーンサイトで1ページだけのWebサイトでよいとなると、コスト面からAWSが選ばれやすくなる傾向があります。お金にシビアなクライアントにはAWSが選ばれやすいんですよね」
「テレビのプロモーションなどですと、準備に3ヶ月、プロモーションが始まってから3ヶ月くらいで終了する、というコンテンツが多いんです。短いものだと1日しか表に出ないプロモーションもあるくらいですよ。必ず、案件ごとにアカウントを作成するんです」(川添さん)
聞けば、案件自体の数は数千にもおよぶそう。AWSアカウントは今後も増えていくことでしょう。
インフラ部門があるクリエイティブの強み
お話を伺っていると、技術力を積み重ねたエンジニアがクリエイティブな企業で働いていることに、よい意味で意外な印象を受けました。
「社内にエンジニアがいるからこそ、デザイナーやフロントエンジニアが考えていることがすぐに理解できるんですよね。コミュニケーションコストがとても低いです。3ヶ月のプロモーションを3ヶ月の準備で行うという流れを考えますと、外部企業に依頼して待ち時間が1週間発生するようなロスはとてももったいなく感じます。アジャイル開発におけるスクラムのような形で制作していきますからメリットが大きいんです」(川添さん)
「最高の作品にするためにギリギリまで調整をしていて、早急なレスポンスを求められるケースもあります。社内にあるということのメリットだと思っています」(髙橋さん)
コストや効率・生産性を重んじるインフラというジャンル・業務は、クリエイティブな広告業界と親和性が出にくく思っていましたが、決してそのようなことはないのですね。
「博報堂やそのグループは常にユーザー目線・生活者目線でものを見ているんです。企業が出してきたA案とB案があれば、もう一つユーザーからのC案があるのではないか?という考え方をしています。そういう意味ではオンプレミスにしてもどのクラウド事業者を使うかという選択にしても『生活者に届ける』という視点から考えなければならないんですね。スピーディーに低コストで運用できるAWSはインフラをクリエイティブに検討した結果でもあります」
川添さんの最後の一言が、クリエイティブとエンジニアリングを綺麗に結びつけてくれたような気がしました。