レンタルのニッケンはその社名の通り、土木・建築・産業機械を中心にレンタル、および販売も行う企業です。取り扱う商品は4,700種類、115万点にもおよぶなど、非常に多岐にわたるのが特徴です。ITの歴史は長く、かつては各営業所でオフコン(AS/400)が稼働していたこともありました。昨今ではQRコードで商品管理をするなど、ITで業務効率化を積極的に進めています。
IT利活用から得られるデータを駆使し、同社は現在本腰を入れて「データドリブン経営」を志向しています。管理本部副本部長 執行役員 綱一馬さんは「2つの流れがちょうど重なり、全社的に『データドリブン経営』導入の流れを作ることができました」とその経緯を振り返ります。その1つはデータを重視する経営の実現についての発案であり、もう1つが従来のデータウェアハウス環境を刷新するプロジェクトでした。
今回クラスメソッドはデータ活用コンサルティングという形で、レンタルのニッケンの課題のヒアリングやデータウェアハウスの整備などの後方支援に携わりました。本インタビューではデータドリブン経営を目指すきっかけから振り返ります。
本質的なデータドリブン経営導入に向けた足がかり
営業企画の笑門福来さんは、2018年にアメリカの同業他社を視察し、そこで蓄積されたデータをもとに経営判断するさまを目の当たりにして強く感銘を受けました。「今のままでは大きく差を付けられてしまうと感じました。私たちも当時から基幹システムデータを利用したり、Salesforceを導入したりデータ利活用したりする取り組みは実施してきましたが、200カ所以上ある営業所の人たちの詳細な活動をデータで捉えたり、収集したデータの分析結果を活用して彼らに指示を出していけるようになったり、マーケティングに活かせるようにしたりするにはもっと大きく踏み出さなくてはいけない」と考え、データドリブン経営導入に関する企画書を社内で発表しました。
一方、綱さんはデータウェアハウス環境を刷新するプロジェクトを実施するにあたり、単純な環境刷新では効果は限定的で、真のデータ利活用には繋がらないとご自身の経験から考えています。
ソフトウェア等のITの仕組みの導入はデータドリブン経営導入の中間地点にすぎない、と考えた綱さんが目指したのはこの「コンセプトの浸透」とデータドリブン経営を体感できるような「ゴールまで走りきること」でした。それに応え共に経営課題を考えるパートナーとしてクラスメソッドにお声がけをいただきました。
ご相談を受け、クラスメソッドのBIチームは同社とのディスカッションを通じて目指す方向性の理解と方向性に沿った現状課題洗い出しの支援からスタート。①売上向上をはじめ経営課題との関連性及び重要性の整理と、②課題解決に向けた様々な仮説の立案、③仮説が各営業所の実績データを用い検証可能なのか、この3点をユーザーとのディスカッションとデータに基づく検証の繰り返しを実施しながら伴走し、より確度の高い分析を実現することができました。
こうした動きに対し、綱さんからは「当方のデータドリブン経営のコンセプトに共感いただいたことと、それをわかりやすい形でユーザーに伝播いただけたことがありがたかった」と、実践的なデータドリブン経営導入の足がかりとなった点をご評価いただきました。
「今回のプロジェクトにおいては、課題解決の確度の高い方法が得られたわけではありません。これからも模索し続けると思います。そもそも課題解決に対して完璧な答えが用意されているのではなく、検証を重ねてより確度が高い答えを模索することこそデータドリブンの本質です。この本質に沿って、今回のプロジェクトにおいてある一定のレベルの確度を体感するに至ったのは、クラスメソッドと本プロジェクトに携わったユーザーの力だと思っています」(綱さん)
従来のシステムの性能限界をクラウドデータベースで改善
システムの状況に目を向けましょう。同社はすでに社内のほとんどのシステムがクラウド(AWS)への移行を済ませており、ユーザーのニーズに沿った性能・機能拡張を実施する環境の整備は概ね完了しています。一方、データウェアハウスについては、クラウドネイティブな製品ではない上に経年しており、性能面での制限やデータ整備面の課題が顕在化しつつありました。そこで情報企画部では、クラウドネイティブで社内のデータを集約でき、なおかつ素早くユーザーにデータを提供できる仕組みを模索し始めます。
こうした性能課題をクリアするために次元さんらは各種クラウドサービスを比較検討し、Snowflakeの採用を決めます。この理由について次元さんは「データ分析のプラットフォームとして注目が高まっていること、関連企業と容易にデータ共有できること、加えてメンテナンス性が良いことなどが挙げられます。特にメンテナンス性については重要です。データベース運用には特別なスキルが必要だったり、チューニングが必要だったり、容量の管理にも手間が掛かりますが、Snowflakeには各種のサービスが予め用意されていますし、マネージドサービスなら運用コストを低く抑えられます」と説明します。
同社では長らくシステム運用やデータ分析の経験がありましたが、SnowflakeのようなSaaS型データウェアハウスは利用していませんでした。綱さんは「最新のクラウド型データウェアハウスにおけるデータ管理のしかた、ポリシーやセキュリティの設計方法等、全く従来のデータベースとは勝手が違い、どうして良いのかわからない状態でした」と言います。
そこでクラスメソッドから同社が保有している基幹システム等の大規模のデータ収集蓄積ノウハウを得ることを決定し、クラスメソッドが提供するCSアナリティクスを活用してSnowflake環境へのデータ収集蓄積環境を整備しました。また、ユーザーのデータ利活用にはスキルやノウハウの課題があったことから、クラスメソッドのデータ活用コンサルティングの課題整理支援(PoC)サービスを活用して、最新のデータ利活用スキルやノウハウを導入しました。課題解決の支援を受け、様々なスキルやノウハウを紹介頂いて次元さんからは「気づきを得られました」というご感想をいただきました。
データドリブン経営に向けてスタートを切った
データ分析は試行錯誤の連続です。より緻密に分析しようとすると「データが足りない」など様々な課題が見えてきました。綱さんは「今回組み上げたものはまだデータドリブン経営の足がかりとしては改善の余地は多く、これからもチューニングを繰り返していく必要があります」と言います。
そして笑門さんも「社内から、よく『データが見えただけじゃ変わらないよ』と指摘されるのですが、見えないと変わることもできません」と可視化することの重要性を強調します。ダッシュボードを迅速に提供し、そのうえでブラッシュアップを繰り返していく手法も「イメージが湧きやすかった」とのこと。現時点では200ヶ所を超える営業所に結果を示すことができました。「データドリブン経営の大きな文脈では、少しだけでも未来を見せることができたと思います」と笑門さん。単価の評価については試行錯誤中ではあるものの綱さんは「経営サイクルの一部に組み込まれつつあるところは成果かと思います」と評価しています。
綱さんは「IT部門はディレクターだと思っています。ただしディレクターがただディレクションを決めるのではなく、社内も社外も含めて協力いただいている皆さんの意見を汲み取りながら、一方で方向性についてはうまくリードし、すべてがコーディネートできる状態を維持していけるようになりたいと考えています」と話しています。
レンタルのニッケンが志向する“真のデータドリブン経営”、その体現までクラスメソッドは今後も積極的な支援を心がけてまいります。