アプリと社内をつなぐデータ基盤の整備
浜松の100年企業が描く“お客様起点”のデジタル推進の未来

株式会社電器堂

経営推進部イノベーション推進課 シニアマネージャー 徳増真宏 様
株式会社電器堂
公開日:2026年6月16日
BEFORE
  • お客様向けアプリと社内基幹システムのデータ基盤が分断
  • バッチ処理でのデータ取り込み処理で速度や安定性に懸念
  • 繋ぎ込み作業に複数ベンダーが絡み調整やセキュリティ対策に不安
AFTER
  • 閉域網とAWSをDirectConnectで直接接続した安全な通信環境
  • アプリと社内環境を同一通信経路上に接続し直接データ連携が可能に
  • 複数ベンダーによる構成を整理・調整しセキュアな環境を構築

浜松に本社を構え、創業100年を越える歴史を持つ株式会社電器堂。電線・照明・空調設備から受変電設備まで電設資材全般を取り扱うとともに、太陽光発電システムや産業用システムまで幅広く手がけ、静岡県中西部を中心に地域に密着した拠点網と豊富な在庫量を強みに、工事店・建設会社など約千社の顧客を支えてきた老舗です。

同社は「商品の提供だけでなく、お客様に新たな価値を届けられないか」という課題意識を持っていました。お客様との関係をデジタルで補完しさらに深めることができないかと模索するなかで、4年前にお客様向けアプリ「DENKIDOアプリ」をリリース。在庫確認・問い合わせ機能から始め、アップデートし続け現在ではアプリ経由での注文も可能に。そして同アプリをさらに成長させ活用していくため、AWSを活用した基盤整備に踏み切りました。同社イノベーション推進課の徳増さんに、今回の取り組みと今後の展望について伺いました。

「お客様のため」から生まれたDENKIDOアプリ

電器堂がお客様向けに提供している「DENKIDOアプリ」。そのコンセプトは「知りたい情報がいつでもお手元に!」です。お客様が必要とする情報に、いつでもどこからでもアクセスできる環境を届けたいという想いから生まれました。当初は在庫確認と価格問合せ機能だけでしたが、2022年のリリースから4年間で機能を追加し、現在は各種問い合わせ、製品カタログの閲覧、見積の依頼、注文履歴の確認など、さまざまな業務に対応するまでに進化しています。

株式会社電器堂 DENKIDOアプリの出発点は、経営トップの「お客様に商品だけでなく、新たな価値を届けたい」という強い想いでした。お客様との関係をデジタルで補完し、お客様を含めた業界全体のイノベーションを起こしたい——その方針、想いのもと、推進した取り組みです。

「例えばお客様が価格や在庫を知りたくて弊社へご連絡をいただくときも、お客様の一日の作業が終わった後の夜間や、休日では対応できない場合があります。デジタルを活用することで、いつでもお客様が知りたい情報を手にいれることができれば、お客様にとって便利になるのではないか」(徳増さん)

「お客様のため」という価値観は同社の経営の根幹です。実際に、あるお客様から「なぜこのようなアプリを提供するのか」と問われたことがありました。その際も、「お客様にとってメリットがあるからやっています」と明確に答えたそうです。

電器堂のビジョンである「電気の専門商社として、お客様の未来を考え、ビジネスの発展に貢献する」を目に見える形で表現したのが「DENKIDOアプリ」というわけです。

データを活用したくてもできない環境

こうしてお客様のために生まれたDENKIDOアプリも、リリースから4年が経過しました。徐々にその利用者と機能を増やし続け、現在では全体の2〜3割の顧客がアプリを利用するまでになっています。

日々アプリを運営するなかで、徳増さんの目には新たな課題が見えてきました。

「アプリを介して集まったデータや既存の社内データが、活用できない状況だというのがわかってきました」(徳増さん)

アプリを育ていくなかで、徳増さんはデータ活用についても意識するようになりました。しかし、アプリと社内の情報基盤は、まったく別々の世界に存在していたのです。また、データを集約して能動的にコントロールし、分析したりアプリ等で利用したりするためのデータ活用基盤もありませんでした。

「DENKIDOアプリの基盤はAWS上で稼動していますが、売上等はオンプレミスの基幹システム上にあります。両者をどう上手く繋げるかというのが課題でした」(徳増さん)

両者をつなぐためには基幹システムからバッチ処理でデータ抽出等の処理を挟む必要があり、処理速度や安定性の面で懸念があります。また、基幹システムをパブリッククラウドと直接つなぐことに対する、セキュリティ上の懸念も小さくありません。

「アプリ(AWS)と社内(オンプレミス)が分断されている」——その状況を変えデータ活用に向けた道筋を付けることが、今回のプロジェクトのゴールとなりました。

クラスメソッドは「キャッチボールができる相手」

株式会社電器堂 どうやったらデータを活用できる状況になるのか。まずは徳増さん自身で検討し、必要となる条件を定めました。

「通信会社の閉域網サービスでAWSと社内を接続し、社内オンプレミス環境とAWS環境をセキュアにつなぐことが必要だとわかりました」(徳増さん)

これを実施するには複数のベンダーが関わるため、その境界領域での作業には専門的な知見が必要でした。徳増さん自身も前職でシステム開発の経験こそあったものの、こうしたインフラ構築に関しては知見が十分ではありませんでした。そこで、アプリで利用しているAWSの請求代行で縁があったクラスメソッドに、初めて開発支援を依頼することにしました。

