使いやすさが人気のRPAプラットフォーム
UiPath社は2005年にルーマニアで創業され、米国に本社を持つRPA(Robotics Process Automation)ベンダーです。同社のRPAプラットフォーム「UiPath」は、すでに世界でトップレベルのシェアを獲得しています。
「私たちの理念は“Robot for Everyone”──ヒトが創造的な仕事を行えるように、身近で誰にでも使えるRPAを開発することです。手元で使いやすいデスクトップツールから、安全性の高いサーバーツールまで、幅広く機能を展開しています。もともとWindowsのテスト自動化ツールとしてスタートした背景から、きめ細かな自動操作が可能で、自治体や教育機関、金融機関を中心に注目されています」と、クライアントソリューション本部 金融法人ソリューション第二部 マネージャーの平野涼様は述べています。
RPAは国内でも労働人口の減少対策や働き方改革といった文脈から特に注目されている技術であり、さまざまなベンダーがソリューションの開発・提供に注力しています。その中でもUiPathは2017年の日本法人設立後に導入が進み、すでに金融、小売、製造、流通、エネルギー、官公庁など幅広い業界の企業や団体が活用して業務効率化を図っています。
UiPathの強みについて、プロダクトソリューション本部 インフラストラクチャープロダクトソリューション部 部長の石崎磨己様は、「UiPathは情報がオープンで、仕様がつまびらかになっており、導入・使用のハードルが低いことが特長の1つです。機能制限のない評価版も用意していますので、その性能や利便性をしっかり実感してから導入できるという点も、お客様から高く評価されています」と説明します。
世界で活躍する3つの主要なRPAベンダーのうち、UiPath社はいち早く日本に上陸し、国内のサポートエンジニアの強化に努めました。また書籍の出版やナレッジベースの拡充、活用動画の制作など、日本語のコンテンツにも力を入れています。交流活動も活発で、ユーザーフォーラムやデベロッパーコミュニティも順調に拡大中です。
お客様の負荷を軽減しつつAWS上にRPAを導入できるテンプレートを開発
UiPath社の製品は、数千のビジネスオペレーションに対応する開発ツール「UiPath Studio」、人間主導・ロボット主導のいずれにも対応できる実行ツール「UiPath Robots」、リソース管理やスケジュール実行、監査証跡の保存などUiPath環境を統合管理するための「UiPath Orchestrator」の3つから成り立ちます。
このうちUiPath Orchestratorは、サーバーにインストールして利用します。統合管理を行うため、事務作業を定型化するプログラムであるデジタルレイバーの数や利用頻度に応じて、サーバー環境のサイジング、ネットワークセキュリティの確保などが必要でした。もちろん組織ごとにインテグレーションが必要で、デバイスの選定・調達を含めると長いリードタイムがかかっていました。
「多くの企業にとって、業務効率化だけでなく、現場業務を止めないIT投資が求められています。サーバーの構築・調達に時間をかけることなく、製品導入を速やかに推し進めることが重要となります。そこで、UiPath Orchestratorをクラウドサービスとして展開すれば、インフラの導入負荷を低減しつつ、スモールスタートして柔軟に拡張することもできるようになると考えました」と、プロダクトソリューション本部 インフラストラクチャープロダクトソリューション部の梶本陽介様は振り返ります。
UiPath社は、最初のクラウドインフラとしてAWSを選定しました。すでに多くの企業での実績があり、ノウハウもそろっていること。セキュリティにも注力しており信頼性が高いことなどが、選定の理由に挙げられます。
そしてAWSにUiPath Orchestratorを展開するにあたって、作業負荷を低減するためのテンプレートが必要でした。その環境を作るパートナーとして、UiPath社はクラスメソッドを選びました。
プロダクトソリューション本部 事業法人プロダクトソリューション部の井上秀和様は、「クラスメソッドは、AWSのパートナーとして著名で、多くの実績を積んでいます。UiPath Orchestratorのテンプレートは、冗長性を確保したり堅牢な造りにしたりと、高度な工夫を盛り込まなければならなかったため、高い技術力を持つクラスメソッドの支援が必要だったのです」と選定の理由を説明します。
AWSで素早くRPAを始めることが可能に
AWS環境で利用できるUiPath Orchestratorのテンプレート「Stack-UiPath on AWS」は、AWS CloudFormationテンプレートおよび構築手順書で構成されています。セキュアな領域を設けるAmazon VPCを用い、EC2を中核に、ELBやElasticCache、RDSなどで形成。またクラウド上でロボットを動かすデスクトップ環境として、Amazon WorkSpacesも利用できます。
オンプレミス版との最大の違いは、Amazon EC2 AutoScalingを組み込んで、負荷に応じてインスタンスを増減できるようにした点にあります。Windows環境のため工夫は必要でしたが、自動化に成功しました。
またロボットを動かすための自動化ファイルの格納場所として、ファイルサーバを利用しています。ここのデータが失われるとロボットが稼働しなくなってしまいます。そこでクラスメソッドのノウハウを活かし工夫を行うことで、ファイルサーバの冗長化に成功しました。
Stack-UiPath on AWSによって、ユーザーは素早くUiPath Orchestrator導入用の環境を構築できるようになりました。UiPath OrchestratorをAWS上で利用する場合、通常はAWSのGUI上からマニュアルオペレーションにより各リソースの設定を個別に行うため、構築完了まで3週間程度を要します。テンプレートの利用により、この環境構築を1日で実行することが可能です。クラスメソッドのサポートで、汎用性の高いテンプレートを開発できた点も、負荷の軽減に貢献しています。
新規ユーザーは、PoCを手早く手軽に実施して、本番環境での活用を早めることができます。既存のUiPathユーザーは、テスト環境をクラウド上に素早く展開できるというメリットが得られます。オンプレミスサーバーと比較して、スケールアップやスケールダウンが容易な点も大きな魅力です。
「クラスメソッドの的確なアドバイスのおかげで、高度な工夫が必要な環境構築を成功させることができました。いつ問い合わせてもクイックに回答を得られ、『知らないことはないのではないか』という印象です。AWS以外の技術にも精通しており、UiPathのクラウド化に大きく貢献してくれました。業務内容の住み分けがしっかりしているため、私たちも作業を行いやすかったと感じています」(梶本様)
より多くの企業へRPAを広めたい
UiPath社は今後、従業員にオフィスツールの1つとして使ってもらうために、管理者はUiPath Orchestratorでガバナンスを利かせて容易に管理・配布できるように、RPAプラットフォームとしての進化を続けたいと考えています。
テンプレートの開発によって、UiPathの導入作業は大幅に軽減されました。しかし、それでもまだアプリケーションの導入といった手作業が残されています。将来的にこれらの工程も省力化・自動化し、ユーザーにとってより使いやすくなるよう導入支援や運用の自律支援などを強化していく方針です。
「クラスメソッドには、これまで以上に幅広い技術支援とサービスを展開してほしいと願っています。UiPathは注目度が高く、AWS版もさらに多くの企業で活用されていくでしょう。当社はクラスメソッドとのパートナーシップを強化して、顧客満足度の向上に努めたいと考えています」(平野様)