和弘食品株式会社は、北海道の新鮮な食材をもとに業務用調味料を作り出す専門メーカーです。主な商品はクライアントそれぞれのオーダーメイドで作られる、スープやタレ等の液体調味料。50年間の歴史で作り出されたレシピは、実に10万点以上という膨大なものです。製麺会社やラーメン店への卸し販売の他、外食チェーン店のサイドメニュー対応や、スーパーやコンビニなどが注力しているオリジナルブランドの“中食”商材作り等にも尽力してきました。 2015年には更なる業容拡大と成長を目指し、米国カリフォルニア州に工場を設置。日本食レストランやラーメン店に対して販売活動をされています。
和弘食品では、この10万点を超えるレシピと経験を元に、お客様のプライベートブランド向けにほぼオーダーメイドで商品開発を行っています。実際に商品化されるものはもちろん、試作段階でも相当数の異なるレシピを作成するそうです。商品部の業務の大きな割合をこのレシピ作成業務が占めています。
レシピ作成業務では、膨大なデータ量の扱いと将来に向けたマルチデバイス対応などに課題を抱えていたといいます。これらの問題を解決するため、和弘食品ではWebアプリケーションへの移行とクラウド化を推進することを決定しました。
AWS利用の経緯と成果、そして導入に際してクラスメソッドがどのように貢献できたのかを、和弘食品 管理本部 IT活用推進室係長、兼経営企画室係長の鈴木秀明様と、商品部係長の久保裕嗣様に詳しくおうかがいしました。
数千種を数える原料、複雑な配合計算システム
「レシピ作成」は、原料の配合を調整し、味だけではなく顧客ニーズや品質保持など、様々な要素を考慮しながら商品を作り上げることです。原料の配合内容を記録し、各要素の計算結果と合わせて管理するツールとして、前年まで、Excelファイルを使用してきたといいます。
商品開発現場においてボトムアップで作られてきたExcelファイルは、和弘食品の長年のノウハウを集約・蓄積して膨れ上がりました。またファイル数も年間1万件にも及びます。
「“レシピ作成”では、味見に至る前に計算業務がとても多いんです。価格の計算はもちろんですが、時代に合わせて、複雑な計算を組み込んできました。いくら美味しいものが出来ても、お客様の要望に合っていないと製品化にはなりませんから。また将来、タブレットやスマホでも操作できるようになれば、場所も選ばず業務ができるし、営業からは依頼も直接入力してもらえるようになるでしょうから。」(久保さん)
レシピに組み込まれる原料点数は数千に及び、醤油だけでも何十種類という数があります。個々の原料情報は、塩分や、栄養成分はもちろん、アレルゲン情報など数十項目以上あります。商品化に向けて考慮すべき原材料費計算や、工場での歩留まりなど、あらゆる数値を計算し、管理する必要があります。
年々、複雑になっていくレシピにあわせてExcel表も複雑化していき、Excel表のメンテナンスが属人化していくおそれも出てきていたといいます。
業務上の課題に加え、データ管理の面からも課題がありました。1つ1つのレシピが別ファイルでの管理となっていたため、蓄積されたデータをデータベースとして利用しにくい状態でした。また、Excelファイルというシンプルなツールであるが故に、取り回しの容易さがある反面、機密情報の漏洩リスクも懸念されていました。
これらを改善するため、Webアプリケーション化と、クラウド環境でのインフラ構築のプロジェクトが開始されました。Webアプリケーションについてはコンサルティング会社に相談し開発を進める一方で、インフラのクラウド移行についても検討を行い最終的にAWSに決定したといいます。
自社構築を前提に、クラスメソッドをアドバイザーとして活用
「業務システムでクラウドサービスを使用するのは弊社では初めての事でした。AWS以外にも比較検討したのですが、初めてクラウドの構築・運用管理を行うことを考えると、情報量の豊富なAWSが適していると考えました。クラウドこそ初めてでしたが、Unix、Linuxの管理経験はありますので、AWSの構築もそれなりにできると思いました。」(鈴木さん)
クラウド導入は会社としても初めての試みであり、実験導入の意味合いもあったとのこと。「自分で手を動かしてみないと、今後どのような方面に活用できるか判断できない」と考えた鈴木さんは、設計・構築を丸投げするのではなく自社で行うことを決めたと言います。その上で、設計構築時に行き詰まった時の相談先としてクラスメソッドへご依頼をいただきました。
「まずは自分で構築してみたかったのですが、どこかで行き詰まる事態も想定しました。また、運用状況を把握するのが私だけとなるのは事業継続上のリスクになります。その様な状況で助言や情報共有をお願いできる関係先の確保が必要と考えました。IT業務に関わっている人であれば、クラスメソッドはどこかで耳にしたことのある企業だと思います。AWSでの導入実績が豊富で、構築や運用についての情報を積極的に開示していることも知っていましたし、幅広い案件を手掛けられていて、適切なアドバイスをもらえるだろうと期待がありました」(鈴木さん)
まずは「AWSとは何か」ということを学ぶところから始めたという鈴木さん。鈴木さんが作成した構築案について、クラスメソッドが助言をする形で進んだ実装作業は、実質2週間程度で終了したといいます。
「私が1番知りたかったのは、“アーキテクチャ設計のセオリー”がどんなものなのか、ということ。ただ単にAmazon EC2を立ち上げて終わりではなくて、可用性なども考えて設計する必要があると考えていました。クラスメソッドのエンジニアに、その視点でチェックしてもらえたのは助かりました。アドバイスを反映することで綺麗な設計になりましたし、すんなりとリリースまで持っていけましたので、とても満足しています」(鈴木さん)
Webアプリ化とクラウド導入により、オフィス内外での勤務やマルチデバイス対応を容易に
クラスメソッドは札幌に支社があり、和弘食品のコンサルティングを担当したエンジニアも札幌支社に勤務しています。東京だけでなく北海道にも支社があることは、クラスメソッドへ依頼いただくにあたり一つのポイントになったと語って頂きました。
「ITの勉強会などで札幌支社の方の顔を見知っていました。札幌に支社があるからこそ応援したいという気持ちもありましたね。実際の仕事はオンラインでしたが、レスポンスは非常に早くて全く支障はありませんでした。」(鈴木さん)
豊かな海と大地に育まれた魚介や畜産、野菜など、地場の恵みを最大限に生かした自社製造にこだわる和弘食品は、50年のノウハウの蓄積をより効率的にお客様にお届けできるよう、システム作りを含めた職場環境の改善等にも積極的に取り組んでおられます。
「社内システムについて、以前はオンプレミスで社内サーバ室に置いていましたが、現在はデータセンターへの移設を進めています。Windows OS対応や業務システム保守などの課題もありますが、可能なものからクラウド化を進めていきたいと考えています。コロナ禍により社外からの頻繁なアクセスが必要になり、個々人の作業環境が違う状況も発生しますが、Webアプリケーション化とクラウド導入によって、そうした状況に縛られない環境が用意できたのは、とても良かったと思っています」(鈴木さん)
社内には、まだまだシステム化に取り組みたい業務があるといいます。今回AWSを導入したことをきっかけに、クラウドを活用した業務環境構築へと踏み出した和弘食品。
クラスメソッドはAWSの導入支援を通して、これからも和弘食品の業務をサポートしていきます。