福岡を拠点に自社の家具・インテリアブランド「LOWYA(ロウヤ)」をはじめとするEC事業を展開する株式会社ベガコーポレーション。経営方針としてAI活用の推進を打ち出した同社は、AIエージェント「Claude Code」「Claude Cowork」の採用を決定。全社展開に向けたガバナンス設計やガイドラインの策定、ワークショップの実施などの技術支援をクラスメソッドに依頼しました。3カ月にわたって実施したプロジェクトについて、システム統括部長の大田さん、SREグループ長の小原さん、SREグループの田中さんにお話をうかがいました。
経営主導でAI活用を本格推進、最旬のClaude Code/Coworkを採用
ベガコーポレーションは、「ECの可能性を無限大に」をビジョンに、家具・インテリアEC事業の「LOWYA(ロウヤ)」と越境ECプラットフォーム事業の「DOKODEMO(ドコデモ)」を展開しています。LOWYAでは、自社で企画から製造、販売までを一貫して手がけるD2Cモデルを採用し、高品質な製品を適正価格で提供しています。近年は実店舗展開も加速しており、2026年7月現在で全国17店舗を運営しています。
自社開発のECシステムを軸に、ITによるサービス強化に取り組む同社では、AI活用にも積極的な同社。2023年頃からCopilotやChatGPTの社内利用を開始し、翌2024年にはGeminiを全社展開しました。しかし、実際の活用は一部の社員にとどまり、組織全体への定着には至っていませんでした。
転機となったのは2026年4月の社員総会です。浮城智和社長が「単純な業務はAIに任せ、人はより付加価値の高い仕事に集中する」という方針を打ち出し、ベガコーポレーションは経営主導でAI活用を推進する姿勢を明確にしました。これを受け、SREグループを中心とするClaude Code/Coworkの全社展開プロジェクトがスタートしました。「普段からさまざまな技術情報を収集している中で、最も注目を集めていたのがClaudeでした。エンジニア組織ではすでに一部でClaude Codeを利用していたため、コーディングツールとしてClaude Codeを、全社員向けのAIエージェントとしてClaude Coworkを採用しました」(小原さん)
全社展開にあたり、最初の課題となったのがガバナンス整備でした。それまではSREグループの担当者がWeb上の情報を集めながら手探りで生成AIの活用ルールを整備していましたが、全社規模で展開するには、より体系的な整備が必要です。そこで同社は、以前から取引のあったクラスメソッドに技術支援を依頼しました。
「クラスメソッドとは2021年頃より、AWSの請求代行やBIプロダクトのLookerの契約などでお付き合いがあり、技術支援のパートナーとして信頼していました。そうした中、クラスメソッドがAnthropic社とリセラー契約を締結したと聞き、すぐに相談しました(参考:クラスメソッドプレスリリース)」(小原さん)
ガバナンス、ガイドライン、ワークショップの3本を柱とするプロジェクト
こうして2026年4月から約3カ月間にわたり、Claude Code/Coworkを全社で利用するための「ガバナンス設計」「ガイドライン策定」「ワークショップ開催」の3本を柱とするプロジェクトがスタートしました。
最初の約1カ月でガバナンス設計の方向性を固めるとともに、Claude Code/Coworkの利環境を整備し、利用者向けの勉強会やワークショップを実施しながら、後半はパラメータシートをもとに詳細なガバナンス整備を進めていきました。
1. AI利用環境のガバナンス設計
ガバナンス設計では、SSOやSAML認証の設定、利用料金の管理方法、組織設定など、運用に必要な項目を一つひとつ検討。クラスメソッドから提示された推奨設定をベースに、自社の運用方針に合わせて最適な構成へ調整していきました。
「クラスメソッドの担当者からは、推奨設定の細部まで理解できるように、設定項目の意味やリスク、メリットまで丁寧に説明していただきました。疑問点も細かく確認しながら進められたため、納得感を持って進めることができました」(小原さん)
ガバナンス設計で最も慎重に進めたのが、法務部門やセキュリティ部門との調整でした。顧客情報や製品情報を扱うEC事業者として、一部についてはより厳格に設定しました。
「まずは厳しめの設定でスタートし、安全性を確認しながら利用範囲を段階的に拡大する方針としました。どこまでを許可し、どこからをリスクと判断するかについては、社内でも多くの議論を重ねました。例えば、コード実行環境の外部通信先を限定したり、ブラウザー拡張機能(Claude in Chrome)の接続先サイトをホワイトリスト形式で管理したりするなど、自社向けにカスタマイズすることで、ガバナンスとセキュリティの両立を図りました」(田中さん)
2. Claude利用ガイドラインの作成
プロジェクト後半の2026年6月には、Claude Code/Coworkを展開するためのガイドラインを整備しました。同社が既に整備していた生成AI利用ガイドラインをベースに、そこから派生する形でClaudeに特化したガイドラインを作成しました。
「クラスメソッドからClaudeに関するガイドラインのドラフトを提示いただき、それをもとに社内で検討を重ねました。その過程では、指示セットをまとめた『スキル』を誰でも自由に作成できるようにするのか、それとも一定の制限を設けるのかといった点についても議論を進めました」(田中さん)ガイドラインは一度策定して終わりではなく、運用しながら定期的に見直し、改善していく方針です。
「セキュリティ面で慎重な議論が必要になりましたが、自社の考え方を反映したガイドラインを期限内にまとめることができました。運用しながら育てていくための土台を構築できたことは、大きな成果となりました」(小原さん)
3. Claudeワークショップの実施
