ゼンリンマーケティングソリューションズ(以下ZMS)は、株式会社ゼンリンジオインテリジェンス(以下ZGI)と、「株式会社ゼンリンビズネクサス」「大東マーケティングソリューションズ株式会社」が合併し、2020年4月1日に発足しました。クラスメソッドはZGI時代から引き続き支援をさせていただいています。
同社では、ゼンリンが持つ独自の地図データベースを強みとした、様々な業界に向けてのマーケティング活動支援ツールとなるデータベースの提供、GIS(Geographic Information System)パッケージ販売やツール開発、顧客との共創によるデータコンサルティングまで、位置情報を活⽤した事業を幅広く展開しています。近年はユーザーの店舗や近隣エリア状況を地図上で可視化する事業戦略ツールArmBoxが注目を集めています。
活況を呈する位置情報とそれを応用する事業で市場のニーズに応え続けるには、ゼンリングループ独自の高精度なGISデータと、国勢調査や住宅土地統計といった各種統計情報を重ね合わせた新しいデータ製品の開発や、既存データ製品の迅速なメンテナンスが求められます。GISデータを用いた専門的な作業には、処理にかかる時間や⼈的負荷、またインフラコストも増加傾向にあり、作業の効率化が求められていました。
ZGIでは、この問題を解決するため、2019年度からデータ処理ツールAlteryx(アルテリックス)の導入を開始。利用のきっかけと成果、そして導入に際してクラスメソッドがどのように貢献できたのかを振り返っていただきました。
データ処理が3カ月から2週間に短縮、コストも6分の1に
ZGIは全社員が24名、その中でお客様のプロジェクトや自社サービスの運営・開発・保守、また営業サポートなどに関わっているメンバーは約半数。限られた人員で新しいことにチャレンジしていく為にも、ルーチンワーク業務負荷を抑えなければならない、という課題を抱えていました。
「Tableauのユーザー会でAlteryxのことをたまたま知りました。その後、クラスメソッドが開催している無償ハンズオンセミナーを受けさせてもらったところ、便利そうなツールだなという感触だったんです。そこで社内でのトライアルを1ヶ月程実施して、実際のデータを回してみたところ『あ、これはいけるな』と思いました」(長尾さん)
誰でも簡単な操作で商圏分析を実現するクラウド型のエリアマーケティングツール「Market Platform」。そこに搭載するデータには鮮度が求められます。導入前まで、全国を一定の広さで区分けし、そのエリア内にどのくらい人が住んでいるか、何世帯あるか等のデータを集計する作業では、処理のために3ヶ月程度の期間、複数台のサーバを契約して実施していました。最も課題となっていたのは処理速度であったため、検証期間もその視点を中心にチェックしたといいます。
「やりたいことはすごくシンプルなので、なんとか速度を早くしたいと考えていました。Alteryxで試しに実施してみたところ、これがとにかく期待値以上の速さでした。これまで3ヶ月位かけて処理していたのが、正味2週間程度で終わってしまいました。サーバを立てる必要もなく、PC1台で出来てしまうので、トータルコストでいえば6分の1程度になったと思います」(大西さん)
Alteryxを導入することで、副次的な効果として、多くのツールを別々に操らなければならないという手間を省略すること、またワークフロー中での無駄な作業にも気付くことができ、その改善も作業時間の大幅な短縮に貢献したといいます。
ツール統合とワークフロー作成により、業務の属人化を解消
ZGIではGISデータを扱うため、普段は専門的なGISソフトウェアを利用しています。このソフトウェアは何種類もあり、しかもそれぞれ扱えるファイル形式が限定されることが多いです。全てのツールを一人で習得するのは不可能なため、仕事の属人化にも影響してきたといいます。
住宅地図をもとに構成されるゼンリングループ独自のGISデータ製品『ゼンリンマーケティングコンテンツ』には、建物ごとに「ここは戸建て住宅」「ここはマンションで何部屋入っている」「面積はどれくらい」「このビルに入っているテナントの数」といった情報が含まれています。これらのデータは、日本国内でも住宅地図を作成しているゼンリンしか持っていません。また、国が公表する各種オープンデータを地図上で組み合わせて統計解析し、個人情報を一切用いなくても住民のライフスタイルを推定する「ロコシル(旧Chomonicx)」を構築。
これらをエリアマーケティング戦略支援データとしてお客様へ販売しています。
日本全国で22万800程ある町丁・字のデータ(合計20GB程度)に、ロコシルで定義する38分類の「ライフスタイルコード」を適切に付与する作業があります。全国約3,900万棟の建物情報とロコシルの地図を重ねて1棟毎にライフスタイルコードを付けていきます。この作業だけで一般的なGISソフトウェアだと3~4時間以上かかるところを、Alteryxを利用すれば3~4分で終了してしまうといいます。
