ホテル椿山荘東京や箱根小涌園をはじめ、多くのホテルやレジャー施設を運営している藤田観光。同社は2023年7月に会員制サービス「THE FUJITA MEMBERS」のスマートフォン向けアプリをリリースしました。デジタル会員証、ポイント機能はもちろん、ユーザーが設定する様々な記念日に使えるクーポン発行などの機能を提供しています。
開発からローンチまで約3カ月という短納期で高品質のアプリを提供できるよう、開発工程でそれぞれの分野に強い複数のベンダーに依頼したという今回のプロジェクト。クラスメソッドにはAWSのインフラ部分をおまかせいただきました。
ベンダー間のコミュニケーションや責任分界点など、マルチベンダー体制ならではの難しさをいかにクリアしたのか。アプリローンチまでの裏側についてお話をうかがいました。
お客様の声からスマホアプリ需要に気づく
藤田観光では、会員サービスの強化を目的に2022年4月にTHE FUJITA MEMBERSのWebサービスをリリース。しかしスマートフォンやタブレットでの登録・操作上の課題が徐々にわかってきました。
こうして、アプリケーション開発プロジェクトが立ち上がります。
信頼するベンダーに確実なプロジェクト遂行を
モバイルアプリの質の担保や比較的短期間での開発・リリース体制を整えるため、同社はアプリ開発とインフラ基盤設計部分でそれぞれのパートナーが共同開発するマルチベンダー体制での開発を選択します。要件などをまとめ始めるものの、インフラ構成図の作成などシステム構築前の検討材料がいくつかありました。
社内のオンプレミス環境や既存AWSシステム、また稼働中のWebブラウザ版のデータベースと連携が取れるAWSインフラを新たに構築したいと考えたとき、以前Webブラウザ版のインフラを構築したクラスメソッドに白羽の矢が立ちます。
「初めてクラスメソッドに依頼したのは2年前、社内のオンプレにある会員データベースの移行に伴うWebサーバ開発のときでした。当時から技術力が頭一つ抜けているなと感じていましたし、カットオーバーまでスムーズに進み稼働後のサポートも充実していました。手厚いレスポンスや運用の具体的なアドバイスなど、運用後の踏み込んだ部分にもていねいに対応いただけたので、今回はほぼ決め打ちでしたね」(唐澤さん)
早い段階でシステム構成図を書き「交通整理」に
AWSインフラ構築を担当したクラスメソッドは、当プロジェクトの懸念点であったシステム構成図・アーキテクチャ図を初回ミーティングで提示。社内の構築ノウハウや以前に同社の案件を担当したメンバーなどの声を参考に、実運用を想定して作図しました。
「我々だけで描けなかった構成をプロジェクトの早い段階でご提案いただけたのはありがたかったですし、発注側が言葉にできなかったニーズを汲み取ってお話いただけたので安心してお任せできました。インフラ部分はアプリ開発の土台です。アプリベンダーに引き渡す関係上、タイトなスケジュールでお願いした部分もありましたが、期日までに引き渡しを終えていただき大変助かりました。ローンチ後も、ご提案いただいた構成で安定して稼働しています」(唐澤さん)
マルチベンダー体制でのプロジェクトはシステムの質の向上が望める一方、複数ベンダーとのコミュニケーションなど複雑なディレクションが求められます。
「ツールでプロジェクトを管理し、課題(チケット)を起票してのやり取りがメインでした。重要な部分は同日中にWebミーティングを設定するなどスムーズに話が進みました。複数のベンダーにお願いすると特に責任分界点が難しくなりがちですが、構成図やベンダー間のコミュニケーションにもご対応いただけてありがたかったです」(唐澤さん)
ローンチからトラブルなしの安定稼働
当初の予定通りにアプリがリリースでき、現在までシステムトラブルなく稼働中です。
インフラ環境の引き渡しに留まらず、以前構築したAWS環境に関わるQA対応のほか、運用を続けるうえでの知識や情報が日々役に立っているとのことです。
「今回の案件に限らず、引き渡し後の運用を意識したアドバイスを多くいただきました。なかでもopswitch(AWS自動ジョブ実行をスケジューリングできるクラスメソッド提供ツール)は活用させていただいています」(唐澤さん)
opswitchをはじめ、AWS総合支援サービス「クラスメソッドメンバーズ」ではAWS利用費の割引やクラウド保険、運用代行などのサービスを提供します。藤田観光は今後AWS運用の内製化も検討しているとのことで、DevelopersIOのノウハウ記事とあわせてサービスをご活用いただいています。
生成AI活用など技術×課題解決を継続検討
「ブラウザ版とメニューは同じでも、アプリの提供により『会員ページが利用しやすくなった』などのお声をいただくようになりました。スタッフからも好評で、お客様に案内しやすくなったと聞いています」(松井さん)
「インバウンド需要が回復してきたこともあり、スタッフの業務量が増えてきています。チャット対応などの部分はシステムに頼って、お客様と接する時間を増やせるような仕組みを整えたいです」(松井さん)
「AWS運用だけでなく、システム運用の内製化体制を整えていきたいと話しています。RPAやローコードツールなどを活用した業務効率化ツールの開発や一般的な運用業務は社内で完結できるようにし、ゆくゆくは生成AIの活用も視野に入れています。今はクラスメソッドメンバーズの充実したサポートを受けつつ、社内にノウハウを蓄積しているところです」(唐澤さん)
社会情勢など様々な状況の変化に対し、ホテル・レジャー業界は常に変化が求められます。こうしたなかでITインフラやサービスの側面からクラスメソッドは継続的にサポートを続けられるよう努めてまいります。
藤田観光「THE FUJITA MEMBERS」について
ビジネスホテルからラグジュアリーホテル、温泉旅館、レストラン、レジャー施設、結婚式場まで、幅広く事業展開する藤田観光グループならではの会員プログラムは、皆さまのライフステージに合わせたご利用機会を提供する「ライフイベントパートナー」となるため、より使いやすく、お客さま一人ひとりに合ったご提案ができるプログラムを目指しています。