熱狂的なファンマーケティングを支える顧客データ基盤を構築
5分に1回のニアリアルタイム連携でLTVの向上へ

株式会社千葉ロッテマリーンズ

マーケティング戦略本部
戦略企画部 部長 兼 企画グループ グループ長 小林博一 様
戦略企画部 企画グループ 福井英之 様
株式会社千葉ロッテマリーンズ
公開日:2025年3月27日
BEFORE
  • 日次バッチによる顧客データとDWHの連携
  • TableauやExcelによる限定的・属人的なデータ分析環境
  • 統一データフォーマットの不在によるデータ利活用の限界
AFTER
  • 顧客データとDWHとのニアリアルタイムのデータ連携
  • Tableauダッシュボードよるデータ分析の高度化と可視化
  • データフォーマットの標準化によるデータドリブン経営基盤の強化

熱狂的なファンによるスタジアムでの「ジャンプ応援」などで知られる千葉ロッテマリーンズ。ファンの熱い思いを支えているのが、緻密なデータ分析に基づくマーケティング戦略です。運営会社の株式会社千葉ロッテマリーンズは、データウェアハウス(DWH)のSnowflakeを用いたファンプラットフォームの構築にあたり、クラスメソッドに技術支援を要請しました。クラスメソッドの実績とノウハウによりAWSサービスをテンプレート化してデータ基盤の構築・運用をスピーディに実現するデータ基盤サービス「CSアナリティクス」を活用した顧客データ基盤の構築とTableauによるダッシュボード構築について、マーケティング戦略本部 戦略企画部の小林さん、福井さんにうかがいました。

マーケティング施策の高速化を目指しDWHの導入とTableauダッシュボードの構築を決断

千葉ロッテマリーンズは2021年に策定した球団理念のもと、勝つための三カ条として「挑戦」「熱狂」「結束」を掲げています。現在は2025年までの中期目標「VISION 2025」に取り組み、“新たな常勝軍団に”を合い言葉にスポーツエンターテインメントの創造、チームブランドの強化、地域連携の強化を目指しています。

これらの成果として観客動員数は右肩上がりで増え続け、2024シーズン公式戦主催試合の観客動員数は球団史上最速で100万人を突破し、最終的には過去最多の191万5,246人を記録しました。躍進の背景には2019年に立ち上げたマーケティング戦略本部によるデータ分析やブランドマネジメントの強化があります。

株式会社千葉ロッテマリーンズ 「2020年頃からターゲットペルソナを設定し、チームカラーであるブラック&ホワイトの徹底、SNSを活用した情報発信、テーマ性を重視したイベントの開催などに取り組んできました。その結果、20代や30代のファンが増え、動員数の増加につながっています」(小林さん)

データに基づくファンマーケティング戦略の中核になっているのが2006年に導入したマリーンズ独自のCRM「MIX」です。MIXでは公式ファンクラブ「TEAM26」の会員情報をはじめ、チケット購入や対象店舗での飲食・グッズ購入などで貯められる「Mポイント」の情報、チケット購入実績などの顧客情報を管理しています。オンラインでチケットを購入したり、「TEAM26」に入会したりするためにはマリーンズIDの取得が必須であり、来場時にもMポイントを貯めることができます。「TEAM26」には有料会員と無料会員があり、有料会員に加入することでチケットの割引、先行購入、特典チケットの獲得などを受けることができます。同社は顧客動向を把握するためのマリーンズID保有数の増加と、有料会員の増加を目指してMIXを中心とするファンプラットフォームの構築を検討しました。

「アクティブユーザーへのアプローチを精緻化することで新規のID保有者を増やすとともに、既存顧客に対してはIDに紐付く行動データをもとにパーソナライズされたアプローチを実施することでLTVを向上し、購買と行動量の増加を図ることが狙いです」(小林さん)

一方、これまで顧客データ管理基盤としてMIX上に簡易的なDWHを構築していたものの、データベースの制限から収集できるデータには限界があり、さらに日次バッチでデータを取り込んでいたために施策の実施にはタイムラグが発生していました。そこでデータのリアルタイム連携によるマーケティング施策の実現を目指して本格的なDWHの導入を決断しました。

「従来のDWHはオンプレミス環境上に構築した閉じたシステムであり、MIXからのデータの取り込みにも、MAツールへのデータ出力にも時間がかかっていました。そこで専用のDWHを構築し、さまざまなデータとリアルタイムに連携することで、マリーンズIDの保有者に対する適切なアプローチを目指すことにしました」(福井さん)

データ活用におけるもう1つの課題は、分析のためのBIツールでした。ファンサービスの施策を検討して実施する同社のBtoC部門では、2020年頃からTableauを活用してデータを可視化していたものの、簡易DWHからのデータ抽出は時間を要し、限定的なデータ分析に留まっていました。さらにExcelによる属人的な業務フローも数多く残っていたことから、改めてTableauダッシュボードを構築し、BtoC部門が自由なタイミングで分析できる環境を整備することにしました。

クラスメソッド採用の決め手は「データに寄り添う姿勢と独特の空気感」

顧客データ管理基盤の新たなDWHには、将来性の高さと拡張性を考慮してクラウドサービスのSnowflakeを選定し、構築パートナーにクラスメソッドを指名しました。クラスメソッド採用理由を小林さんは「データに寄り添う姿勢と独特の空気感がマッチした」と表現します。

