株式会社FOOD & LIFE COMPANIESは、日本の回転すしチェーンのリーディングカンパニーである「スシロー」を原点に持ち、杉玉、京樽、回転寿司みさきなどのブランドをもつ会社です。2021年4月に社名変更し、グループ店舗数は国内外を合わせると999店舗となっています(2021年9月時点)。
競争の激しい回転すし業界をリードする存在となっているFOOD & LIFE COMPANIESは、従来よりIT、そしてデータの活用に注力してきました。2014年にオンプレミスサーバーからAWSに基盤を切り替えた際、クラスメソッドがパートナーとして選ばれ、以後2021年に至る現在もクラスメソッドメンバーズとして長くご契約をいただいています。基盤リプレイスの開発プロジェクトの担当責任者である情報システム部部長 坂口豊さんに、クラスメソッドのAWSサポート体制について、また同社のIT活用、データ分析の展望などについて詳しくお話を伺いました。
“うまくて安い”継続的な実現のため、IT化への取り組みは欠かせない
スシローは一軒のすし屋を原点に持ち1984年創業。通常飲食店の食材原価率が平均30%といわれるところを約50%かけるなど、うまさのこだわりに余念がありません。FOOD & LIFE COMPANIESに母体が拡大したものの、スシローブランドの味へのこだわりを継続していくためには、ITによる省人化への取り組みは欠かせません。
AWSの採用時当初において、非常に重要だったのは分析システムの構築です。同社ではすし皿1枚単位で収集したデータを1日ごとに収集し、Excelとマクロで管理していましたが、全国で年間13~14億皿にも及ぶデータを統合的に分析することは不可能でした。クラスメソッドのサポートによってAWSへ基盤を移行してからは、店舗からリアルタイムにデータを収集できるようになりました。分析ツールについては開発当初の仕様で満足せず、サービス品質の向上に役立つデータを店舗に提供したいと時流に合わせたサービス検討や取り組みを進められています。
「スシローの店舗には今『回転すし総合管理システム』が入っていて、何が売れて、どれだけ廃棄されたか可視化されています。食材の原価が1日ごとに分かるので、ある程度、何をどうしたらいいのかという指標が立てられるます。昔から数字による分析というのはすごく大事にしてきました。本当に数字が“キモ”なので、そこがちょっとでも違えば、意味のない議論になってしまいますし、結果も全く違ったものになってしまいます。近年、数字の大事さというのはますます上がって来ていますね」(坂口さん)
分析基盤構築のほか、Webサービスのインフラ構築と運用に関しても継続的に改善を続けています。特に、開発当時から導入しご好評をいただいていたのが、持ち帰りすしの注文サービスや、スマートフォンアプリを用いた席予約サービスです。コロナ禍で接触や“密”を避けることが求められる中、これらのサービスに加え、セルフレジや自動土産ロッカーなどの取り組みも各メディアから注目されました。
「もともと“省人化”という課題に対して出来たサービスで、コロナ禍になったから取り組んだわけではありませんが、うまくタイミングがハマりました。AWSを採用したことで、柔軟なサービス提供、柔軟な拡張サービスができるようになりました。その時必要なサービスを追加してテスト、また次へという、迅速なプロジェクトの遂行が可能になるのは、クラウドだからこそだと思っています」(坂口さん)
AWSの機能を時流に合わせて使いこなし、アップデートも即時キャッチアップ
2021年4月にFOOD & LIFE COMPANIESへと社名変更があったため、コーポレートサイトの再構築をすることになった同社。ちょうど同年3月、利用に制約のあった大阪ローカルリージョンが拡張され、スタンダードな「AWSリージョン」として利用できるようになりました。
「これまでは、開発内容やタイミングの都合上、東京リージョンと北米リージョンの2つを利用してきました。サイトの再構築のことをクラスメソッドさんに伝えたところ、『ネットワーク的に近い大阪リージョンを使ったほうがレイテンシー改善、開発効率の向上が期待できますよ』とアドバイスをいただき、移行することにしました。クラスメソッドさんのサポートにより、スムーズに移行が完了しました」(坂口さん)
2020年から続くコロナ禍においては、データベースの更新が火急の課題として上がりました。利用していたデータベースは、クラスメソッドの提案する「Amazon Aurora」が採用されていました。Auroraは低料金で標準MySQLの5倍、標準PostgreSQLの2倍のスループットを実現するコストパフォーマンスの高いサービスです。それにも関わらず、2020年4月に緊急事態宣言が発令されて以来、急激に注文数が増加。急遽ゴールデンウィークまでに対策を取ることになりました。
「土日には数回データベースが落ちてしまう程の事態となったので、『どうしたら耐えられるようになると思いますか』と相談したところ、Amazon RDS リードレプリカを作って対応する方法をアドバイスいただき、“読み”はレプリカ側で行い、書込みだけメインのデータベースで対応するように1週間程度の大急ぎで作り変え、なんとか対応することができました」(坂口さん)
さらにコロナ禍に行った対策として、固定IPを必要とするオンラインキャッシュレス決済のAPIを利用するため、NATGatewayを導入してオートスケールで増加したサーバで利用できるようにしました。ネット注文の規模は凄まじい勢いでスケールし、今やサーバー数も夜中は10台程度ですが昼間は200台程に。年末年始などは600台程度まで増強できるような状態ですが、どんな状況でも決済に対応できるようになっています。
蓄積したデータを活用し、AI分析で食品廃棄減を目指す
ほかにも、海外店舗にて受け付けているアンケートサイトのアクセス状況の改善など、クラスメソッドの技術支援を行うアドバイザーから、細かなチューニングや新機能のご案内、ご提案を、適宜お伝えしています。
「AWSはかなり頻繁にアップデートがかかり、新機能も多く便利ですが、それについて行くのはなかなか大変なことです。クラスメソッドさんに相談すれば『最新の技術ではこういう機能が使えて、こういうことができるようになってますよ』と専門的なアドバイスが頂けるので、非常に助かっています。また非常に細かな部分まで詳細に見てくれて、問題や課題、よりよい方法を発見したときには、プロアクティブに提案してくれるのも嬉しいところ。運用管理も安心して任せることができます」(坂口さん)
現在のIT分野における取り組みについてお伺いすると、スシロー以外のCOMPANIESのIT化をしっかりサポートして、レベルを引き上げていくことを課題として挙げられました。また国内外で合計600店舗以上から集められた大量のデータを、今後は一元管理して、すぐに分析がしやすい基盤を構築していきたいと考えているとのこと。
「スシローでは月に約2回の販促キャンペーンや、名店の料理人と商品開発する『匠の一皿 PROJECT』など、日常的に“イレギュラー”なイベントが起こります。そのためか仕入れの予想が難しいようで、店長の経験値に頼っている現在は、最終的な食品廃棄量に各店舗大きな差が出てしまっています。せっかく昔からのデータベースがありますので、そのデータを活用し、適切な仕入れ量をある程度サジェスチョンしてくれるようなAIを作りたいと考えています。またその前段階として、商品部の契約の際にもこれらのデータを活用していきたいですね」(坂口さん)
「変えよう、毎日の美味しさを。広めよう、世界に喜びを。」を理念に、FOOD & LIFE COMPANIESが国内外に向けて提供する高品質なサービスを、これからもクラスメソッドは技術力で支えていきます。