水処理技術のリーディングカンパニーとして、水処理エンジニアリング事業(電子産業、一般産業、電力・上下水など幅広い分野向けの水処理プラント設備やサービスの提供)、機能商品事業(水処理薬品、標準型水処理機器・フィルタ、食品加工材、イオン交換樹脂などの機能材料の提供)を展開するオルガノ株式会社。同社は2022年よりデータ・デジタルの活用効果を最大化するための全社共創プラットフォームを構想し、その一環として2023年よりクラスメソッドの支援のもとで「データ活用基盤構築プロジェクト」をスタートさせました。
同社は現在、半導体製造工場向けの超純水製造システムが高業績を牽引していますが、次なる成長事業の創出および業務効率化を推進するための最重要課題があらゆるデータを相互に活用することであると判断し、データ活用基盤の構築プロジェクトをスタートさせました。クラスメソッドの「CSアナリティクス」による、Snowflakeを中核としたデータ活用基盤構築プロジェクトについてお話を伺いました。
システムのサイロ化が阻むデータ活用
プロジェクト開始前、同社のデータは各部門やシステムごとにサイロ化されているケースが多く、データを組み合わせて活用する際は、ユーザーが個別にデータを取り出して加工しなければなりませんでした。作業効率の問題だけでなく、対象データ量が多いケースでは従来のシステム環境では処理が困難であり、データ解析が思うように進まない状況が散見されていました。
その状況を宮野さんは「過去に導入された目的別のITシステムでは、この問題を解決できないと感じていました」と振り返ります。そして2022年に木田さんと同部署になり、全社共有のデータ基盤が必要であるという点で2人の意見が一致しました。また、同社には過去にもデータウェアハウスは存在していましたが、拡張性やメンテナンス性に乏しいという理由で廃止した経緯がありました。この経験を踏まえ、将来的な拡張性やデータを柔軟に活用できる機能の必要性も議論されました。
合わせて同社のデジタル戦略も策定され、デジタル技術を用いた業務改善と新たなビジネスチャンス創出に向けて、「人材育成」「デジタル基盤構築」「データガバナンス整備」という3つの要素が明確になりました。このうちデジタル基盤の根幹を成すものとして、事象予測などの高度なデータ活用を効率的に行うための土台作りとして、データ活用基盤の構築がスタートしました。
データウェアハウスの選定において重視したポイント
データ活用基盤の中核であるデータウェアハウスの選定にあたり、同社は複数のサービスを比較検討しました。様々なサービス、製品が候補に挙がるなか最終的にSnowflakeが選ばれました。その理由を木田さんは、以下のように述べています。
「サービスをネットワークレイヤーで組まないと使えないものだと運用・保守が煩雑になります。加えて、PowerBIなどのSaaSから接続する際のセキュリティを考慮すると、Snowflakeが最適でした。ロール管理も統一できる点も決め手になりました」(木田さん)
また、宮野さんは長期的なデジタル戦略の観点から、Snowflakeの選定に際して中立性を評価したと話します。
「特定の企業が提供する製品群に偏らないことを意識しました。企業では、コストやサポート面のメリットから特定企業の製品でシステムをまとめるケースが多いですが、同じ企業が提供する製品同士であっても親和性が高いとは限りません。製品の機能や拡張性を判断して選びたかった」(宮野さん)
さらに、海外を含むオルガノグループ全体で利用できること、多くの企業に採用されており将来性が期待できること、セキュリティが万全であること、豊富な機能により様々なデータ利活用に対応できることなども重要な選定基準となりました。
セキュリティ課題にCSアナリティクスがもたらした解決策
データ活用基盤の構築を進めるにあたり、技術的難易度やセキュリティ対応などから第三者による支援が必要だと宮野さん、木田さんは考えていました。クラスメソッドに決定したポイントは、Snowflakeの導入課題に対する提案の具体性・納得性の高さでした。同社のセキュリティポリシー上、クラウド側からオンプレミスのデータを直接取得することができなかったため、オンプレミス側からクラウドにデータをプッシュする仕組みが必要となりました。
