三井グループの中核を成す、日本を代表する大手総合商社である三井物産株式会社。同社のコーポレート部門(CFO部門)に所属するリスクマネジメント部では、データ集計・分析・報告といった業務で顕在化していた課題の解決を図るため、Alteryxを導入しました。
重複していた業務プロセスの整理・標準化を進め、データ活用の高度化・内製化を実現した本プロジェクトについて、リスクマネジメント部 リスク評価室の岡野さん、仙波さんにうかがいました。
部署ごとの個別データ集計・分析・報告が招いていた非効率な業務プロセス
1947年に設立された三井物産は、金属資源、エネルギー、機械・インフラ、化学品、鉄鋼製品、生活産業、次世代・機能推進という7つのセグメントでグローバルにビジネスを展開する総合商社です。金属やエネルギーなど資源分野に強みを持っていますが、近年では医療やファーマといったウェルネス事業(生活産業セグメント)をはじめ、非資源分野にも注力しています。
また同社は、こうした幅広い事業展開を支える基盤としてDXにも積極的で、「DX事業戦略」と「データドリブン経営戦略(以下、DD経営戦略)」の2つから成るDX総合戦略を推進。DXによる絶え間ない革新を企業文化として定着させるための取り組みを続けています。

「リスクマネジメント部では、主に社内のシステムをデータソースとしてモニタリング業務を行っています。以前は各室が個別にデータを抽出・加工・修正して各事業本部に報告していたため、同じ作業を複数の担当者が行っており、業務の重複・非効率性が課題となっていました。またExcelを使った手作業も多く、作業手順も統一されていませんでした。全社集計を行うリスク評価室においても、例えばシステムAとシステムBから都度データをダウンロードしてExcelに貼り付け加工を行う、あるいは各本部宛の報告を改めて集計して全社報告を作成するといったように、煩雑かつ膨大な集計プロセスとなっており、業務負荷が大きい状況でした」(仙波さん)
データ処理能力の高さと内製化のしやすさでAlteryxを採用
部署(室)ごとの業務独立性が高く、作業の重複が発生している状況を改善するため、リスクマネジメント部はDXによる業務効率化に取り組みます。その方針としては、単にRPAなどのツールを導入して業務の自動化・効率化を図るのではなく、それぞれの部署(室)が個別に行っているデータ集計・分析・報告フローを見直し、最適化を図るといったアプローチで推進したと仙波さん。「ツール在りきではなく、データフローや業務プロセスそのものを見直し、標準化を図るうえで最適なソリューションの導入を検討しました」と説明します。
また、市況データなど社外のデータソースを利用する作業に関しても、各事業本部やリスクマネジメント部の部署(室)ごとにデータを取得しており、ここでも作業の重複が生じていたといいます。一例として、全社のリスクポジション集計を担うリスク評価室では、集計・報告業務の重複と、膨大かつ属人的なExcel作業が大きな課題となっていました(下図参照)。

DD経営戦略を掲げる同社にとって、データ集計・分析・報告フローの最適化は重要な課題であり、CFO部門を中心に有志が集まり、ツールの選定に着手。複数の製品を比較検討し、セルフサービス型のデータ分析プラットフォームであるAlteryxの採用を決定しました。仙波さんは、採用の決め手について言及します。
「まずはデータ処理能力の高さが上げられます。Alteryxは大容量データを短時間で処理することが可能で、社内システムや外部のWebサイトに直接接続してデータを取得できます。これまでデータの加工や修正は一部自動化していても、データの取得は手動でといったケースが多く、Alteryxの導入によりプロセス全体の自動化を図れることを評価しました。さらにエンジニアでなくても簡単なワークフローの作成・改修が行える使い勝手の良さもポイントでした。社員の異動が多い当社では、業務の引継ぎが大きな課題でした。改修を繰り返したExcelによる業務は引継ぎに時間がかかっていましたが、Alteryxならば速やかに業務を開始でき、エラーが出た際も容易に原因を特定できます。ワークフローの作成や改修において、必ずしも外部の専門家に頼る必要がなく、プロセス内製化に向いたツールだったことも、Alteryxの採用を決めた要因の1つです」(仙波さん)
Alteryxの導入を決めた同社は、米国Alteryx社の最上位プレミアパートナーとして豊富な導入実績を持つクラスメソッドをパートナーに選定しました。長年にわたる優秀なビジネスパートナーとしての評価と技術力が決め手となりました。
三井物産のデータ利活用が新たなステージへと移行

