洪水を防ぐ樋門・樋管等の点検データベースシステムをAWS上に構築、大容量データにも対応可能に

日本工営株式会社

仙台支店 基盤技術部 石田樹里 様
日本工営株式会社
公開日:2023年3月02日
BEFORE
  • 点検用データを気軽に利活用したい
  • 大容量データの活用にはAWS環境のスペックが不足
  • 効率的なシステムアップデートに向けて開発環境が必要
AFTER
  • 点検データベースをAWS上に蓄積し、樋門・樋管施設の維持管理に有効活用
  • 性能とコストとのバランスを考慮したスペックアップを実施
  • 開発環境を本番環境と同構成で作成し、OSのアップデート等に活用

国内最大手の総合建設コンサルタントとして、河川・道路・ダム・橋梁など、社会基盤を支えるプロジェクトを数多く手がける日本工営。同社では、河川の逆流を防止する樋門(ひもん)・樋管(ひかん)の点検データを蓄積するデータベースをAWS上に構築しました。技術パートナーにクラスメソッドを採用し、2021年11月に開発を終えました。
その後、樋門・樋管データベースシステムのスペック調整と、開発環境の新規作成に再度クラスメソッドを指名して、1カ月間で環境整備を終えています。2つのプロジェクトに携わった、石田樹里さんにうかがいました。

詳細な点検データを格納するデータベースを構築し、施設管理者や点検業務受注者に提供

1946年(昭和21年)創業の日本工営は、80年近くにわたり、160カ国で国づくり・人づくりの根幹に関わるプロジェクトに関わり、世界中の人々の安全・安心を支えてきました。同社では、近年各地で進行している気候変動や異常気象によりもたらされる自然災害に対応すべく、災害対応を重要な任務と位置づけています。

日本工営株式会社 ここ数年施設管理の課題のひとつとなっていたのが、樋門・樋管の点検データの管理でした。樋門・樋管とは、河川の逆流を防止する管理施設です。洪水などによって川の水位が上昇した際には、樋門・樋管のゲートを閉じることで、住宅地等への浸水を防ぎます。現在、施設管理者は1カ所の施設を数年に1回のペースで点検し、当該管轄において1,000以上の樋門・樋管施設の予防保全をおこなっています。

点検結果のデータはExcelファイルで帳票化され、デジタルデータとして保存されていました。しかし、施設管理者や点検業務受注者が蓄積されたデータを利活用するうえでは、決して使い勝手がいいものではありませんでした。そこで樋門・樋管の点検結果を蓄積する新たなデータベースシステムを開発することにしました。

「既存のデータベースは、簡易的なデータ保存用に開発されたもので、点検結果を利活用するための情報が十分ではありません。そこで、詳細な点検データを格納するデータベースを構築し、施設管理者や点検業務受注者に提供することにしました」(石田さん)

日本工営における数多くのAWS環境の構築支援実績を評価してクラスメソッドを採用

樋門・樋管の点検結果を管理するデータベースシステムの開発に着手した日本工営は、プラットフォームにAWSの採用を決定し、構築の支援パートナーにクラスメソッドを指名しました。

「公共向けのサービスを開発する関係上、日本工営全体としては、オンプレミスを採用する事業部門や支店も少なくはありません。しかし、数年前から政府が提唱しているクラウド・バイ・デフォルトの原則に従い、情報システムを導入する際の第一候補としてクラウドサービスを検討する流れがあり、今回は、最初からクラウドを前提に検討していました。クラスメソッドには、以前から多くの支援をいただいている実績があり、当社の環境をよく理解いただいていること、安心してお任せできることから採用を決めました」(石田さん)

2021年11月に構築を終えた樋門・樋管の点検結果を管理するデータベースシステムのプロジェクトと並行し、砂防堰堤(さぼうえんてい)用の点検データベースシステムも併せて構築し、こちらもクラスメソッドがAWS環境の設計・構築を手がけています。砂防堰堤とはいわゆる砂防ダムのことで、土石流災害を防止するための施設です。砂防堰堤用の点検データベースシステムの目的は樋門・樋管と同様ですが、砂防堰堤用点検データベースは既存システムが存在しないため、新たに構築しました。