株式会社千葉ロッテマリーンズ
「初めてクラスメソッドのオフィスを訪問してお話を聞いた際、データエンジニアやデータアナリストの方々から漂ってくる雰囲気が他社とはまったく異なるものでした。システム基盤をきっちり作ることに重点を置く他のITベンダーと比較して、クラスメソッドからはデータそのものを重視する姿勢が見え、マーケティング施策まで踏み込んだ会話ができるのではないかと期待しました」(小林さん)

「個人的にはかつてクラスメソッドが秋葉原で運営していた技術検証型カフェの大ファンで、現在も技術ブログのDevelopersIOを愛読して情報を収集していることもあり、楽しく仕事ができそうな予感がありました。検討時はクラスメソッドからCSアナリティクスを紹介いただき、ETLツールにありがちなブラックボックス化が解消できるということで採用を決めました」(福井さん)

CRM、POSシステム、チケットシステムと5分に1回のニアリアルタイムで連携

2023年6月のベンダー選定を経て、同年11月より顧客データ基盤の構築プロジェクトを開始。Snowflakeに取り込むデータは、MIXの顧客データ、POSシステムの購入実績データ、チケットシステムの販売実績データの3つとし、出力先であるMAツールと連携しています。

株式会社千葉ロッテマリーンズ 「構築時はSnowflakeの料金を意識して設計しました。従量課金のクラウドサービスは、連携頻度が高くなるほどコストが高くなってしまいます。そこで、クラスメソッドのデータ基盤チームと相談しながら、シーズンオフは夜間に1回、シーズン中は5分に1回といった形で連携回数を工夫することでコストの最適化を図りました。また、連携するMIX、POSシステム、チケットシステムの開発ベンダーが異なる中、それぞれに対してプロジェクトの背景から説明し、納得をいただいたうえでSnowflakeとの連携を図りました」(福井さん)

クラスメソッドのデータアナリストやデータサイエンティストなどのBIチームが支援したTableauのダッシュボードについては、BtoC部門と協力しながらあらかじめ定めたKGI/KPIを可視化するダッシュボードを新規で構築しました。複雑なデータ構造を理解し、読み解くのに苦労しながらも、約30種類のダッシュボードを構築しています。

「2006年に導入したMIX自体が改修を重ねてきたために複雑化が進み、運用でカバーしている領域が多々ありました。クラスメソッドのBIチームにはそれらを読み解いていただきながら、マーケティングのアクションにつながるダッシュボードを設計していただきました。現在、BtoC部門の中ではイベント、飲食、グッズ、チケットといった領域でTableauのダッシュボードを活用して定例ミーティングを行いながら、それぞれで施策を検討する動きが出てきています」(小林さん)

2025シーズンより本格的な活用をスタート

2025年2月現在、Snowflakeによる顧客データ基盤の構築は継続中で、2025年3月からスタートする2025シーズンより本格的な活用に移行する計画です。

株式会社千葉ロッテマリーンズ
「シーズン中は5分に1回の“ニアリアルタイム”でMIX、POS、チケットのデータをSnowflakeに取り込み、5分~10分に1回の間隔でMAツールと連携しながら、顧客個人の行動に紐付いた情報を適切なタイミングで発信し、マリーズID/入場者数の拡大、人気選手のグッズ販売や飲食の売上拡大などにつなげていきます」(福井さん)

分析のパフォーマンスも向上し、これまで5分以上要していたアウトプットスピードが1分に短縮されています。副次的な効果としてはDWHの存在が社内に広く浸透し始め、BtoC部門だけでなく他の業務部門でもデータ活用の動きが出始めています。

BtoB、管理領域等を含む統一DBを構築しデータドリブン経営実現へ

株式会社千葉ロッテマリーンズ
今後、ファンプラットフォームでは、DWHと連携するデータを拡張し、さらには天気や統計情報などのオープンデータや、Webログ・SNSなどのデータとの連携を模索しながら、より効果的なマーケティング施策の実施につなげていく考えです。

さらに同社が「その先」として見据えているのが全社的なデータドリブン経営の実現です。BtoCに限らず、BtoB領域の法人データ、管理領域のデータなども集約しながらリアルタイムに適切な経営判断ができる環境を整備する構想を描いています。

顧客データ管理基盤の構築を支援したクラスメソッドについては、期待どおりの働きぶりを評価し、データに基づくマーケティング戦略を実現するための提案に期待を寄せています。

「最初の面会でクラスメソッドに感じた“データに寄り添う感覚”は今でも変わることがありません。本当にデータが好きな方々が集まっているという印象で、社風に近いものを感じています。今後も千葉ロッテマリーンズの事業に対する理解を深め、新たな提案をいただけると助かります」(小林さん)

「開発がスピーディで、システム構築後のデータ活用のことまで一緒に考えてくれる姿勢に感銘を受けました。プロジェクト中、データ活用に関する数々の意見をいただいてきましたが、今後も遠慮することなく提案していただき、一緒に取り組んでいきたいと思います」(福井さん)

常勝軍団を目指し、ファンと球団が一体となって変革を進める千葉ロッテマリーンズ。クラスメソッドは引き続きデータを活用したマーケティング施策の高度化を支援してまいります。

この事例はCSアナリティクスをご利用いただいています

クラスメソッドはAWS、GCP、SnowflakeなどクラウドDWHを活用して最短1ヶ月で導入可能なデータ統合サービス「CSアナリティクス」を提供しています。社内のデータを活用したいお客様はぜひご相談ください。

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