業務用プロジェクターおよびディスプレイ事業を展開するパナソニックプロジェクター&ディスプレイ株式会社。プロジェクションマッピングに使用される大型機器から企業向けディスプレイまで、BtoB市場で幅広い製品を提供しています。
同社のカスタマーサポートセンターは、年間約8,000件の問い合わせに4名体制で対応。販売店からの技術相談や設置現場からの緊急問い合わせなど、高度な専門知識が求められるため、外部委託せず社員が一貫して担う体制を築いてきました。
しかし、長年使用してきたオンプレミス型PBXの老朽化や、データ活用の限界といった課題に直面。2025年、クラスメソッドの支援のもとAmazon Connectを導入し、さらに生成AIによるオペレーター評価機能の実装にも着手しています。DX室長の佐藤さん、コールセンター係長の執行さんに、プロジェクトの背景と今後の展望をうかがいます。
18年分の録音データが示したオンプレPBXの限界
パナソニックプロジェクター&ディスプレイのカスタマーサポートセンターには、技術的な問い合わせが数多く寄せられます。その約半数は、同社製品を取り扱う販売代理店から。製品の仕様確認やトラブル対応など、専門知識がなければ答えられない内容ばかりです。「販売代理店の方からのお電話は、お客様先で設置作業をしている最中であることも珍しくありません。目の前にお客様がいらっしゃる状況ですから、私たちがすぐに答えをお伝えできなければ、販売代理店の方の信頼にも関わります」(執行さん)
対応には深い製品知識が不可欠なため、外部委託は困難。4名の社員がオペレーター業務からFAQ作成、サポートツールの開発まで一貫して担当しています。現場の声を直接知る社員だからこそ、的確なFAQやサポートツールが作れるという強みがありました。
しかし、10年以上使用してきたオンプレミス型PBXは限界を迎えていました。
「固定電話なので、出社しなければ電話が取れません。平日9時から17時半まで、必ず誰かがオフィスにいなければならず、在宅勤務も実現できませんでした」(執行さん)
2024年4月、佐藤さんがDX室長として着任。過去の通話データを活用しようと録音記録を確認したところ、18年分のデータがSDカードに保存されていました。膨大な音声ファイルから必要なデータを探し出すのは困難で、分析に活用するには程遠い状態。ベテラン社員の退職も控えるなか、「このままではノウハウが失われてしまう」という危機感がありました。「せっかく生成AIでデータを活用できる時代になったのに、当社の録音データは音声のまま眠っている。テキスト化して、FAQの改善や課題の可視化に使える基盤を作りたいと思いました」(佐藤さん)
リモートワークへの対応、データ活用基盤の構築、ノウハウの継承——。これらの課題を解決するため、同社はコールセンターのクラウド化を決断しました。
20万円で「スタートパッケージ for Amazon Connect」を導入
コールセンターのクラウド化を検討するにあたり、佐藤さんはパナソニックグループ内でAmazon Connectを導入している部署にヒアリングを重ね、各種セミナーにも足を運びました。
「AWSは以前から馴染みがあったので、Amazon Connectというサービスがあることは知っていました。他にもいろいろな選択肢を比較検討しましたが、結局これがスタンダードだろうと感じました。」(佐藤さん)
複数のベンダーに相談したものの、導入に数ヶ月かかるうえ費用も高額になるとの回答が続きました。将来的な他システムとの連携を見据えると、拡張性に制約があることも懸念材料でした。そんななか、インターネット検索でクラスメソッドを見つけ、問い合わせました。
クラスメソッドが提案したのは「スタートパッケージ for Amazon Connect」。予めパッケージ化されたクラウドコンタクトセンター環境一式を、20万円(税別)・2週間で提供するサービスです。通話機能、コンタクトフロー、通話録音、Contact Lensによる文字起こし・感情分析など必要な機能を標準搭載し、操作レクチャーも含まれています。
「他社と比較して、かなり安価な提案でした。正直なところ、最初は『大丈夫だろうか』という思いもありましたが、話を聞いてみると『これなら使えそうだ』という納得感がありました」(佐藤さん)
基本機能はすぐに使える状態で提供され、導入後は自社の運用に合わせてカスタマイズしていく前提。まずは小さく始めて試してみたいという同社のニーズに合致していました。2025年1月にクラスメソッドへ問い合わせ、同年3月には導入完了。わずか約2ヶ月でクラウド化を実現しました。
コーディング未経験の係長が1ヶ月でコンタクトフローを構築
導入後、実際の運用に向けた設定作業を担ったのは、コールセンター係長の執行さん。これまでコードを書いた経験はありませんが、自らコンタクトフローの構築に取り組みました。
コンタクトフローとは、電話がかかってきた際の振り分けや音声ガイダンスの流れを定義する仕組みです。同社では複数のフリーダイヤルを商材ごとに使い分けているため、それぞれに合わせたフローを作成する必要がありました。
「最初は不安でしたよ。でも、クラスメソッドのレクチャーで基本的な操作を教わり、わからない点は質問すれば親身に答えてもらえました。ブログ記事も参考にしながら触っていくうちに、思った以上に自分でもできることがわかってきたのです」(執行さん)
クラスメソッドが運営する技術ブログ「DevelopersIO」には、Amazon Connectの設定手順や新機能の解説をはじめ、関連記事が豊富に掲載されています。執行さんはこれらの記事を手順書代わりに活用し、ひとつひとつ設定を進めていきました。その後は約1ヶ月で設定作業を完了し、オペレーターへのレクチャー期間を経て、3ヶ月目から本格運用を開始。導入から9ヶ月が経過した現在、システムは安定稼働を続けています。
「自分で設定を変えられるメリットが本当に大きいです。オンプレの時代は、ちょっとした変更でも業者に依頼して、見積もりをもらって、作業は2週間後…という流れでした。今は気づいたその場で直せます」(執行さん)
