2000年に設立したジャパンネット銀行は日本発のインターネット銀行として、インターネットオークションやネットショッピングでの決済をはじめ、先駆的な挑戦を続けてきました。2021年にPayPay銀行に商号を変更し、これまでの業務を引き継ぎつつ、新たなスタートを切りました。
PayPay銀行はインターネットやスマートフォンを通じた、画期的なサービスが充実しているのが強みです。銀行口座があればPayPayをはじめとして、Google PayやLINE Payなど各種キャッシュレス決済へ簡単にチャージができて、デビット機能付きのキャッシュカードも提供されます。提供するサービスは給与受取やカードローン、住宅ローン、外貨預金、投資信託のほかにも、スポーツくじや宝くじなども揃えているのが特徴です。
そうした多彩なサービスを提供する上で、お客様との重要な接点の1つとなるのがコンタクトセンターです。PayPay銀行ではオンプレミスのコンタクトセンターシステムを利用していましたが、2022年にAWSのクラウドコンタクトセンター「Amazon Connect」へと基盤を刷新しました。どのような理由や経緯で移行したのかを同社 CX統括部 CX推進グループの小林さんと烏山さん、開発四部の久保さんにお話をうかがいました。
変更が頻繁に生じるコンタクトセンター業務をスピーディーに対応
PayPay銀行では自社専用のコンタクトセンターにて、約450名ものオペレーターが業務にあたっています。預金やローンなどサービスごとに受付の電話番号が分かれていますが、入電はすべて同コンタクトセンター内で振り分けて対応します。他にも問い合わせ窓口としてテキストベースのチャットチャンネルも併用するようになり、電話対応のオペレーターがチャット対応を行うこともあります。
運用上の特徴として、業務拡大に応じてコンタクトセンター内で担当の振り分けやレイアウト変更(席替え)が頻繁に生じていることが挙げられます。それまでは電話回線や電話機など、物理的な設備を使用していました。そのため、レイアウト変更や増員があると電話機の調達や配線工事、ライセンスの手配など手間と時間がかかるのが課題でした。
システムのライセンス更新を前に、PayPay銀行では設備の保守の手間が少なく、ライセンスを柔軟に増減できるように、クラウド型のコンタクトセンターサービスを前提に比較検討を進めました。その選考過程で重視したのが運用状態やレポートの可視性です。
クラウド型コンタクトセンターと組み合わせて使う分析管理サービスを比較検討する中で、要件にマッチするサービスを見つけました。そのサービスがAmazon Connectに対応しており、本案件でのAmazon Connect採用が決まりました。
小林さんは「当初からAmazon Connectは有力候補でしたが、顧客管理システムや分析管理サービスとの親和性やコストで慎重に検討を進めていました。分析管理サービスで『これだ』と思えるものを見出せたのが決定打となり、Amazon Connectに決めました」と言います。
Amazon Connectに決めた後、導入パートナーの選定に入りました。AWSの知識や実績があるのを前提に選定を進めていたところ、想定外の条件が加わることになりました。もともとは既存環境をAmazon Connectにリプレイスするだけでしたが、急きょ新たなコンタクトセンターの追加立ち上げが加わったのです。
「要件が増えてタイトになる中『がんばります!』と胸を張って応じてくれたのがクラスメソッドさんでした」(小林さん)
不具合のないシステム切り替えで、オペレーターもすぐに適応
大規模なシステム切り替えなので、多くの関係者が切替日を緊張して迎えました。小林さんは「コールフローの中身など何度も慎重にチェックしました。それでも想定外の不具合が1個や2個生じてもおかしくないと覚悟していました」と言います。しかし、当日は問題は発生せず、スムーズに切り替えが完了しました。
PayPay銀行では、移行後の運用も重視しています。旧システムでもサーバー側の設定はベンダーに依頼していましたが、コールフローなど運用面は自社で管理していました。Amazon Connectへと移行しても、自社での運用管理を「維持したかった」と小林さん。その点、Amazon Connectではコールフローの設定がグラフィカルで視認しやすく、マウスで操作できるため簡単です。小林さんも「難易度が下がりました」と喜んでいます。
実際に業務を担当している烏山さんは「毎月のように席替えをする部署もあります。Amazon Connectにしてからは回線をつなぎ替える必要がなく、パソコンだけ移動すればすむので楽です」と好評です。今回のリプレイスではシステムは変更したものの、オペレーション業務には大きな変更はなく、多くのオペレーターが難なく変更に適応できています。
AWSを活用できる環境となり、より顧客に役立つ機能提供の可能性が広がった
Amazon Connectに移行完了した2022年10月から半年間だけでも、コンタクトフロー内のお客さまへのガイダンス変更やIVR分岐の改善など、すでに20回ほどの変更を行っています。小林さんは「急な拡張でもすぐに対応でき、回数を重ねる度に素早く対応できるようになっています。その意味でもAmazon Connectへのリプレイス効果が出ています。以前は電話回線があふれそうになると、変更に工事も含めて3ヶ月ほどかかっていました。今では1〜2週間でできるので、本当に楽になりました」と安堵した様子です。
Amazon Connectへリプレイスしたメリットについて、久保さんは以下のように語っています。
「オンプレミスの時には、ハードウェアが伴うのでサービス導入や検証が大変でした。AWSの場合はまず小さく試してみて、使えそうなら導入と手軽にはじめられるのが利点です」(久保さん)
今後の展望について小林さんは「これでAWSを使える環境になりましたので、例えばボイスボットを活用してセルフサポートできるページをご案内するなど、より早く問題解決できる可能性が広がりました。AWSを活用すれば、PayPay銀行のサービスをよりよくできると考えています」と話しています。
クラスメソッドは、これからもAmazon Connectの運営やAWSを活用したPayPay銀行のビジネス発展に貢献していきます。