「導入決定時から期待していた業務の自動化・効率化といった効果はもちろんありましたが、それと同時に、Alteryx導入に伴い業務プロセス自体の見直しを図れたことは、副次的な効果として大きな成果に繋がっていると捉えています(下図参照)。例えば、リスクマネジメント部にある4つの市場リスク管理室では、これまで個別にリスクポジションの報告を経営層へあげていましたが、Alteryxを使うことでデータを自動集約し、統一されたフォーマットで一括報告できるようになりました。各室で個別に行っていた集計や報告作業の負荷軽減に留まらず、より高度で統一性のある情報を、閲覧者に対してタイムリーに提供できる環境が構築できたことで、データの受け手、特に経営レベルにおける迅速な状況把握や意思決定につながっています」(岡野さん)

さらに岡野さんは、取り扱えるデータ量や加工の質そのものが圧倒的に変わったとAlteryxの導入効果に言及。「16の事業本部を抱える当社で扱う全社データの量は尋常ではなく、Excelでは処理できずに落ちてしまうために実用的な取り扱いが難しいデータがあったが、Alteryxならばそういった大量のデータを処理可能になりました。また、複数のシステムからデータを取得・分析できるようになるだけでなく、別々のソース同士のデータを複合的に結びつけることができるようになりました(下図参照)。 散らばっていたデータに有機的な繋がりを持たせ、それぞれのデータがシナジーを生み出すことで活用価値が大きく向上し、データ利活用のステージが数段階上がったと感じています」と手応えを口にします。

充実したハンズオンと迅速なサポートを活かしAlteryx活用の次なる展開へ
同社CFO部門はさらなるAlteryx活用に向けて、クラスメソッドとの定例セッションやハンズオン研修を実施しています。
「私もワークフロー作成のハンズオンに参加しましたが、配布資料の充実ぶりに驚きました。細かなボタンの機能まで網羅されており、その場だけでなく後々のリファレンスとしても活用しています。業務の引継ぎにおいて、ワークフローの使い方は比較的容易に伝えられますが、作り方のノウハウ共有は難しいものです。だからこそ、こうしたトレーニングの場は非常に有用だと感じました」(仙波さん)
また仙波さんはクラスメソッドの普段のサポートについても評価しています。「部署内での評判では、技術的な問い合わせへのレスポンスは非常に速く、回答も丁寧。『必要であればお打ち合わせも設定します』とお声がけいただき、実際にお話をさせていただいたこともあるなど、普段のコミュニケーションの面で非常に助かっていると聴いています」と語ります。
一方で、さらなる情報提供への期待も膨らんでいます。
「社内のユーザー数が増えたことで、わからないことも外部に問い合わせず内部のノウハウだけで解決できるケースが増えてきました。ただし、やはり内部だけでは対応しきれない問題もありますので、今後さらに充実した情報提供をいただけることを期待しています」(岡野さん)
今後について「当社のDD経営戦略を支える重要ツールとして、Alteryxの積極的な活用を進めていきたい」と展望を語る岡野さん。同社では今後もAlteryxの活用範囲を拡大していく予定で、拠点間のデータ連携など三井物産グループ内への展開も見据えています。Alteryxは今後も同社のDD経営戦略において重要な役割を担っていくはずです。
クラスメソッドは、今後も三井物産のDD経営戦略を支援してまいります。