この課題に対しクラスメソッドは、データ分析基盤のソリューションである「CSアナリティクス」を提案しました。CSアナリティクスのData Uploaderは、既存のファイアウォール設定を変更することなくセキュアなデータ転送を実現でき、多要素認証にも対応しており、AWS上で構築されているため堅牢なセキュリティ機能と詳細なアクティビティ監視も可能です。
「クラスメソッドは、AWS、Snowflake、ETLツールなど包括的にサポートできる点が決め手でした。ツールだけ導入しても右も左もわからない状態でしたから、トータルでサポートしてもらえることが重要でした」(木田さん)
データ活用基盤の構築によりDXが加速
2023年7月から本格的に開始した構築プロジェクトは、約1年で主要な5つのシステム(基幹システム、kintone、IoTシステムなど)の連携を実現しました。
現時点での具体的な効果について、宮野さんは「基幹システムを中心とした複数の業務データが統合され、BIツールなどを通じたデータ分析・可視化が可能になりました。」と説明します。
「時間と手間がかかっていたデータ集計作業が効率化され、迅速な意思決定などの業務改善に繋がっています」(宮野さん)
さらに、統計解析SaaSとの連携により、運転管理データを活用した設備の異常検知や状態予測等への応用も可能となりました。点在していたデータを一元的に管理・活用できるようになったことで、部門横断的なデータ分析や新たなビジネスモデル創出の可能性が大きく広がったのです。
技術力とフレンドリーさが両立するクラスメソッドの支援
宮野さんと木田さんは、プロジェクトを通じてクラスメソッドに対する印象が大きく変わったと言います。当初はAWSに特化した専業ベンダーとして、堅実でビジネスライクという先入観を持っていました。しかし、実際にプロジェクトに一緒に取り組むなかで、そのフレンドリーさと、レスポンスの素早さに、驚かされたといいます。
木田さんは「初めて触れるSnowflakeについて、今でも丁寧に教えていただいています。また、フレンドリーな雰囲気で常に接していただけるので相談がしやすい。IoTシステムとの連携という非常に重いタスクでも、一つ一つ議論して検証して粘り強く対応いただきました」と、雰囲気の良さについて話します。
また宮野さんも、クラスメソッドへの信頼について、「外部の開発会社との定例会議は、雰囲気が固くなりがちです。しかし、クラスメソッドの技術力に裏付けられた迅速なレスポンスはタスクを安心して任せられるもので、いつも笑顔が絶えませんでした。」というエピソードを語ります。
「外部の開発会社に支援を依頼する際は、厳しい工数管理でスケジュールをタイトにしがちです。しかし、クラスメソッドはプロジェクトの初期段階で技術力もプロジェクト管理能力も信頼できるとわかりましたので、我々もできるだけ柔軟なプロジェクト管理に努めました。」(宮野さん)
データ基盤を中核としたさらなるDXの推進
オルガノ社のSnowflakeを中心としたデータ活用基盤は活用が開始されましたが、プロジェクトに終わりはありません。今後、新規システムの開発時にはすべてデータ活用基盤への連携を前提とした設計を行っていくことになります。また、様々な大規模システムの導入も進行中です。今後のシステム開発においては、各部署がシステムを導入できる仕組みの整備も推し進めていきたいと宮野さんは話します。
「最近は各部署が自分達でシステムを開発することが増えてきたので、開発や運用管理の支援を引き続きクラスメソッドにお願いできればと考えています」(宮野さん)
オルガノ社のデータ活用基盤構築は、同社のデジタル戦略の下、ボトムアップで始まり、全社的なプロジェクトに発展しました。今後は、全社での基盤活用を通じて更なる成長を目指していくことになります。クラスメソッドは、これからも同社のデジタル変革を支援してまいります。