エラー処理の対象になるのは、全国で4,500棟程度。従来であれば手作業ないしは別ツールを利用して距離計算をしていましたが、Alteryxでは全てフロー化して自動でできるようになりました。また、本業務は年次で発生するため、手作業であれば毎年同じ時間をかけて対処せざるを得ないところ、Alteryxで一度フロー化してあれば何度も使え、更に専門的な作業にも関わらず属人化しないというメリットもあるといいます。
「業界的に人員流動は激しいので、技術の継承がなかなかできないんです。その点、フロー化してしまえば、誰が見てもだいたい何をやっているかわかり、作業マニュアルの制作さえも不要です。また、フロー化により誰が作業しても同じ結果が出るため、作業ミスが発生しないという点もすごく重要だと思っています。」(長尾さん)
「もともとEXCELの関数が得意でなかったような人でも、GUIで操作できるAlteryxであれば使うことができます。アナログ作業中心だったメンバーにはリスキリングが進んだことにくわえ、データ制作業務に携わることで会社の事業に貢献しているという実感を得ることができ、モチベーションアップにもつながりました」(長尾さん)
社内では月に1回の勉強会を開催するなど継続的にスキルアップの取り組みを行い、データを扱えるメンバーの数は着実に増えているといいます。
データ提供からデータコンサルティングへ
データの処理速度が上がったことにより、これまでとは違ったデータ活用の方法も見えてきました。
顧客の「こういうデータが欲しい」というリクエストに応えるため、自社データとサードパーティデータを組み合わせて処理することで、より要望に対し的確なデータを提供することが可能になりました。最近ではむしろサードパーティーデータを組み合わせないケースの方が少ないほどだといいます。
また、あらかじめ用意したデータをお客様に提供するだけでなく、お客様と対話しながらその場でデータ分析をする、データコンサルティングも可能になりました。
「お打ち合わせの場などで実際にお客様と対話しながら、『このデータはこういう処理をくわえた方がいいのではないか』といったご意見に対し、画面上でリアルタイムで変更し、お見せすることができるようになりました。その結果、手作業では制作が難しいようなデータ量になる場合もありますが、Alteryxであれば問題なく処理することができますね」(長尾さん)
今後、日々増え続けていくデータ量をどう処理していくか
ZGIとクラスメソッドは、AWSのサポートで既に契約があったものの、データ処理に関する課題を持っていた大西さま、長尾さまとは、Alteryxをきっかけに初めてご一緒させて頂くことになりました。無料のハンズオンセミナー参加や、テスト導入時の説明等のサポートや、予算上の制限にもご相談にのらせていただきました。
「実際に購入前に実データでいろいろ試させて頂くことができたのは本当に感謝しています。途中で止まったりしてしまった時に、もっとクラスメソッドさんを頼れば良かったのかもしれません。キャンパス上で試行錯誤して、自分たちで色々調べてもみたのですが、結局行き着く先はクラスメソッドさんの技術ブログ『DevelopersIO』なんですよね。
ブログの情報にはだいぶ助けられたので、そこも感謝しています」(大西さん)
最初は単に販売代理店として契約したクラスメソッドですが、現在では技術サポートの方に頼もしさを感じていると言います。
「他の販売店で安く買えたとしても、クラスメソッドさんの情報提供や技術サポートがないのであれば、その選択肢は選びませんね。単純にわからないことを聞けるだけでなく、営業さんからはコストの最適化も含めた提案をしていただけます」(大西さん)
また、Alteryxに限らず最新技術へのキャッチアップのためにも、クラスメソッドの情報発信をチェックしているといいます。
「DevelopersIOのほか、メルマガでも定期的に情報をチェックしていますが、特に印象的なのは、まだ世に出たばかりの新しいプロダクトについて、かなり積極的かつ分かりやすい状態でセミナーをしていただけることです。クラスメソッドさんのことは、『新しい技術を最初に覚える入り口として最適なおすすめできる会社』だと感じています」(長尾さん)
今、あらゆる側面において生成されるデータ量は日々増え続けています。各種データを扱う会社では、今後ますますデータ処理速度やワークフローが課題となってくるかと思います。クラスメソッドはAlteryxというデータ分析プラットフォームのサポートを通して、ゼンリンマーケティングソリューションズ様の未来を、これからもサポートしていきます。