人気ブランド「天使のはね」でおなじみ、今年で創業100年を迎える老舗ランドセルメーカーのセイバン。少子化の時代に業態を広げる企業が多いなか、同社は現在ランドセル一筋で売り上げを伸ばしています。お子さん、お孫さんの一生に一度の買い物のために良いランドセルを買ってあげたいという気持ちに応えているのですね。
そんなランドセルの商戦は7月〜8月がピークで、さらに生産数の少ないものとなれば5月ごろだと言われています。4月の入学に向けた商戦が約1年前にあるという状況です。
同社のWebサイトにおいては、ゴールデンウィークがブランドサイトでの資料請求やECサイトの重要なシーズンなのです。
その貴重なゴールデンウィークの販売において、同社は2018年にアクセス集中によるサーバダウンで貴重な販売機会の多くを失いました。レンタルサーバ運営会社の方針で一度アクセス過多に陥ると、その日の24時までは接続できない状況になっていたのです。
「お金を出してでも解決したかったのですが、サービスに柔軟性がなく対応してもらえませんでした」
と語るのは同社の経営企画室主任 牛島邦貴さん。同じ轍は踏みたくないとAWSへの移行を決め、クラスメソッドにサーバ構築を依頼します。
大人気ランドセルサイトの足回りの改善はどのように行われたのでしょうか。
一生に一度の買い物
「ランドセルはお子様一人につき、一生に一度しか購入されないものなんです。もしご購入いただける機会を逃したらまた来シーズン、来年というわけにいきません。ランドセルの販売は毎年毎年が勝負です」
と牛島さんが語ります。普通のカバンであればシーズンごとに再び購入していただけるチャンスがあるものですが、ランドセルはそのお子さんが小学校の入学前に一度購入したら、おそらく二度と購入することがありません。
多感でもあり人間形成の重要な期間である小学校の6年間を共に過ごすランドセルの販売は、親御さん、あるいはおじいちゃん・おばあちゃんにとっても重要な買い物なんですね。
「サイトのPVは2015年時点では現在の3分の1くらいでした。この数年でサイトとして急成長し、ECに関しては売り上げで5倍ほどになっていました。そこにインフラが追い付かなくなっていったんです」
比較するのが難しいとしながらも、おそらく30%近くの機会損失があっただろうと語る牛島さん。同社の危機は、売り上げの成長とシステムのスケールのアンバランスさにありました。
スケールできるシステムをもとめて
とにかくアクセス増に対応できる足回りであってほしい。その願いからスケーラブルな構成に定評のあるAWSを使ったサーバ構成にしたいと考えた牛島さんは知り合いのシステム会社に相談し、クラスメソッドが紹介されました。
「当時、AWSはもちろん、サーバサイドの管理ができる者が社内にはいませんでした。そんな中、漠然とした意向を汲んで対応してくれる企業を探していました」
具体的な回答が安心感を与える
「詳細はFAQのページを見てください、という企業には不安感しか覚えません」
という牛島さん。質問する側は一問一答で答えてほしいのに、サイトを見てほしい、メールで送ってほしいと手間をかけさせる企業は不安が残るそうです。が、クラスメソッドの対応は「対応が非常に速かったです。逆に、当社が確認すべきことの回答が遅れることのほうが多くて急かされる状況でした(笑)」と満足いただけたご様子です。
アクセス増に対応できることがシステム面の要件であり、4月に入社するサーバ管理者がきちんと業務を行える資料が整っていることが管理面での要求でした。
「100周年を迎えるにあたり施策はいろいろ打ちたいと思っていたのです。顧客データベースも将来は作りたいですし、柔軟な会員サービスができるようにもしたかったので、柔軟性は重要視しました」
そのリクエストに対し、クラスメソッドでは管理者が変更できる部分・できない部分を明確にしてわかりやすく説明します。
「エンジニアさんに『できる』『できない』と確認するケースはよくあります。具体的に説明してくれた上で『大丈夫ですよ』という言葉をいただくことで、とても安心できるのです。クラスメソッドのエンジニアには豊富な知見があり、その知識と経験から安心感を与えてくれました」
と、牛島さんにもご満足をいただけました。
10連休を乗り切り、次の一手を打つ
今回の構成ではパブリックサブネット内に本番用Webサーバを立て、プライベートサブネット内に本番データベースを設置する、という標準的なWebシステムの構成としました。開発用と本番用は分離し、新しい管理者の方が検証しやすい環境にしています。そして、アクセス負荷の対策として、ランドセルの写真をはじめとするサイトの画像をAmazon CloudFrontによるキャッシュを効かせて大幅に負荷軽減させた設計となっています。
「体感として効果を感じられるほどのスピードになっていますし、Googleのスコアも良くなっています。サイトの向上で検索にも強くなってくれるとうれしいですね」
と牛島さんも大満足です。
過去にサーバが落ちた時には、利用者と思われる方が残念がるツイートがたくさん上がってきたそうです。
「数値では見えないリアルな声ですよね。お子さまの、あるいはお孫さまの一生に一度の買い物ができない残念さを見るのは私も残念でした」
それが改善したことは、単に数値や金額でない、子どもという将来の日本を背負う存在の向こう6年間を預かる大切な製品を提供できるということです。その満足が牛島さんからは垣間見えました。
1年あまりの交渉を経て映画『トイ・ストーリー4』とタイアップした全編ピクサー製作の新CMを取り付けた同社。誰もが見たような映画の世界にセイバンのランドセルが登場する、そんな夢のようなCMが同社のサイトから見られるようになっています(※現在は終了)。
と牛島さんは胸を張ります。創業100周年の様々な施策に協力でき、また、お子さんの一生に一度の買い物にお力添えできるよろこびをクラスメソッドも感じています。