現場の課題を最もよく知る担当者が、自らシステムを改善できる。クラウドならではの柔軟性が、少人数体制のコールセンター運営を支えています。
台風の日も止まらないコールセンターが実現
導入から9ヶ月、Amazon Connectは安定した運用を続けています。オペレーターはオフィスの固定電話ではなく、パソコンとヘッドセットを使って電話対応を行う形に。インターネット環境さえあれば、場所を問わず業務ができるようになりました。
「この9ヶ月の間に台風が来て、電車が止まったことがありました。以前なら、コールセンターを閉めて自動音声に切り替えるしかありませんでした。でも今回は、全員が自宅から電話を取ることができました」(執行さん)
天候に左右されず対応を継続できる体制は、顧客満足度の維持に直結します。オペレーターからの反応も好意的でした。
「『まさか、在宅で電話が取れるようになるとは思っていなかった』とみんな喜んでくれています。働き方の選択肢が広がったことは、チームにとって大きな変化です」(執行さん)
もう一つ、現場で重宝されているのがモニタリング機能です。スーパーバイザーの権限があれば、オペレーターの通話をリアルタイムで聞くことができます。
「新人が電話を取っている時、以前はそばで聞き耳を立てるか、保留にしてもらって相談を受けるしかありませんでした。今はお客様とのやり取りを一緒に聞きながら、必要な情報を調べて即座にサポートできます」(執行さん)
お客様の声のトーンや温度感もリアルタイムで把握できるため、状況に応じた的確なフォローが可能に。少人数で専門性の高い対応を求められるチームにとって、この機能は新人育成とサービス品質の両面で欠かせないものになっています。
セミナー参加から生まれた生成AI評価への挑戦
Amazon Connect導入後、執行さんはクラスメソッドが開催するセミナーに積極的に参加するようになりました。クラスメソッドでは、Amazon Connectの導入企業向けに無料のハンズオンセミナーや新機能紹介セミナーを定期的に開催しています。なかでも印象に残っているのは、実際に手を動かしながら学べるハンズオンセミナーでした。
「導入手順をひとつひとつ確認しながら実際に設定できるので、資料を持ち帰って自社の環境に置き換えて理解することができました」(執行さん)
東京で開催されたセミナーには、大阪から足を運ぶことも。そんななか、あるセミナーで紹介された機能が執行さんの目に留まります。生成AIアシスタントであるAmazon Q in Connectを活用したオペレーター評価機能でした。
「これは入れたい、とその場で思いました。まさに、普段から感じていた課題を解決できる機能だったのです」(執行さん)
同社ではこれまで、オペレーターの応対品質評価を年に1回、パナソニックグループ内の専門部署に依頼していました。しかし、評価対象はオペレーター自身が選んだ音声データに限られるため、本当の課題が見えにくい構造。また、年1回の評価は点数化ののち比較されるため、評価する側もされる側もプレッシャーを感じていました。
生成AIによる評価機能なら、年間8,000件の通話すべてを自動で評価できます。オペレーターはいつでも自分の対応を振り返ることができますし、AIが一律に判定するため評価のばらつきもありません。執行さんが特に注目しているのは、方言やフィラー(「えー」「あのー」などの言い淀み)の検出です。
「全国のお客様に対応するので、聞き取りやすい言葉を使うことは大切です。でも、癖の中には自分では気づきにくいものもある。全件評価で可視化されれば、オペレーターひとりひとりの新しい気づきにつながると思います」(執行さん)
導入のハードルを下げたのは、次世代Amazon Connectの料金体系でした。旧世代よりも通話音声使用料は若干上がるものの、Amazon Q in Connectや会話分析ツールのContact Lensの料金がバンドルされるため、生成AI機能をコスト効率よく活用できます。同社の場合、月額約20ドルのコスト増で生成AIによる評価機能が利用可能になる計算でした。
こうして2025年10月、生成AIパフォーマンス評価機能の導入を正式に決定。現在、クラスメソッドの支援のもと実装を進めています。
クラスメソッドとの伴走で最新機能をすぐに反映できる体制へ
評価機能の実装が完了すれば、次のステップも見えてきます。執行さんが視野に入れているのは、Amazon Q in Connectのオペレーター支援機能。通話中の会話内容をAIがリアルタイムで分析し、取扱説明書や仕様書から最適な回答を提案してくれる機能です。
「ベテランと新人は持っている情報に差があるため、回答の質に差が出てしまうのはどのコールセンターでも共通の課題だと思います。情報不足を補うようにAIが回答を提案してくれれば、属人化の解消につながると期待しています」(執行さん)
クラスメソッドへの期待について、佐藤さんはこう語ります。
「AWSの機能は日々アップデートされています。新しい機能が出たらすぐに反映できる体制でいたい。クラスメソッドには、私たちだけではキャッチアップできない最新情報の提案もしてもらえることを期待しています」(佐藤さん)
実際、2025年12月に開催されたAWSの年次カンファレンス「AWS re:Invent 2025」では、Amazon Connectに関する多数のアップデートが発表されました。コンタクトフローの動作をシミュレーションできるテスト機能や、生成AIの精度向上など、今後の運用に活かせる機能が追加されています。クラスメソッドでは現地で参加したエンジニアがこうした最新情報をいち早くキャッチアップし、お客様への提案に生かしています。
「スタートパッケージ for Amazon Connect」から始まった両社の関係は、セミナー参加や定期的な情報交換を経て、継続的なパートナーシップへと発展しました。クラスメソッドは、パナソニックプロジェクター&ディスプレイのコンタクトセンターDXをこれからも支援してまいります。