大容量データの活用に向けて、システムの性能不足が新たな課題に

樋門・樋管の点検結果を管理するデータベースシステムの構築は終了しますが、次年度以降のシステム運用後はシステム性能の不足が予想されます。そこで、2022年度のプロジェクトとして、既存システムのスペックを見直して環境を強化することにしました。併せてシステムのアップデートが容易にできるよう、本番環境と同構成で開発環境を作成することにしました。

「点検結果を記録したExcelファイルは、大容量の写真データや参照用の前年度データが含まれているため大きいサイズのデータもあります。2021年度に構築した環境では、ファイルのアップロードや、データのダウンロードに時間がかかることがありました。そこで、システムをより快適に利用できるようにスペックを見直すことにしました」(石田さん)

新たなプロジェクトでもクラスメソッドに支援を要請し、2022年8月から9月までの1カ月間で既存環境のスペックアップと、開発環境の新規作成を実施しました。スペックアップに関しては、AWSのサーバーやデータベースのインスタンスクラスの変更や、CPUやメモリの増強を、クラスメソッドの担当者に相談し、性能とコストとのバランスを考えながら進めていきました。

日本工営株式会社

「インスタンスタイプについて相談した際には、タスク管理ツールのBacklogを介して適切なアドバイスをいただきながら検討することができました。1カ月間の短期プロジェクトをお願いすることになりましたが、厳しい納期要望にもタスクに優先順位を付けながらスピーディに対応いただき、非常に助かりました」(石田さん)

点検業務や予防保全業務の効率化に貢献

構築した樋門・樋管の点検結果を管理するデータベースシステムには、施設情報、点検結果、補修工事情報等がデータとして記録されています。施設管理者や点検業務受注者は、点検結果や施設情報を地図上に表示したり、健全度・劣化進行度をグラフに表示して傾向を把握したりすることができるため、点検業務や予防保全業務の効率化が期待されています。

「操作説明会を実施した施設管理者にも好評で、多くの方に積極的に使っていただける手応えを感じています。システムの利用が増える出水時の点検時や定期点検時も、施設管理者に、補修工事の優先順位の決定や補修箇所の特定などで、データを活用していただけると想定しています」(石田さん)

新たに作成した開発環境もすでにサーバーOSの更新や、Webサーバーソフト(Apache)のバージョンアップなどに活用され、本番環境の安定稼働に貢献しています。

クラウド活用の拡大に向けてノウハウを他の部門に横展開

今後は、継続して樋門・樋管の点検結果を管理するデータベースシステムにデータを蓄積しながら、ユースケースの拡大を図り、必要に応じて機能を追加していく予定です。2021年度に構築した砂防堰堤の点検結果を管理するデータベースシステムについても、今後開発環境を新設し、施設運用につなげていければと考えています。

さらに、クラウド活用の拡大に向けて今回のプロジェクトで獲得したノウハウを他の部門に横展開していくことも構想しています。

「今後、IoTやクラウド、大容量データを活用した案件が増えていくと想定されます。そこで、部署の垣根を超えた連携を視野に入れながら、クラウドを活用した新たなサービスやシステムの開発につなげていきたいと思っています。クラスメソッドには引き続き高い技術力での支援を期待しています」(石田さん)

クラスメソッドは、社会インフラを通して人々の安全・安心を支える日本工営のビジネスを、引き続きサポートしてまいります。

この事例はAWSコンサルティングをご利用いただいています

クラスメソッドのAWSコンサルティングは、公式資格を持つエンジニアがお客様の要件にマッチしたAWSのクラウドインフラ設計、サービス選定をご提案。AWSの広い知見を活かし、コスト削減からハイパフォーマンスな構成までじっくりとアドバイスします。

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