徳増さんは以前から「日本でAWSといえばクラスメソッド」と認知しており、クラスメソッドへの相談も自然な選択肢だったと言います。しかし、実際に依頼の決め手となったのは、技術力よりもコミュニケーションのあり方でした。

「こちらの質問に対して、ブラックボックスでない回答が返ってくるのです。なぜそうなるか背景まで説明してもらえるので、こちらも理解した上で判断ができました。ちゃんとキャッチボールをしてくれるのです」(徳増さん)

こうしたコミュニケーションは、プロジェクトの進め方にも良い影響として表れました。電器堂のイノベーション推進課には「走りながら考える」という文化があり、アプリ開発等も含めて多くの取り組みがアジャイルになされています。そのため、要件が最初から固まっていない状態でプロジェクトを動かすことが少なくありません。

一般的な開発ベンダーとの作業では「要件が決まらないと進められない」と、プロジェクトが止まることも少なくありません。しかし、そうしたやり方にもクラスメソッドは寄り添ってくれたと徳増さんは言います。

「こちらから決まっていない部分を正直に伝えても、じゃあできるところから進めましょうという形で動いてくれた。それが本当にありがたかった」(徳増さん)

また、通信会社・基幹システムベンダー・開発チームなど複数の関係者が絡むことから、全体のコミュニケーションやプロジェクト管理についても慎重に行なう必要がありました。それについても「他社との調整内容も整理してくれ、不安を一つずつ丁寧に解消してくれました」と、徳増さんは高く評価しています。

構築の中身と、スコープを超えた支援

今回のプロジェクトの核となるのは、VPC・DirectConnect・VPC Peeringによるネットワーク基盤整備と、それに伴うセキュリティ対策としてのTrend Micro Vision Oneの導入です。通信会社の閉域網とAWSを直接接続することで、インターネットを経由せずに社内とクラウドが通信できる環境を整備します。さらにVPC Peeringにより、DENKIDOアプリのAWS環境とデータ活用基盤のAWS環境を同一の通信経路でつなぐ構成を実現しました。

プロジェクト期間は2026年1月から3月の3か月。要件が当初から明確でない部分については、社内で使用しているIPレンジなどの実情をヒアリングしながら、順次具体化していくアプローチで進めました。

また、構築した環境を運用していくにあたって誰でも作業可能にするため、バックアップ手順書と専用線ルート追加の手順書もクラスメソッドのエンジニアによって作成されました。当初は支援のスコープ外だったものですが、電器堂にとっては大きな助けとなりました。

「アプリやインフラは、私を含めて2人で担っています。浜松という地方でエンジニアの採用も簡単ではない環境で、他のメンバーでも作業できる状態を手順書として残しておくことは、DXを継続していくための必要条件だと思っています。一度やったら変えることが少ない設定ですが、何かあった時に『あの時どうしたっけ?』となる。そういった時のために資産として残ります」(徳増さん)

スコープ外であっても必要なものを自ら察して動くクラスメソッドの姿勢が、信頼をさらに深めることにつながりました。

株式会社電器堂

「つながった」ことで変わったこと、そして次のステージへ

今回のプロジェクトの成果を徳増さんは、将来性の点で高く評価しています。

「今まで社内の情報とアプリが分断されていましたが、今回繋がったことで、情報さえデジタル化すればいろんな活用を考えられる環境になりました」(徳増さん)

現時点で業務上の大きな変化は、データ連携の構成が変わったことです。これまで社内のオンプレミス環境とAWS上のDENKIDOアプリは分断されており、データ連携のためのバッチ処理もオンプレミス側に置かざるを得ませんでした。

今回の基盤整備によって、AWS上からオンプレミス環境への参照が可能になり、バッチ処理をAWS側に集約できるようになりました。さらに、AWSの各種サービスからオンプレミスのデータを直接利用できるようになったことで、AI・BIをはじめとしたデータ活用の可能性が大きく広がっています。

今後の展望として、徳増さんの視野にあるのはAI・BI活用です。AWS Bedrock、Amazon Quickなどを使ったPoCはすでに始めています。経営情報を可視化して、市場の変化をいち早くつかみ取る。納期の遅延予兆をアラートとして上げ、顧客にあらかじめ連絡する。過去の取引データをもとにお客様への情報提供を高度化する。いずれも、今回の基盤整備によって初めて現実的な射程に入ってきた取り組みです。

「クラスメソッドの技術力とノウハウの豊富さは、セミナーやブログでの情報発信からも伝わってきます。これからAI・BI領域で、また新しいことをやりたいので、その時にも頼れる存在であり続けてほしいです」(徳増さん)

「お客様のため」という哲学の元で、デジタル化とクラウドシフトへの投資を加速させている電器堂は、新たに獲得したクラウド環境によってDXを更に加速させていきます。クラスメソッドは、今後も同社の未来に向けたデジタル活用の取り組みに伴走してまいります。

この事例はAWSコンサルティングをご利用いただいています

クラスメソッドのAWSコンサルティングは、公式資格を持つエンジニアがお客様の要件にマッチしたAWSのクラウドインフラ設計、サービス選定をご提案。AWSの広い知見を活かし、コスト削減からハイパフォーマンスな構成までじっくりとアドバイスします。

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