数百万台の日立の家電を常時クラウドへ接続する
大規模IoTの基盤をAWSのマネージドサービスで実現

日立グローバルライフソリューションズ株式会社

ITシステム本部
主管技師長 立川 敦 様

公開日:2022年10月28日

  • 日々増加するIoT家電台数に、現在の運用基盤では近い将来耐えられなくなる懸念
  • 家電の使用時間帯に起きる急激な接続数の変化にリアルタイムで対応できない
  • 冗長化、負荷分散などによる仮想サーバーコストの上昇に将来的な不安も

  • AWSのマネージドサービスを活用し数百万台の家電を常時接続、リアルタイム応答を可能に
  • システムの状態を見える化し、運用の効率化とAWS利用料を最適化
  • アジャイル開発を取り入れ、エンジニアの積極性を引き出すプロジェクト進行に

日立グローバルライフソリューションズ株式会社(以下、日立GLS)は、日立グループの主力事業のひとつである家電部門を有する企業です。IoTプロダクト事業は家電事業の中でも成長領域と位置付けられています。
洗濯機、冷蔵庫、オーブンレンジ、掃除機など、家電のIoT化を進める同社は「スマホと日立の家電をつなげて暮らしをもっとベンリに」というコンセプトのもと「日立のコネクテッド家電」としてクラウド、スマートフォン、家電を相互に接続し、お客様の生活を支えるサービスを提供しています。

今回、日立のコネクテッド家電のプロジェクト責任者であるITシステム本部主管技師長の立川様に、クラスメソッドのAWS開発、サポート体制、また今後の展望について、詳しくお話をうかがいました。

今後爆発的に増えていく「コネクテッド家電」を、安定的な運用基盤で

2018年から提供が始まった日立のコネクテッド家電は、年々ユーザー数を増やし、多様化する消費者ニーズに対応してきました。しかしながら今後販売が想定される家電の台数とアプリケーション利用者の増加が見込まれることで、近い将来、現行システムではその性能の不足が懸念されました。

そのため運用中のシステムの増設と並行し、2020年秋ごろから新しいアーキテクチャの検討を始めました。

新しいアーキテクチャを導入するにあたって、家電ユーザーに負担をかけずに移行するのはもちろん、数百万台の家電がクラウドに同時接続しても既存システムの機能とセキュリティ要件を満たす必要があります。またソフトウェアのアップデートで機能や使い勝手を向上させるだけでなく、顧客ごとの細かいニーズに対応するための仕組みを低コストで提供し続けることなど大きな課題はあります。

そこで、まずは日立GLSの社内でシミュレーションを行ったところ、クラウドのマネージドサービスを利用すれば、機器の増加と急激な接続数の変化に対し効率よく対応できるのではないかという仮説が立ちました。特にサーバコストの試算では現行システムを継続するよりも大きく削減される見込みです。

「マネージドサービスの調査をする前には、IaaSタイプは初期コストが高く、接続される数が増えてくれば安くなり、マネージドサービスは数が多くなればなるほど高額になるのでは、と考えていました。

ところが我々の事業プランで試算してみると、結果は逆になりそうなことがわかりました。接続機器が500万台になる頃には、IaaSよりもマネージドサービスの方が、半額程度で収まるというシミュレーション結果になります。こういったコストシミュレーションの結果もあり、今回はマネージドサービスでの開発を進めようということに決まりました」(立川さん)

本プロジェクトの検討を進める中で、立川さんは社内でAWSを利用したプロジェクト経験がある方に相談したところ、クラスメソッドを紹介されたそうです。
クラスメソッドと打ち合わせを重ねるうちに「フロントに立っているメンバーの力量だけでなく、バックヤードにいるメンバーがサポートしている雰囲気を感じた」という立川さん。難しい要望に対しても、クラスメソッドが一丸となって解決策やアイデアを探して持ちよってくれそうだと期待いただき、技術支援を依頼いただきました。

PoCで家電200万台超の同時接続を検証

2021年2月からエンジニアを交えた本格的なアーキテクチャの設計とAWS環境を利用した検証が始まります。既存システムで実際に動いているデータをもとに、最大600万台の家電を登録しても接続に遅延やエラーが発生しないこと、机上での試算ではわからないコストの算出を行うこと、システムに最適なデータベースの選定を行うこと、などPoC(Proof of Concept:概念実証)の具体的な目的とゴールを定めました。
2021年5月からは実データを利用してAWSサービスの性能評価を行います。家電は電源が入っている時にしか接続されません。ユーザーが家電を利用する時間帯は偏りやすく、特定の時間帯に通信が集中する特徴があります。
そこで数百万台がクラウドへ同時接続した上でクラウドと家電の通信を行う、という想定のもと検証を行いました。ただし、検証を進めるにあたって、実際に数百万台の家電を用意することはできません。そこで、EC2を家電に見立てて、作業を行うことにしました。

作業にはクラスメソッドの中でもPoCの経験が豊富なエンジニアをアサインしました。検証の過程では、AWSに対し上限緩和の申請や各サービスのチューニング、最適なデータベースの選定、エラー処理など、当初は想定していなかった課題も出てきました。そういった時には、両社間で様々なアイデアや意見を持ち寄り、都度迅速に解決していくことで、スケジュール通りに検証作業を進行することができました。

