1997年の創業以来、日本語音声認識の研究・開発を続け、その技術とともに国内の音声認識市場を切り拓いてきた株式会社アドバンスト・メディア。コールセンターや医療、自治体など、さまざまな業務の現場で音声認識の活用を広げてきました。同社が近年リリースした音声認識API「AmiVoice API」には、実際に利用するエンジニアに向けての認知が課題となり、技術選定の入口に立てないという壁に直面していました。
その状況を改善すべく協賛したZennの記事投稿コンテストで、どのような変化が生まれたのでしょうか。Platform Development & Operation部の山本真也さん、ビジネスストラテジー推進室の河村悠紀子さんに話を聞きました。
候補に挙がりにくい音声認識API、強みが知られていなかった
「AmiVoice API」は、日本語の専門用語や業務利用を前提とした高い認識精度、公開されたSLA(サービス品質保証)、国内で完結するデータ運用など、BtoBの業務システムに組み込むうえで欠かせない要件に強みを持つ音声認識APIです。医療の専門用語を正しく認識する専用エンジンを備えるなど、他社にはない対応力も特徴としてあります。母体となる音声認識技術AmiVoiceは1997年の創業以来開発が続けられており、30年近い研究と実際の業務現場で蓄積してきた音声データが、この精度を支えています。
そんなAmiVoiceが開発者向けのAPIとして外部提供を始めたのは2019年12月のことでした。しかしコールセンターや医療の現場では広く知られていますが、それ以外の業界や一般のエンジニアの間では、AmiVoiceという名前を聞いたことはあっても、開発者向けのAPIとして使えることまでは知られていない状況でした。パッケージ化されたソリューションサービスは営業チームを通じて導入されることが多いのに対し、従量課金のAPIは開発者自身が検索して比較・選定するのが基本です。検索で見つからなければ、そもそも比較の候補にもなりません。「他サービスでは精度が出ずに代替案を探していて、という流れが特に多かったんです」と山本さんはユーザーとの接点について話します。他の音声認識モデルを最初に試し、思うような精度が出ずに他の候補を探す中でAmiVoiceに行き着き、乗り換えて解決するというケースも複数あったといいます。裏を返せば、性能そのものではなく、「検討の最初のテーブルに乗れていないこと」こそが課題だったのです。実際に触ったことのあるエンジニアが多いツールほど、次の技術選定でも候補に挙がりやすくなります。
決め手になるのは第三者の「使った人の声」
同社がこれまで実施してきた検索連動型広告では、文字起こしアプリ・議事録サービスを探す非エンジニア層からのアクセスが多く、意図した相手にはうまく刺さらないという課題を抱えていました。また近年はブロックツールや広告自体への不信もあり、インターネット上の広告そのものが届きにくくなっています。
一方で、実際に技術を選ぶ場面で重きが置かれるのは、利害関係のない第三者が、実際に試した結果を伝える声です。ベンダー自身がいくら性能を訴えても、「使ってみたらどうだったか」という具体的な情報のほうが判断材料になりやすいのです。
第三者が試した具体的な情報がインターネット上にあるかどうかは、AI検索の時代も共通です。生成AIへの質問に対する回答も、元をたどればGoogleの検索結果や既存のWebコンテンツに基づいています。記事の有無によって、人であれAIであれ「最初に目にする情報」が変わってくるのです。
自社発信や外部ライターだけでは超えられなかった壁
認知を広げるための発信自体は、同社もこれまで取り組んできました。しかし、技術ブログを書けるエンジニアの数には限りがあります。また、外部のライターに記事執筆を依頼したこともありましたが、テーマや構成、技術的な背景をこちらから細かく説明する必要があり、最終的には指示した内容の範囲を出ない記事になりがちでした。内容の確認や修正にも相応の手間がかかっていたといいます。
「こちらが答えを用意して形にしてもらう記事制作と、参加者が自ら問いと答えを考える記事投稿企画では、得られる価値がまったく違います」と河村さんは話します。自社だけで書ける記事の量にも、記事の「自分ごと化」の度合いにも、それぞれ限界があったのです。
Zennの記事投稿コンテストと伴走支援で実現したこと
同社はZennについて、開発・運用の現場からも日常的に目にする機会が多く、以前から執筆者の質の高さに注目していたといいます。Zennに問い合わせた時期はちょうど大型記事投稿イベント「Zennfes Spring 2026」の企画が策定され、スポンサーテーマを設定できる協賛プラン「Premier Sponsor」の募集が始まった時期でした。同社は協賛を決め、Zenn運営チームとも協議し、APIの無償トライアルコードとともにこんなスポンサーテーマを発表しました。
「音声認識AmiVoice APIと生成AIで作る音声体験(株式会社アドバンスト・メディア) 音声認識API『AmiVoice API』と生成AIを併せて活用した実装事例や知見を共有してください。他のエンジニアにとって有益な内容を歓迎します」
キャンペーン開始当初は投稿数が伸びず、河村さんは「大丈夫かな」とそわそわしていたそうです。しかしZenn運営チームは執筆者自身とサービスとのつながりが見出しにくいという観点から、執筆テーマを生成するためのプロンプトや、関連技術資料の案内といった複合的な支援を行いました。こうした追加施策がサービスを理解しやすくした結果、記事数が伸び始めます。当初は1カ月半の投稿期間で50本程度を想定していたところ、最終的には71本という、Zennfes Spring2026のスポンサーテーマの中でも、最多の結果になりました。
「単に原稿を書いてもらったのではなく、AmiVoiceについての考えが一気に増えた感覚があります」と河村さんは振り返ります。運営側が企画を立て、参加者自身がAPIに触れながら自分の関心や業務と結びつけて記事を書くという形は、外部発注のように依頼内容をなぞるだけの記事とは一線を画すものでした。記事数が伸び悩んだタイミングを見たZenn運営チームによる追加支援があってこそだと語ります。
Zennは自身の取り組みや考察を投稿する場ですが、学びだけでなく、それを振り返り他者に還元したい、アウトプットを重視するエンジニアが主な利用者です。記事投稿イベントはいわば「お題」を掲げたアウトプットのお祭りですが、音声認識APIに関心を持つ層や、生成AIと組み合わせてハッカソン的に楽しみたい層が、知的競技として投稿に参加し、他のエンジニアにとっても有益な知見がたくさん残されました。Zennが掲げる「三方よし」の企業支援が実現したイベントだったとも言えます。
これからも「音声認識といえばAmiVoice」を目指して
さらにキャンペーン期間中には、新規登録者数が過去最多を記録しました。オフラインイベントで他社が発表していた、生成AI向けにドキュメントを整理し直す取り組みも参考になり、AmiVoice APIの公開ドキュメントについてもAI向けの索引ファイルの公開など、生成AIから見つけやすくするための整備に着手したといいます。記事投稿キャンペーンの枠を超えて自社の情報発信そのものを見直すきっかけになったといいます。
今回投稿された記事は引き続きZenn上に残り、検索や関連記事から発見され続けます。またコンテスト後もAmiVoiceを扱う記事が投稿されています。同社が目指す世界観は「音声認識が水や空気のように当たり前に使われ、技術を選ぶ場面でAmiVoiceが自然に思い出される状態」です。同社は、こうした接点づくりを一度きりで終わらせず、Zennとの取り組みも含めて地道に積み上げていきます。
クラスメソッドはZennの法人支援メニューを通じてアドバンスト・メディア様のサービス認知拡大を支援します。


