【ホテル向け】OTA手数料をリピーター予約で減らす方法

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ホテルのOTA手数料は新規客とリピーターを分けて考えると、見直す場所が見えてきます。一度泊まったお客様が2回目もOTAから予約すると、本来は自社で受けられた予約にも手数料を払い続けることになるからです。この記事ではホテルチェーン本部でマーケティングと直販を担当する方に向けて、リピーター分のOTA手数料を自社の数字で試算する式と、予約後・滞在中・チェックアウト後にLINEで接点をつくる方法、LINEでできないことを順に説明します。

ホテル・宿泊施設の集客のご相談を受けていると、「OTA手数料が高いので直販を増やしたい」という話に何度も出会います。この考え方は正しい面もあるのですが、OTAそのものを減らそうとすると、かえって損をすることがあります。

先に答えを言うと、OTA手数料を減らすには、OTAを削るのではなく、新規の予約はOTAに任せたまま、2回目以降の予約だけを自社の直販(公式サイトや電話など、自社への直接予約)に寄せることです。

図1:OTA手数料は、2回目の予約の取り方で変わる

紹介会社で例えてみましょう。紹介会社に頼んで来てもらったお客様には、紹介料を払う価値があります。ただ、その紹介会社経由で来たお客様が2回目、3回目とリピートしてくれているのに、そのたびに同じ紹介料を払い続けているとしたら、もったいない気がしませんか。OTAの手数料にも、同じことが起きています。

なお、あとで出てくる試算の数字は、すべて仮のものです。ご自身の施設の数字に置き換えながら読んでみてください。

ホテルのOTA手数料の基本

OTA手数料が決まる仕組み

OTAの手数料は、OTA経由で入った予約の実績に応じて払います。料率はOTAや契約のプランによって変わるので、このあとの試算には、自社の契約書にある料率を使ってください。

OTAに払う費用の種類

送客実績に応じて払う費用の呼び方は、OTAによって違います。たとえば、じゃらんnetの宿泊施設向けの案内では、「ご参画・ご掲載は無料です。送客実績に対してシステム利用料・ポイント付与料等をご負担いただきます」と説明されています(出典:じゃらんnet「参画のご案内」)。このほかの負担もあわせると、OTAに払う費用は次のように分けられます。

費用内容
送客実績に応じた費用OTA経由で入った予約の実績に応じて払う。じゃらんnetでは「システム利用料・ポイント付与料等」と呼んでいる
カード決済の手数料OTAごとに負担があるかを、契約内容で確かめる
掲載順位を上げる広告OTAごとに負担があるかを、契約内容で確かめる

このあとの試算で使う「OTA手数料率」は、1つ目の送客実績に応じた費用の料率です。同じ費用を二重に数えないよう、契約書の費用の名前と照らし合わせてください。

OTAを使うメリットとデメリット

OTAのいちばんのメリットは自社の広告費だけでは届かない人に、予約が入ったときだけ費用を払う形で施設を見つけてもらえることです。初めて泊まるお客様を集める手段としては、合理的な費用だと考えています。

一方で、デメリットもあります。1つは、何度泊まってくれたお客様でも、OTA経由で予約すれば毎回手数料がかかることです。もう1つは、OTA経由のお客様とは、予約から宿泊までのやり取りがOTAの中で完結しやすく、自社とお客様が直接つながる機会が少ないことです。

京都市観光協会が京都市内の主な宿泊施設を調べたところ、7割以上の施設が10種類以上のOTAを使っていました。同じ分析では、コロナ禍でも高い収益性を保っていた施設は、OTAによる販路の拡大に頼らない傾向があったとされています(出典:京都市観光協会「宿のDXを考えるVol.1」やまとごころ.jp、2021年)。

リピーターのOTA手数料を試算

新規客とリピーターを分けて考える

OTA手数料を見直すときは、新規のお客様の予約と、2回目以降のお客様の予約を分けて考えます。新規のお客様の獲得のためにOTAに払う手数料は、広告費として割り切ります。見直すのは、すでに泊まったことのあるお客様にも払い続けている手数料のほうです。

一度泊まったお客様がOTA経由で予約し直すのは、その施設をあらためて探したからとは限りません。ポイントが貯まる、支払いの情報が保存されている、公式サイトの予約ページの場所を覚えていない、といった理由で、使い慣れたOTAに戻ることがあるのです。放っておいても直販に戻ってくるわけではないので、宿泊のあいだに「次は直接予約する理由」を渡しておく必要があります。

OTA手数料の試算式と計算例

リピーター分のOTA手数料は年間予約件数・OTA経由比率・リピーター比率・平均単価・OTA手数料率の5つの数字で計算できます。これに直販シフト率を掛けると、減らせる金額の目安が出ます。比率はどれも、人数ではなく予約の件数で数えます。