開発の段階からクラウドネイティブな環境を構築

AWSのマネージドサービスはAWS IoT Core、AWS Lambda、Amazon Kinesis、Amazon DynamoDBを中心に構成しています。これらのマネージドサービスへスムーズに移行するため、既存システムを2か月間かけて細部にわたって把握、分析することから開発プロジェクトはスタートしました。
単純に現行システムから新システムに載せ替えるだけではありません。機能ごとに負荷分散やスケーラビリティを持たせ、機能追加や機能変更も容易にする必要があり、万が一、特定の機能に障害が発生しても、その影響を局所的に抑えることができる実装を行います。また開発と運用の工数を削減するという観点で、クラウドネイティブな開発言語の選定、CI/CDといったモダンな開発環境と運用環境の整備も行いました。

「オートデプロイなどヒューマンエラーの入る余地を排除するための、様々なツールや手法のご紹介をいただきました。日頃からコスト削減、高効率な運用に関する議論を行い、開発と並行しながら、システムの見える化、運用を効率するための仕組みづくりが進んだことは、大きな成果の一つだったと感じています。」(立川さん)

スピード感をもったデイリーミーティングが「アジャイルな開発」を推進する

本プロジェクトは、スクラムというチームで仕事を進めるための枠組みを構築して進めました。立川さんはデイリーミーティングに必ず出席します。そこではエンジニアと共に課題を共有し、データを精査し、その日に出た課題はその日のうちに解決する、というアジャイルな開発を意識し、プロジェクトを遂行していきました。

「私は元々、ソフトウエアエンジニアだったこともあり、以前からアジャイル開発、スクラムは気になっていました。ただ社内での事例もなく、なかなか実践する機会はありませんでした。当初は進め方の違いに戸惑うこともありましたが、今回のプロジェクトでクラスメソッドさんというスクラムでの進め方を日々実践している人たちから学ぶチャンスをもらったと思っています。
デイリーミーティングに出席し、エンジニアメンバーとスクラムマスターがどういう会話をしているのかを見て学びます。そうするうちにそれほど時間を掛けずにディスカッションにも参加することができるようになっていきます」(立川さん)

開発スタート当初は、ウォーターフォールと違い進捗が把握しづらく、プロジェクトオーナーとして上層部への報告がしづらいなと感じられたそうです。一方でウォーターフォールと異なるのは、短期間の目標が掲げられるため、エンジニアは毎週その目標に向かって日々全力で課題を解決していきます。早めに予定作業を終えられた時には、次のスプリントの予定に着手していくことも多くありました。

「最初は毎週のスプリントが終わらなかったらリリースはどうなるのだろう、ズルズルいってしまうのではないか、といった心配もありましたが、エンジニアのポジティブな動きを見ているとその不安は杞憂だったことにすぐに気づかされました。
デイリーミーティングでも、その日に出た問題はその日に解決しよう、とエンジニアが即答しているケースがほとんどです。これが週1度のミーティングだったら、プロジェクトの進捗は遅れていたかもしれません。皆が迷ったことは皆のアイデアで即解決する、というスタンスで課題に取り組んでいくことができています」(立川さん)

これまでは日立GLSのシステムは、グループのエンジニアリング会社(以下、日立A社)が担っていました。クラスメソッドの参画にあたり、プロジェクトの進め方も大きく異なる2社が上手く役割分担をしていけるか心配したこともあったそうです。

「クラスメソッドさんは、担当範囲外の課題にも協力を惜しまず、情報やアイデアを出してくれました。全ての作業はリモートワークで進めており、エンジニアも日本全国で作業をしていますが、日立GLS、日立A社、クラスメソッド間で密なコミュニケーションと役割分担ができ、今では3社のメンバーがワンチームとなってプロジェクトに参加できていると思います」(立川さん)

運用基盤の構築完了〜未来の日立コネクテッド家電に向けて

さまざまな問題や課題を克服しながら、運用基盤は問題なく構築することができました。現状、既存システムから新しい基盤へのシステム移行中ではあるものの、将来の運用コストは既存のシステムに比べ3分の1程度になる見込みです。さらに技術の進化とともにAWS利用料も安価になっていくことも予想されます。

「今のコストでも既存システムと比較して十分コストは下がっていますが、現状に満足することなく家電1台に対するコストをもっと下げていきたい、という要望もクラスメソッドさんには依頼しています。AWSでは細かいコストが可視化されているため、コストが高いと感じれば、別の安価で新しいサービスを利用するなど、日々最適な構成にしていけるのもいいところだと思います」(立川さん)

全てのシステムが移行された後は、ユーザーデータが蓄積されていきます。リアルタイムに利用者の生活や機器の状態を把握できるコネクテッド家電から収集できるデータの可能性は大きく、そのデータをモノづくりに活かし、高品質な商品を開発するのはもちろん、家庭生活や社会の課題を解決する糸口にもなると考えられます。
今後は日立グループだけでなく社外のパートナーのプロダクトやサービスとも接続し、コネクテッド家電を接点としたライフソリューションの提供も行っていく予定です。

クラウドを活用し、ソフトウェアのアップデートによって日々進化する日立のコネクテッド家電は多様な利用者のニーズに対応するだけでなく、ライフステージや生活環境の変化にも寄り添い、暮らしの充実を目指します。こうした日立GLSの取り組みをサポートする企業として、これからもクラスメソッドはお客様とともに新しい価値の創造を目指していきます。

この事例はAWSコンサルティングをご利用いただいています

クラスメソッドのAWSコンサルティングは、公式資格を持つエンジニアがお客様の要件にマッチしたAWSのクラウドインフラ設計、サービス選定をご提案。AWSの広い知見を活かし、コスト削減からハイパフォーマンスな構成までじっくりとアドバイスします。

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