ケーブルテレビ向けデジタル放送配信事業を軸に、多彩なソリューションの提供に取り組む日本デジタル配信株式会社(以下、JDS)。同社はケーブルテレビ事業者各社のユーザーIDを業界共通IDとして管理する「ケーブルIDプラットフォーム」の運用基盤を、オンプレミス環境からAWSに移行するにあたってクラスメソッドのAWSコンサルティングを活用してインフラ設計を行いました。
業界の共通ID連携基盤をクラウドに
同社が提供するケーブルIDプラットフォームを連携することで、ケーブルテレビ各社は外部サービス事業者との早期連携が可能となり、利用者に多様なサービスを提供できるようになります。例えばケーブルテレビの視聴者がケーブルIDプラットフォームを通じて認証・認可を受けることにより、複数のOTTサービス(インターネットを介したメディアサービス)をケーブルテレビのユーザーIDひとつで楽しむことができます。
「ケーブルテレビ事業者にとっても、サービス事業者用の連携システムを個々に開発・運用するより、業界共通のケーブルIDプラットフォームを利用するほうが導入が簡単で、コストや運用負担を抑えることもできます。JDSは、日本ケーブルテレビ連盟(JCTA)と連携してケーブルIDプラットフォームを開発し、2017年7月のサービス開始以来システム運用を担っています」(川松さん)
当初はオンプレミス環境で運用してきたこのプラットフォームですが、運用開始から5年が経過してハードウェアの老朽化が進んでいました。そこで、契約更新を機にクラウド活用を検討し、AWSへの移行を決めました。
「オンプレミス環境ではサーバーリソースを追加するのにもベンダーに申請する必要があり、機動的にシステムを増強することができません。セルフサービスでの運用を目的にクラウドの活用を決定し、圧倒的に情報量が多く、自社での情報キャッチアップや開発・運用しやすいAWSを採用しました」(須藤さん)
とはいえ、同社では一部の小規模システムでAWSを活用していた実績がある程度で、自社内にAWSに関する実践的なノウハウはありません。そこで設計支援のパートナーとして、複数のクラウド専業ベンダーの中からクラスメソッドを選定しました。
マネージドサービスを中心にAWSのベストプラクティスで設計
クラスメソッドが今回のインフラ設計に参画したのは2023年2月からの3カ月間です。JDSが事前に検討、作成した原案をもとに、具体的な設計に落とし込んでいきました。プロジェクトは週1回の定例ミーティングと、プロジェクト管理ツール(Backlog)上での不定期ミーティングで実施。すべてがオンラインのコミュニケーションでしたが、スムーズに進みました。
ケーブルIDプラットフォームの刷新に伴い、それに関連する「ケーブルID基盤」と「個社ID基盤」の2つをAWS上へ移行する前提で検討を進めました。設計内容としては、ケーブルIDの管理基盤としてコンテナを活用し、マネージドサービスのAmazon ECS(AWS Fargate)で構成しました。データベースもマネージドサービスのAmazon Auroraで構成して運用負荷を軽減しています。個社IDの基盤は、アプリケーションの改修は実施せずにAmazon EC2による通常のクラウド移行とし、DBにはAuroraを採用しました。
BacklogのGitによるCI/CD環境を構築
さらに今回、BacklogのGitによるCI/CD環境を構築し、Backlogから自動的にデプロイができるようにしています。
「今回の設計テーマは、ケーブルIDの管理基盤でのコンテナ活用と、CI/CDによるデプロイの自動化でした。この2つの領域に関しては自社内にノウハウが乏しいため、経験豊富なクラスメソッドにお願いしました。また、ケーブルIDプラットフォームが止まってしまうと、利用者は各種サービスが利用できなくなってしまいます。そこで、24時間365日止めることなくデプロイできるように、ブルー/グリーンデプロイメントの手法を採り入れました」(須藤さん)
「以前から開発メンバーが中心となってAWSの社内勉強会を開催してきましたが、実際のプロジェクトに深く関わったことでメンバーたちの理解度は格段に深まりました」(川松さん)
2023年7月からは、今回の設計をベースに具体的なシステム構築に着手する予定で、クラスメソッドも有力なパートナーの1社として検討する意向を示しています。
「具体的な構想はこれからですが、構築フェーズに入ると新たな課題が出てくることも考えられますので、ご縁があれば何らかの形で支援をお願いしたいと思います」(須藤さん)
DevOpsによる開発・運用の改善、開発の高速化へ
サービス開発運用部としては、今後、AWSを活用した内製開発を加速させる予定で、DevOpsによる開発・運用の改善、開発の高速化に取り組んでいく考えです。
また、JDS全体としてもオンプレミス環境で運用している各種システムを、インフラ更新や保守サポート更新などの機会にAWS移行することも想定され、今回のノウハウを横展開していくことも検討しています。
「デジタル化の先にある新たなメディアライフ」の創造を目指し、新たなことにチャレンジを続けるJDS。その期待に応えるべく、クラスメソッドは、クラウドアーキテクチャの設計から構築まで、最適な支援ができるように引き続き技術力を高めてまいります。