日本郵政インフォメーションテクノロジー(JPiT)は、日本郵政グループのICT機能を担う情報システム会社です。まだオンプレミスが主流の日本郵政グループ内において、クラウド化を推進しようと業務にAWSを積極的に活用しています。そんな同社では、クラスメソッドのグループ会社・プロパゲートが運営するDevelopersIO BASECAMP for Biz(以下、デベキャンBiz)を2024年に受講しました。
今回は同社の上田さんと三井さん、そして実際にデベキャンBizを受講した方々に支援の導入理由、受講中の感想や効果、クラスメソッドの支援体制まで話を伺いました。
座学だけでなく、実務経験を通して成長してほしい
JPiTは、日本郵政グループが共通で利用するITインフラやアプリケーションの開発や運用保守を中心とした業務を行っています。具体的には「ネットワーク・PC基盤に関する開発と運用保守」「人事・会計システムの開発と運用保守」「グループクラウドサービスの開発と運用保守」「日本郵政グループのシステム環境構築に関する支援」などを担っています。
また、クラウドシステムの活用推進と安定運用を通じた業務の効率化・円滑化に寄与すべく、同社は日本郵政グループ各社が利用するオンプレミスのシステム基盤をPaaSとして提供する取り組みも行っています。そして、2024年からはクラウド化をさらに推進していくため、AWSを利用してグループ各社が利用できるクラウドの共通基盤構築を進めています。
同社が率先してAWSの知見を蓄積していくのは、共通基盤にグループ各社が使用するアプリを載せるだけが目的ではありません。グループ各社に対して、AWSによるインフラ構築方法や使い方なども技術支援していきたいというねらいもあります。
しかし、日本郵政グループでは、圧倒的にオンプレミスのシステムを活用する企業が多いため、JPiTのエンジニアもオンプレミスの知見をもつ方が多いのが現状でした。そこで、若手社員を中心にAWSの知見・ノウハウなどを身に付けてもらおうと資格取得などを推奨していますが、従来のインプット方法では限界を感じていたと上田さんが振り返ります。
「資格取得を通じてAWSの理解や活用方法は学びましたが、実際に提案から要件定義・設計まで一連のプロセスを経験する必要はあるだろうと考えていました。グループ内の共通基盤に関しても、すでに導入が決定しているお客様がいる状況でしたので、初心者がいきなり対応するのはハードルが高い。そこで、若手社員たちに実務経験を積ませてあげられないかと悩んでいました」(上田さん)
発注元との要件ヒアリングから設計まで一通りロールプレイできるのが魅力
デベキャンBizは、業務役割ごとに「AWS構築」「AWS設計」「要件ヒアリング」の3つのコースを用意しています。期間は2〜3週間、実務に則したロールプレイを通じて、プロパゲートのエンジニアの要件に従って、システム開発の準備や資料作成に取り組みます。
支援の特徴としては、受講生のサポート役にメンターがつく点が挙げられます。これにより課題の進め方や進捗状況などの相談に乗り、受講生はモチベーションを維持しながら課題に取り組むことができます。メンターは案件経験が豊富なベテランエンジニアが担当します。
JPiTは、2024年9月〜11月に「AWS設計」と「要件ヒアリング」の2コースについて、計6名が受講しました。三井さんは、他社のAWSトレーニングサービスが多数ある中、デベキャンBizの導入の決め手について、三井さんは以下のように話します。
「AWSを活用したプロジェクトについて、要件ヒアリングの段階から設計まで一通りシミュレーションを通して体験できるのは非常に魅力的だと感じました。スキルの習得だけでなく、実践を通して得られる経験値は測り知れません」(三井さん)

「AWSの資格取得については会社の支援もあり、積極的に勉強していました。しかし、資格取得では、座学の部分しか学べません。実践の機会が自分でも欲しいなと思っていた矢先、今回のお話をいただきました。実際の顧客を想定したエンジニアとの要件ヒアリング、それを基にした設計と、実際の業務に近いロールプレイとあって、座学では得られない経験ができそうだという期待感はかなりありました」(野崎さん)
メンターのきめ細かいサポートが受講生のモチベーション維持につながる

「座学や資格勉強で身につけた知見やノウハウについて、デベキャンBizを通じて答え合わせができました。実際に手を動かすことで、誤って覚えていた知識があったのも確認できたので、それが分かって自信につながりました」(天間さん)
また、メンターの存在も受講中のモチベーション維持などに繋がったと若手社員は口々に言います。
「抽象的な質問であっても、その意図を汲み取ってくれて、事例を通して分かりやすく説明してもらいました。Backlogで回答をもらっていたのですが、文章は読みやすく、参考になる補足資料も添付してくれていたので理解をさらに深められました。また、参加メンバーはそれぞれ現況の仕事を抱えながらの受講でしたが、メンターの存在に助けられて、みんなやり通せました」(天間さん)

「受講終了後に、成果物をメンターの方に褒められました。この経験は、自信につながっています。AWSの設計書に関して、自分なりに色々調べたりしながら作成したので、それを最前線で活躍しているベテランエンジニアの方から太鼓判を押してもらえてうれしかったです」(武藤さん)
効果的なヒアリング方法や実務に則したフィードバック
受講生の井口さんは、すでにAWSで共通基盤を構築するプロジェクトに主担当として取り組んでいました。本プロジェクトでは、既存の基盤と新規で作ったAWSの要件を一致させることにフォーカスしており、ヒアリングの必要はありませんでした。そのため、デベキャンBizの経験は「今後の糧になった」と振り返ります。

確かに、IT部門のない事業会社などと取引する際は、ヒアリング段階で相手が話しやすい質問の方法が必要です。井口さんはメンターの指導により、いきなり具体的なパラメータの数値を聞くのではなく、「利用人数から聞く」など、相手が答えやすいような質問を行うよう工夫しました。
受講終了後は、プロパゲートのエンジニアから成果物や取り組み内容から、フィードバックを受けます。野崎さんは、フィードバックから得られたことについて、以下のように話します。
「よいところはもちろん、課題となる部分も教えてもらえたので、今後のAWSを活用した業務で活かせると実感しています」(野崎さん)
さらに参加人数を増やしてデベキャンBiz受講へ
今回の受講を通じて「社員たちの成長を感じた」と上田さんも力を込めます。
「資格勉強など座学しか経験していないと、自信を持って話せず、自分が作った資料に対しても一辺倒な回答になってしまいます。今回のデベキャンBizで自分なりに考え、悩みながら設計書を作ったことで、質問に対して『おっ!』という回答を返すようになりました。一皮向けた印象をもちました」(上田さん)
現在開発中のクラウド共通基盤は、2025年7月のリリースを予定しています。すでに活用が決定しているグループ企業が複数社あり、最終的には2年間で約30のアプリを載せる予定です。また、今後AWS費用のコスト削減などを期待し、クラスメソッドメンバーズの導入も検討しています。
デベキャンBizに関しては、2025年4月以降に今回のメンバーだけでなく、参加人数も増やして受講する予定だといいます。
「現在新入社員向けに、ウォータフォール型のプロジェクトについてロールプレイで外部研修を行っています。それと同じように、デベキャンBizも必須研修にしていけたらいいですね」(上田さん)
郵政グループ全体のクラウドを推進し、各社の業務効率化に寄与するJPiT。クラスメソッドグループは、今後も同社の挑戦を技術的な支援を通じてサポートしていきます。