少数精鋭体制により、ゲーム開発のマネジメントに特化したビジネスを展開するサイカ・コレクティブ。現在、名だたるメーカーのゲームタイトルの開発を支援している同社では、国内、アジア、北米、欧州の開発パートナーとの間で、ゲーム開発にまつわる各種データの受け渡しが発生しています。同社は、複数のパートナーと大容量のデータをセキュアかつ効率的にやり取りするため、AWS Transfer Familyを活用したSFTPサーバーを構築しました。構築の経緯と、クラスメソッドの支援について、代表取締役の林さんおよび同社の住田さんにうかがいました。(※インタビューは2022年10月に収録)
小規模なテスト開発やバックアップで自社運用のSFTPサーバーが必要
サイカ・コレクティブは、ゲーム業界歴16年以上、大手ゲームメーカーのプロダクションマネジメントやクリエイティブマネジメントを歴任してきた林さんにより、2021年9月に設立されました。現在、大阪府大阪市に拠点を構え、ゲームの企画、開発およびこれらに関する投資並びに支援を行っています。クライアントには、有名ゲームメーカーが顔を揃え、誰もが知っている多くの人気タイトルの開発支援を手がけています。社員数は、2022年10月現在7名で、住田さんを始め、ゲーム開発マネジメントを主体とするプロジェクトマネジメント及び、開発マネジメントを中心としたメンバーで構成されています。
「クライアント各社のプロジェクトが持つ複雑な要件や要望に対して、私たちや国内外の適切なパートナーを組み込んだ開発体制を提案し、プロジェクトと一体化する形で運用管理するマネジメント体制を実現しています。会社の規模は大きくありませんが、すでに複数の大型案件を当社でマネジメントしている実績があります」(林さん)
クライアントのゲーム開発を支援するビジネスモデル上、開発で利用する各種サーバー類は、セキュリティ担保のためにクライアント先の環境を利用するのが原則です。開発パートナー各社とデータを受け渡しするためのFTPサーバーも同様で、クライアント先の環境を利用しています。しかし、クライアントの環境を利用する前提ではどうしても自由度が低くなり、セキュリティを重要視しないような小規模なプロジェクトやトライアルでの利用などではボトルネックとなっていました。そこで同社は、自社でのFTPサーバーの構築を検討します。
「現在、私たちは国内、アジア、北米、欧州のパートナー各社と共同でゲーム開発をしています。ゲーム開発では実稼働の前に、小規模環境で試してみたいといったケースがよくありますが、そのたびにクライアントにサーバー利用を申請していてはスピード感に欠けてしまうため、私たちの中で完結できるサーバー環境が必要でした。また、万が一の時に備えたバックアップ環境の必要性も感じていました」(林さん)
ゲーム開発会社向けにSFTPサーバーを構築した実績を評価
自社で利用するSFTPサーバーの構築を決断した同社は、クラウドサービスの活用を検討し、アマゾン ウェブ サービス(AWS)の採用を決定しました。
「クラウドに着目したのは拡張性の高さです。ゲームのデータは、3Dデータ、PSDデータなど大容量のものが多くを占めます。ゲームの量産体制に入ると大容量のデータを大量にやり取りすることになり、容量がすぐに不足してしまいます。その際に柔軟にリソースの拡張が容易にできるのがクラウドサービスです。その中でも、ダウンタイムが少ないこと、セキュリティが担保できることなどトータルに評価してAWSを採用しました」(林さん)
AWS選定後、AWSにSFTPサーバーについて相談したところ、ストレージサービスと連携したフルマネージドSFTPサービス「AWS Transfer Family」を紹介され、構築パートナーにはクラスメソッドを採用しました。
「クラスメソッドの選定の決め手は実績です。クラスメソッドは、ゲーム会社のSFTPサーバーをAWS Transfer Familyを用いて構築した実績があり(参考:クラスメソッドSNK様事例)、私たちの求める要件とぴったり合っていました。改めてクラスメソッドの営業担当やSEに話を聞いてみたところ、提案や説明の内容がわかりやすく、熱意を持って対応してくれたこともあり、信頼できるパートナーと判断しました」(住田さん)
