日本テレビグループの事業や業務をITで支える株式会社日テレWands。同社で日本テレビグループの基幹システムや業務システムの開発・運用を手がけるメディアソリューションディビジョン(Div.)は、オンプレミス環境の会計システムから、AWSを介して外部APIに接続するゲートウェイを、クラスメソッドの技術支援を受けて構築しました。本プロジェクトについて、開発担当の大谷さんと村澤さんにお話をうかがいました。
オンプレミスの会計システムから外部のAPIに接続するゲートウェイを構築
日本テレビグループの「日テレITプロデュース」と「フォアキャスト・コミュニケーションズ」の2社が合併して2022年4月に誕生した日テレWands。同社は現在、コンテンツソリューション、システムソリューション、メディアソリューション、メディアマーケティング、コンシューマーサービスの5事業を手がけ、日本テレビグループ向けのシステム開発から、コンシューマー向けのタレント・スポーツ選手のWebサイト運営まで幅広い技術領域をカバーしています。
日テレWandsでは、全社的取り組みとして業務プロセス変革や顧客のデジタイズ支援などを中心としたDXを推進しており、大谷さんと村澤さんが所属するメディアソリューションDiv.においても、幅広い業務知識とアプリケーション開発のスキルを活かしたシステムのDX化に取り組んでいます。
今回、メディアソリューションDiv.がクラスメソッドの支援を受けて実施したプロジェクトは、オンプレミス環境で運用している日本テレビの会計システムから、外部のAPIに接続するためのゲートウェイ構築です。
日本テレビでは、請求書受領システムにクラウドサービス(SaaS)を利用し、取引先から受領した請求書はPDF化して管理しています。これまでは、担当者が請求書受領システムから請求書情報をダウンロードし、金額や取引先といったデータの一部を手作業で会計システムに入力していたことから、作業者に負担がかかっていました。そこで、外部APIを介して会計システムと請求書受領システムを連携し、請求データを会計システムへ直接取り込むのが本プロジェクトの狙いです。
しかし、セキュリティポリシーによる課題があったと村澤さんは語ります。
「セキュリティポリシー上、オンプレミス環境で運用している会計システムと外部のクラウドサービスを直接つなぐことはできません。そこで、安全にデータのやり取りができるように、両システムの間にDMZとしてゲートウェイ構築を決めました。ゲートウェイはクラウドとオンプレミスを比較して、コスト面の優位性からクラウドを選択し、日テレWandsとして利用実績が豊富なAWSを採用しました」(村澤さん)
マネージドサービスの採用で運用負荷を軽減
プロジェクトを進めるにあたり、技術支援のパートナーとして請求書ワークフローの構築など、数多くの案件で同社と取引実績があり、長期にわたるパートナーシップがあるクラスメソッドを採用。2023年6月より、村澤さんをリーダーに開発をスタートしました。
「当初は漠然とAmazon EC2でサーバーを立てて、その上でのアプリケーション導入をイメージしていましたが、メンテナンスは極力避けたいと考えていました。そうした中で、クラスメソッドからAPI Gatewayを使えば開発期間が短縮でき、導入後も運用負荷がかからず、コストも軽減できるというアドバイスをいただきました。セキュリティに関しても、一般的な業務システム以上に要求レベルが高い会計システムにおいて、ベストな構成で構築ができるように支援をいただきました」(村澤さん)
クラスメソッドの支援を受けながら自走開発にチャレンジ
開発リーダーの村澤さんにとって、AWSの運用経験はあるものの、本格的な開発は初めてでした。プロジェクト前には、初級者向けのAWSクラウドプラクティショナーの資格を取得するなど事前に準備したうえで臨んだものの、苦労は多かったといいます。
「インフラの知識が乏しかったため、開発当初は専門用語がわからずに戸惑うこともありました。自分で調べたり、会計システムのインフラ担当者に助けてもらったりしながら進めましたが、クラスメソッドのエンジニアからも手取り足取り、細かいところまでアドバイスをいただいたおかげもあり、最後まで自力で構築できました」(村澤さん)
村澤さん自身、複数の開発案件を抱えて多忙を極める中、プロジェクトを確実に進めるために週1回の定例ミーティングの中で進捗を確認しながら進めました。さらに今後の自走化に向けて、簡単なことであってもあやふやに終わらせないように、細かくクラスメソッドのエンジニアに質問して疑問の解消に努めました。プロジェクトのマネジメントを担当する大谷さんも「クラスメソッドのレスポンスの早さに助けられた」と評価しています。
「投げかけた質問に対するクラスメソッドの回答が早く、なおかつ正確性も高いため、課題解決がスムーズに進みました。Backlogによる進捗管理で、案件の流れは時系列を追って把握できましたし、課題解決の内容も漏れがないようにアーカイブしていだだけたので、マネージャーとしても安心して見守ることができました」(大谷さん)
システム障害が発生することなく安定運用を継続
約1年間のプロジェクトにより、開発チームは日本テレビが求める形で外部APIの接続環境を構築できました。会計システムと請求書受領システムが自動連携したことで、日本テレビの担当者からは「楽になった」という声も聞こえてきました。
「当初の想定以上にコストは増えておらず、感覚的に一定の軽減効果は出ていると見ています。APIゲートウェイはほぼ費用がかかっていない印象ですし、EC2でサーバーを立てるより圧倒的に低コストで運用できていますね」(大谷さん)
開発チームとしては、プロジェクトを通して村澤さん自身がエンジニアとして成長できたことも大きな成果であり、村澤さんも手応えを感じています。
「これまで運用業務しか携わってこなかった私が、AWSを使った開発に自ら『やってみたい』と手を挙げてチャレンジできたことは貴重な経験となり、大きな自信になりました」(村澤さん)
今後も、今回のプロジェクトで獲得したノウハウと経験を活かして開発の自走化にチャレジしていく方針で、新たな案件に向けて準備を進めています。クラスメソッドについても継続的な支援を期待し「最新の情報提供をお願いします」と大谷さんは話しています。
クラスメソッドは、引き続き素早いレスポンスで日テレWandsのプロジェクトに寄り添い、開発の自走化に貢献して参ります。