通信カラオケ「JOYSOUND」シリーズを展開する株式会社エクシング。業務用カラオケ事業のほかアプリ・家庭用ゲーム機と連動する家庭用カラオケの提供、店舗事業・ヘルスケア事業に至るまで多彩なビジネスを展開しています。
AWS利用を進める同社ですが、近年は社内体制面の強化にも力を注いでおり、横断的に知見やリソースを底上げしてクラウド活用を確実にするCCoE(CloudCenter of Excelence)の構築を視野に入れた社内ガイドライン策定に乗り出しました。
2020年からアプリ開発などで同社に技術支援を行っているクラスメソッドは、AWSトレーニングをはじめとする“ガイドライン作成支援”という形でCCoEの足がかりとなるような技術支援に努めました。同社ITシステム部 基盤戦略グループ グループ長の中根信晃様、またトレーニングを受講された同部署 御室幸彦様、朝倉祐司様にお話を伺いました。
成長とともに見えたAWS活用面の課題
エクシングの提供するサービスインフラとして、AWSは幅広く採用されています。モバイル、Web、家庭用サービス向け楽曲検索共通APIシステムやWebカラオケのサービスインフラとしては5年以上にわたりEC2およびRDSなどを運用。ほかにもライブストリーミングサービスの配信基盤にCloudFrontやAmazon Media Serviciesを採用し、2022年には社内システムをオンプレからクラウド移行を行うなど幅は広がるばかりです。
当初は各部門の責任の範囲のままクラウド利用を拡大してきましたが、利用開始から5年が経過してAWSアカウント数が40近くまで増加する頃、運用の課題を感じ始めました。アカウントの権限管理が整備されていないことによるヒヤリハットが散見され、時にはインシデントにつながったこともありました。また、新サービスへの情報キャッチアップ不足により、余計なコストが発生してしまうこともあったといいます。
活動リソースは1人あたり年間256時間とし、活動曜日などをあらかじめ抑え、本活動の成果をグループの正式な目標に組み入れるなど、改善推進活動が進み続ける工夫をされたといいます。さらに、この活動にとって必要と考えたのが「CCoEメンバーの知識の底上げ」「クラウド利用ガイドラインの作成」「情報の収集と提供・教育の実行」の3点でした。
「専門的な支援を受けた方が早くて確実なため、以前からお付き合いのあったクラスメソッドさんに支援を頂けないかと相談しました。コロナ禍という厳しい状況下で、潤沢な予算があるわけではなかったのですが、その中でどこまで支援できるかも含めてご相談しました」(中根さん)
エクシングの目指すところに対し、クラスメソッドはまず網羅的な知識とセキュリティ知識について底上げすることを提案。AWSトレーニングサービス「Architecting on AWS」と「Security Engineering on AWS」の各3日間のプログラムを提案したほか、ガイドライン作成に際してもアドバイザーとして採用いただきました。
AWSトレーニング受講が効果に結実
今回、同社のITシステム部から2名のメンバーがクラスメソッド提供のAWSトレーニングを受講しました。朝倉さんは「自分の中で疑問に思っていた箇所について、理解を深めることができました」と確かな効果を実感しています。
また、AWS認定資格の取得を会社として奨励していることもあり、受講後すぐに試験を合格されたという結果にもつながったそうです。同じくトレーニングを受講した御室さんからも前向きなフィードバックを頂戴しています。
「合間の時間を見つけて自分で調べたり、カンファレンスのセッション等で部分的に知識を学んできたところを、3日間集中的に取り組めたことで、理解が曖昧だったところを改めて学ぶことができました。特にセキュリティ関連でIAMロールに苦手意識があったのですが、体系的に学べたことでIAM全般の知識を深められました」(御室さん)
お二人の受講については中根さんからも「副次的な効果ですが、他社の同職の方とも課題を共有し語り合う機会が二人の刺激になり、モチベーションがアップしたようで良かったと思いました」というご評価を頂きました。
クラスメソッドの知見をドキュメントとして提供
トレーニング実施後には、受講者の2人を推進役として、エクシングの運用に合わせたクラウド利用ガイドライン作成に入りました。しかしゼロからの作成は難しく、抜け漏れも懸念されます。そこでクラスメソッドからはガイドラインのテンプレートとなるようなドキュメントのパッケージ「Classmethod Cloud Guidebook」を提供させていただきました。
「テンプレートをご提供いただいたことで、道に迷うことなく作成を進められました。我々が目指すガイドラインに必要な項目を選び、定義すべき項目は社内の運用に合わせてテンプレートを肉付けしていきました。そして社内で一度書いてからレビューし、クラスメソッドにもレビューをお願いし、必要な部分は加筆修正するプロセスで進めました」(中根さん)
今回同社がガイドラインのテンプレートとして参照した「Classmethod Cloud Guidebook」は、クラスメソッドのAWS総合支援サービス「クラスメソッドメンバーズ」のお客様に向け提供を開始しました。ガイドライン策定をはじめとするAWS利活用でお困りの担当者様はぜひ活用ください。
AWSガイドライン作成後も継続的に支援
ガイドライン作成後は、仕組みで制限をかけられそうな要素を抜き出してToDoリストを作成。設定をAWS CloudFormation StackSetsにて実装し、自動化を進めています。ガイドラインといえど文書を作って終わりではなく、それに合わせて仕組みから変えることで、誰もがガイドラインを自動的に守ることができます。この実装についても、技術アドバイザーとしてクラスメソッドから支援を行いました。
「オンプレ時代は、安定運用しているシステムは“なるべくそっとしておく”のが基本で、ファームウェアのバージョンアップや脆弱性対応などを求められるのみでした。クラウドサービスはどんどん安価で高性能なインスタンスクラスやサービスが出現するため、定期的に見直さないと損をしたり、不適切な構成になってしまいます。常に先の開発に邁進している開発現場が、この情報のキャッチアップを常時する余裕はなかなかありません。そこでCCoEの出番というわけです」(中根さん)