2026年5月後半には資料作成を経て、エンジニア向け・事業部門向けに、座学・ハンズオンによるワークショップを開催しました。全社に募集をかけると予想を大きく上回る希望者が集まり、最終的な調整を経て100名を超える社員が受講しました。参加者の内訳は、Claude Cowork(非エンジニア向け)が約80名、Claude Code(エンジニア向け)が約30名でした。
「ルーティン業務を効率化したいという課題意識を持つ社員が非常に多く、管理部門から商品企画、サプライチェーン、販売、営業まで、ほぼ全領域の社員が手を挙げてくれたことからも期待の高さがうかがえました」(大田さん)
ワークショップはClaude Code・Claude Coworkそれぞれ2回ずつ、計4回に分けて実施しました。第1回は座学とハンズオンを組み合わせて基本的な使い方や活用方法を学び、第2回は参加者が事前に持ち寄った実際の業務課題をテーマに、AIを活用した改善方法を検討しました。
「それぞれが抱える業務課題を実際にAIで解決するハンズオン形式だったため、AI活用を具体的にイメージできるワークショップとなりました。その結果、実施後のアンケートでは80件以上の回答が集まり、平均満足度は5点満点中4.22点と高い評価を獲得しました。さらに、回答者の約8割が『今後もClaude Code/Coworkを活用したい』と答えており、AI活用への意欲を大きく高めることができました」(小原さん)
クラスメソッドの提案力と伴走支援の姿勢を評価
プロジェクトを振り返り、大田さん、小原さん、田中さんが共通して挙げたのが、クラスメソッドの提案力と伴走支援に対する姿勢です。小原さんは「要望に対する理解力と対応スピードが非常に高かった」と振り返ります。
「管理画面の設定やログイン関連の技術的な要件にも的確に対応いただけました。Anthropic製品の最新動向にも精通しており、ガイドライン策定やセキュリティ面のアドバイスでは豊富な知見を活かした提案をいただけたことが非常に役立ちました」(小原さん)
実務を担当した田中さんも「自分たちだけではここまで短期間に進められなかった」と語ります。
「勉強会の資料やワークショップの進め方、利用ガイドラインのドラフト提供など、プロジェクト全体の方向性を示していただけたことで、安心して実務を進めることができました。技術的な質問に対するレスポンスも早く、困った時にすぐ相談できたことも心強かったです」(田中さん)
プロジェクト全体を統括した大田さんは、長年にわたる信頼関係を評価しています。「クラスメソッドとは長年の付き合いがあり、安心して相談できる存在でした。自社だけで進めようとすると、担当者のリソースを確保することが難しかったと思います。その点、クラスメソッドから最初に提示いただいたプロジェクト計画が素晴らしく、この体制なら進められるという安心感がありました。進捗管理や課題管理も丁寧で、何が課題で、次に何をすべきかが整理されていました。さらに、100名を超える参加者を対象にしたワークショップについても、参加者一人ひとりに寄り添いながら運営いただき、期待以上の成果を得られたと考えています」(大田さん)
ガバナンス体制の確立やガイドラインの策定により運用上のリスクを軽減
3カ月のプロジェクトにより、Claude Code/Coworkを全社で利用するためのガバナンス体制の確立とガイドラインの策定が実現し、運用上のリスクを軽減したうえでAIの利活用を加速することができました。プロジェクト終了後は、利用状況やコストを可視化する仕組みを導入し、本格運用を開始しています。
「現在は、全社員277名のうち103名、三分の一が利用中です(2026年7月現在)。定量的な効果測定はこれからとなりますが、現場ではすでに変化の兆しが現れています。特にClaude Coworkを利用している業務部門からの反響が大きく、勉強会やワークショップを通じて『AIは難しそう』『何となく怖い』という心理的なハードルが下がったことで、利用が一気に加速しています。体感レベルではありますが、業務のアウトプットに要する時間の短縮につながり、社内で共有するデータやグラフの品質も向上したと感じています」(小原さん)
エンジニア部門の開発チームでも設計や実装にClaude Codeを積極的に活用することで、開発効率の向上につながっています。
「仕様作成や意思決定は人間が行い、実装部分はClaude Codeに任せるというスタイルが定着し始めています。従来はモックアップ作成に5日程度かかっていた案件が、1日もかからず完成したケースもあります。私自身もSRE業務にClaude Code/Coworkを活用することで、人では見落としやすい兆候も検知できるようになりました」(田中さん)
全社展開に向けて環境整備を継続し、対象ユーザーの拡大へ
「経営が掲げたAI活用方針に対する第一歩としては、とても良いスタートが切れたと思います。一方で、本当の勝負はここから。ガイドラインをどう定着させるか、利用者をどう増やすか、そして成果をどう定量化していくかが重要で、そこがシステム統括部の腕の見せ所になります。AI活用を定着させて事業価値につなげるためには、多くの課題があります。クラスメソッドには伴走パートナーとして、運用やガバナンスも含めた幅広い支援を期待しています」(大田さん)
MCPサーバーや各種コネクターなど外部サービスとの連携の拡大や、安全に利用できる環境の整備など、AI活用の展望は広がる一方です。
「Anthropic製品はアップデートのスピードが非常に速いため、クラスメソッドには新機能のキャッチアップや活用方法、他社事例の共有、勉強会なども含めて、引き続き伴走いただけることを期待しています」(小原さん)
ガバナンス設計とガイドラインの策定を経て、全社的な取り組みへと広がりつつあるベガコーポレーションのAI活用。クラスメソッドは今後も支援を継続してまいります。


