産業プラント建設はノンコア業務の効率化が急務
東洋エンジニアリングは、エネルギーや石油化学・肥料、資源開発などの各種産業プラントの建設において、設計(Engineering)・調達(Procurement)・工事(Construction)の全フェーズを一括して請け負う総合エンジニアリング事業者です。1961年の創業以来、50以上の国・地域で数千件のプロジェクトを遂行してきました。
特に尿素プラントは、当初から取り組んできたビジネスの1つです。尿素合成技術「ACES21」をはじめ、複数の関連技術を自社開発し、ライセンサーとして世界へ技術を供与しています。エチレンプラントでも世界有数の建設実績を持ち、大規模な設備も数多く手がけています。
長年のノウハウ・経験を生かし、各種発電(バイオマス含む)、水処理、製薬といった多様な分野の設備を建設するほか、製造・物流分野のシステム改革・業務改革なども幅広くサポートしてきました。
「産業プラントはその性質上、設計・調達・工事の各フェーズで条件や状況が異なるため、プロジェクトを1つ1つ手作りし、長期間にわたって確実にコントロールしていく必要があります。また、多数の海外拠点で現地のエンジニアや作業員を雇用し、的確にサポートしていかなければなりません。そうして培ってきたプロジェクトマネジメント力は、当社の強みの1つです」とIT企画管理本部 ITサービス部 齊藤隼太郎様は述べています。
数百万個の部品1つ1つが格納された巨大なデータベース
プラントの建設プロジェクトを推進する際には、膨大な量のデータを取り扱います。部品の1つ1つ、人員の1人1人を細かに管理しなければなりません。これまで東洋エンジニアリングでは、そうした細々とした管理をExcelやAccessを利用して行っていました。本社の管理業務担当者から現場のエンジニアまで、多くのスタッフがExcelを活用していますが、あまり効率がよいとは言えませんでした。
エンジニアリング・技術統括本部 DXエンジニアリング部 エンジニアリングICTチーム シニアエンジニアの土屋大輔様も、ExcelやAccessを用いた業務で悩んでいたスタッフの1人です。DXエンジニアリング部では、プラント建設に関連する部品の3Dデータを取り扱っており、プロジェクトの依頼に応じて、データを基にレポートを作成することもあります。
「プラントの部品は、数百万個に及び、その細かな部品1つ1つに至るまで3D CAD内にデータ化されています。1つのプロジェクトの3Dデータベース内には数万以上のテーブルがあり、その各テーブルには数万〜数百万のレコードが格納されているという膨大なものです。それらのデータベースから、プロジェクトごとに必要に応じてデータを抽出するために、数十個のテーブルをSQLで結合してCSVファイルへ出力し、その後ExcelやAccessで加工していました。これまで作成したSQLは数百種類にも及びますが、データを抽出するだけでも長時間かかり、その後の加工も含めて大きな作業負担を感じていました」(土屋様)
全社的なデジタルトランスフォーメーションの取り組みの中で、こうした業務負荷を軽減するため、東洋エンジニアリングが注目したのが「Alteryx」です。市場に登場し始めたBIツールの情報を収集していたところでAlteryxに出会い、既存の課題解決に活用できると考えました。国内で積極的にAlteryxを取り扱っている事業者としてクラスメソッドに相談し、まずはDXエンジニアリング部を中心にトライアルを開始しました。
Alteryxのワークフローならミスやトラブルも抑制できる
土屋様は、すぐにAlteryxの利点に気づきました。従来は3Dデータベースから必要なデータを抽出する際に、レポート種類別にSQL作成が必要でしたが、Alteryxを用いると、複雑な条件処理がAlteryxで容易に行えるので、SQLの種類を大幅に減らすことができ、趣旨の異なる複数のレポートも同時に作成する事ができました。SQLとExcelで長時間かかっていた作業が、たった数十秒で完了してしまいます。
2018年4月にAlteryxの利用を開始した土屋様は、2018年9月時点ですでに数百種類ものワークフローを作成し、さまざまなレポーティングに役立てているそうです。
例えば設計品質管理(QC)の領域では、複数のデータベースを照合して整合性をチェックするという業務が発生します。Alteryxはこの作業に長けており、結果の検査に長時間かかっていた作業を大幅に短縮できました。
「Alteryxは、ワークフローの作り方を覚えれば利用は非常に簡単で、Excelに代わる普段づかいのできるツールです。Excelに比べて10~30倍、Accessと比べて5~10倍もの業務効率が図れると試算しています。これまではデータが大きすぎてExcelの関数が実質的に使えないなどという場面もありましたが、Alteryxであれば、そうした不可能だった分析も実現できると考えています」(土屋様)
工事本部 工事技術部 シニアエンジニアの篠﨑泰明様も、Alteryxに大きな興味を抱いているスタッフの一人で、同部も積極的に導入に向けて活動しているそうです。
工事の領域でも、膨大な設計情報などを取り扱っています。1つの案件で数万〜数十万行ものシートを作成・集計する必要があるうえ、プロジェクトごとにフォーマットが異なります。またデータが大きいため、ちょっとした変更作業でも数日間かかっていたそうです。
「Alteryxならば、フォーマットが異なっていても簡単にその差を吸収してくれますし、膨大なデータもすばやく扱えるため、作業負担は数分の1に抑えられます。またワークフローとして作成するためデータのつながりや流れがわかり、ミス・トラブルの軽減や属人化の抑制も図れると期待しています」(篠﨑様)
クラスメソッドのサポートで全社にAlteryxを広めたい
土屋様は、全社的にAlteryxを活用することで、非コア業務を削減できると考えています。そこでクラスメソッドのサポートを受け、Alteryxの利用方法や業務効率化のメリットを伝えるワークショップを開催しました。篠崎様の工事本部をはじめ、興味を持ってくれた担当者も多く、まずは標準化を進めてより多くの部門に広めていきたい意向です。
篠﨑様は、工事現場での活用を広めたいと考えており、現場で活躍する多国籍のエンジニアに対するレクチャーが必要だと考えています。そこでクラスメソッドと米アルタリクスのサポートを活用して、英語のオンラインセミナーを開催する計画です。
「クラスメソッドは、問い合わせに対するレスポンスもよく回答も的確で、技術力に優れた信頼できるパートナーだと考えています。Alteryxは、プロジェクトどうしのサマリー情報を比較するなど、経営陣が必要とするデータ分析にも活用できるツールです。そうした両者のメリットを全社に伝えて、トランスフォーメーションを推進していきたいと考えています」(齊藤様)