セットアップ時において、イメージ図を駆使したクラスメソッドの説明が貢献
SFTPサーバーの構築プロジェクトは、2022年7月から9月の2カ月間で実施しました。環境としてはAWS Transfer Familyを軸にSFTPサーバーを1台構築し、データ格納用のバケット(Amazon S3)を1バケット作成しました。権限は、同社の管理者はすべてのフォルダーを参照・編集可能とし、パートナー各社はSSH鍵を用いてSFTPサーバーに接続して各々のフォルダーのみを参照・編集可能としています。ゲーム開発のプロジェクトが完了したフォルダーはアーカイブ化し、アーカイブ済みデータは読み取りがほとんど発生しないことを前提に、安価なインスタンスタイプに保管してコストの最適化を図っています。
セキュリティ強化を図るため、クラスメソッドメンバーズの新サービスである「セキュアアカウント発行サービス」を採用している点も注目に値します。セキュアアカウント発行サービスは、ユーザー側が責任を持って実施すべき設定を、クラスメソッドがベストプラクティスに沿ってあらかじめ適用することでユーザーの負荷を軽減し、高いセキュリティレベルでの運用を支援するものです。これにより、AWS上の操作証跡保管、Amazon S3のデフォルト公開禁止、設定ミスによるデータ公開の防止、AWS IAMのパスワードポリシー強化、脅威検出サービス有効化、セキュリティアラート通知などが実現しています。
同社にとって、クラウドやAWSの活用は今回が初めての経験でしたが、クラスメソッドの丁寧な導入サポートが役に立ったと評価しています。
「セットアップの中で、ルール設定は私たち自身でおこなう必要があり、最初は不安でいっぱいでした。その際、クラスメソッドのSEからわかりやすいイメージ図を用意していただき、全体の動きや概要を可視化して説明していたけたことで、セットアップはスムーズに進みました。また、SFTPサーバーの使い方を、後から参照がしやすいようにBacklog(SaaS型プロジェクト管理ツール)上にドキュメントとしてまとめていただいたことも助かりました。導入時の操作教育についても、SFTPサーバーの初心者に対して、権限設定や秘密鍵の作成方法などを詳しく教えていただき、スムーズに使えるようになりました」(住田さん)
運用負荷もかからずメンバーはゲーム開発に集中
SFTPサーバー構築から2カ月が経った2022年11月現在、AWS上のSFTPサーバーの利用実績はありません。今後、スピードが求められるゲーム開発案件などで、国内外のパートナー各社に対して、ゲームキャラクターのデザイン、資料などのリファレンスデータを受け渡したり、パートナーから納品データを受け取ったりする際に利用する予定です。当初の計画どおり、ゲームデータのバックアップ用途などでもSFTPサーバーの活用を予定しています。
「SFTPサーバーやストレージのセットアップ自体は終了していますので、データの受け渡しやバックアップなどでいつでも利用できる安心感はあります。クライアントから新たなゲーム開発プロジェクトの打診があった際も、すぐに着手できる環境が整っているので、タイムラグなくスピーディに開発を進めることができます」(林さん)
クラウドサービスなら、構築が終わっても利用しなければ料金はかかりません。フルマネージド型のAWS Transfer Familyは、容量の拡張などで運用負荷もかからず、同社のメンバーはゲーム開発のみに集中できる点もメリットです。環境自体もこれまでのクライアント先のSFTPサーバー環境と変わらず、新たな業務負荷が発生することもありません。
同社は今後、クライアント先のサーバー環境から徐々に自社環境にシフトしていく考えで、AWSの活用領域の拡大を視野に入れています。
「そのためにもリアルタイム監視の導入や、保守性の向上に向けた新たな施策が必要になります。必要な投資は継続的に進めていきますので、その際は引き続きクラスメソッドに相談させていただければと思います」(林さん)
ゲーム開発のマネジメントと並行しながら、ゆくゆくは自社レーベルのインディーゲームも開発してみたいというサイカ・コレクティブ。クラスメソッドは、ビジネスの拡大にともなう多様なニーズに対しても支援を続けてまいります。