オリックス・システムは、従業員3万人以上の規模を誇るオリックスグループの情報システムを支えるシステム開発・運用会社です。グループの基幹システムを支えるとともに、新サービス開発や運用・業務改善に取り組み、グループ全体のビジネスを支えています。
近年、オンプレミスで運用する基幹システムとSaaSのデータを連係したいというリクエストがグループ各社から挙がるようになってきました。ビジネスを加速させるために同社ではAPIの連携基盤を構築することを決定。しかし、自社で開発・運用経験のない領域であることからスピーディーな開発・安定的な運用については不安もありました。
そこで、これまでもAWSの調達などで取引のあったクラスメソッドに開発の技術サポートを依頼し、Amazon API GatewayやAWS Lambdaを活用し、短期間のうちにAPI基盤を構築することに成功しました。
プロジェクトの内容や効果、またクラスメソッドのサポートについて同社の荒川さん、西野さん、河野さんにお話を伺いました。
柔軟でスピーディーな情報システム提供を
グループの情報システムを担う同社において、荒川さんらが所属するアプリ部門では利用者の課題について相談を受け、要件定義を行い、開発などを行っています。
これまではSaaSのCRMと基幹システムなどのデータ連携は月次で行っていましたが、急ぎの要望が増えてきました。連携がタイムリーに行えないため、同一のデータをCRMと基幹システムの両方に二重登録するような状況が発生していました。
このような業務上の課題に答えるのが同社の使命です。早速、連携の実装を検討することにしました。
「外部と内部のシステムが連携する中で、影響範囲を大きくしたくありませんでした。疎結合で、ベンダーロックのないものにしたいと考え、APIでやっていこうと考えました」(西野さん)
SaaSの活用はオリックスグループ全体でも広がりつつあります。将来的な拡大を見据え、スモールスタートで始めやすく規模の拡大にも対応しやすいAWSを活用したAPI基盤を構築することに。
ただ、開発前の段階では技術上の課題も。
「API Gateway Lambda オーソライザー(Lambda 関数を使用して API へのアクセスを制御する API Gateway の機能)をどのように実装していくか、既存システムで使っているActive Directoryの認証の連携をどうしていくかで時間が取られることは明白でした。ここで時間を取られるより、クラスメソッドに相談して知見・ノウハウを蓄積していこうと考えました」(荒川さん)
と、7年ほど前からAWSのリソースを当社経由で調達いただくなど、取引のあったクラスメソッドに相談。システムを内製するポリシーがある同社の技術力を高めるため、技術的な課題について伴走しサポートしていくスタイルを評価いただきました。
約半年でAPI公開を達成
今回、サポートをご依頼頂いたAPI連携基盤は既存システムをリプレースするものではなく、SaaSのシステムとのデータ連係機能の追加です。月20時間以内のQAを、Backlogを中心としたオンラインのツールを活用して行いました。
また、クラスメソッドではお客様に向けてリソース使用状況の確認や費用の可視化ができるポータルサイト(CMP)があり、ここでもお問合せを受け付けたり、サポートさせていただいたりしています。このシステムもご活用いただき、自社開発を進めていただきました。
2021年の9月にサポートを始め、2022年3月にはAPIを公開するところまで達成しました。前半は認証回りで技術的な課題の解決を、実装の形が見えてきた後半は運用・コスト面の解決をクラスメソッドはサポート。担当エンジニアの直接的な支援だけでなく、DevelopersIO上の記事という間接的な形でも貢献しています。リリース前にはPoCも行うことで実務的な課題も解消でき、大きなトラブルなくリリースを行えました。
「Azure ADの連携面についてきめ細かく調査いただいて解決できたのが嬉しかったですね。AWS中心のサポートと考えていましたが、Azure側までご確認いただけてとても助かりました」(荒川さん)
「異なる構成のシステムをいかにシームレスに接続させるかという課題についてアドバイスをもらえ、解決に繋がりました」(河野さん)
と、AWSにとどまらないアドバイスを行っています。
グループ全体のビジネス推進へ更なる技術力向上を
そもそもサーバーレス技術を活用する前提で検討していた今回のAPI連携基盤。「開発のデッドラインはありませんでしたが、長期開発するイメージもありませんでした(荒川さん)」とのことですが、この仕組みができないことにはオリックスグループ全体がAPIを使った開発を行うことができません。
「『APIのゲートウェイがないから新しいものを作れません』と言われないように、グループ会社のビジネスを早く動かせるようにしてあげたい、という思いが強くありました」(荒川さん)
「これから利用頻度が増えてきます。APIの数・利用数が増えれば増えるほどグループ企業のユーザーの恩恵が大きくなります」(西野さん)
グループ全体の情報の一元管理・効率化はこれから大きく進展することでしょう。同社ではオンプレミスのシステムも、クラウドのシステムも取り扱います。
「クラウドとオンプレミス、両方の技術を押さえながらも、互いの良い面を活用しながら連携出来る技術も伸ばせればと思っています(河野さん)」「SaaSを活用しながら内製化をすすめる中で技術力を高めていきたいですね(西野さん)」と多岐にわたる技術を取り込み、技術力とビジネス上の課題の解決力を武器にグループ全体への貢献を図っていくのだとか。
オリックス・システムは国内・海外で発展するオリックスグループの中枢を担うシステム開発・運用会社として発展を続け、単なるシステム子会社ではなく「グループ全体のシステム部」と位置づけられています。その根幹には各メンバーが研鑽とともに培ってきた柔軟で実直な技術力があってこそと言えるでしょう。