OTAに払っているリピーター分の手数料 = 年間予約件数 × OTA経由比率 × リピーター比率 × 平均単価 × OTA手数料率

減らせる金額の目安 = 上記 × 直販シフト率

それぞれの数字の意味と、このあとの計算例で入れる仮の値です。

数字意味計算例の値
年間予約件数試算する施設の、年間の予約件数10,000件
OTA経由比率そのうち、OTA経由で入った予約の割合70%
リピーター比率OTA経由の予約のうち、以前に泊まったことのあるお客様による予約の割合30%
平均単価1予約あたりの平均の金額15,000円
OTA手数料率契約しているOTAの手数料率10%
直販シフト率そのリピーターの予約のうち、直接予約に移せると見込む割合40%

表の値で計算すると、次のようになります。

10,000件 × 0.7 × 0.3 × 15,000円 × 0.10 = 315万円

これがOTAに払っているリピーター分の手数料の仮の総額です。このうち40%を直販に移せると、次のとおりです。

315万円 × 0.4 = 126万円

これが、年間で減らせるOTA手数料の見込みです。直販のための施策にかかる費用は、まだ差し引いていません。

チェーンで試算するときは、施設ごと、OTAごとに計算して本部で合算します。そのとき、「以前に泊まったことのあるお客様」を同じ施設に限るのか、チェーンのほかの施設に泊まった方も含めるのかを、先に決めておきます。

ぜひ自社の数字に置き換えて計算してみてください。とくに「リピーター比率」と「直販シフト率」は、計測できているかどうかを最初に確かめたい数字です。この2つを数字で見えるようにすることが、次に説明する接点づくりの出発点になります。

OTA手数料を減らす3つの接点

2回目の予約を直販に寄せるには、チェックアウトから次の宿泊までのあいだ、お客様と連絡が取れる状態を保っておく必要があります。宿泊の流れに沿って、接点を持つ場面を3つに分けます。

図2:OTA手数料を減らす3つの接点

予約後に来館前の連絡と手続きでつながる

OTA経由の予約であれば、確認事項の案内とあわせて「チェックイン当日の案内はこちらから」と、自社の窓口への導線を用意します。この時点でつながる理由になるのは、当日の交通案内や駐車場の有無、チェックインの開始時刻といった、来館前に知りたい実務の連絡です。

あわせて、事前チェックインを用意します。来館前に宿泊者の情報の入力を済ませてもらい、当日のフロントの待ち時間を減らします。

滞在中に使ってもらう機能を用意する

滞在中は、お客様が自社の窓口を開くための機能を用意します。

  • 館内施設の予約:レストランやスパの予約を、自社の窓口で受けます
  • 滞在中の追加の依頼:朝食の追加やレイトチェックアウト、アメニティの依頼を受けます
図3:来館・滞在中に開いてもらうLINEミニアプリのデモ画面

どれも必要があるからこそ開いてもらう理由になっていることが大事です。セルフチェックインなどでフロントの会話が減っている施設ほど、ここが次回の予約につながる接点になります。

チェックアウト後の再訪を案内する

チェックアウトのあとは、お礼のメッセージに加えて、口コミのお願いや、次回の宿泊で使える会員証の案内を届けます。そして、滞在中の体験を覚えている間隔で、次回の予約を直接呼びかけます。OTA手数料を減らすうえで、いちばん大事なのがこの場面です。滞在中に「役に立った」と感じてもらえていれば、次回の呼びかけも自然な案内として受け取ってもらいやすくなります。

呼びかけでは、お客様がOTAに戻る理由に1つずつ答えます。

OTAに戻る理由直接予約で用意すること
公式サイトの予約ページの場所を覚えていないLINEのメッセージやリッチメニューから、予約ページを直接開けるようにする
予約のたびに情報を入れるのが手間LINEログインで自社の会員情報を呼び出し、入力を減らす
OTAのポイントが貯まる自社の会員の特典が、直接予約で使えることを伝える

LINEで連絡が取れるだけでは、直接予約を選ぶ理由になりません。予約ページを開いてから予約が終わるまでの手間を、OTAと同じくらいまで減らしておくことが大事です。

OTA手数料を減らすLINEの使い方

ホテルの連絡にLINEを使う理由

チェックアウト後の連絡には、予約時に受け取ったメールアドレスを使う施設が多いと思います。ただ、メールはほかの販促メールに埋もれて、開いてもらえないことが少なくありません。自社アプリを持つ方法もありますが、宿泊が年に数回というお客様にとって、アプリを入れて残しておくのは手間が大きい方法です。実際に、アプリをダウンロードしてもらっても使い続ける人が一部にとどまる例や、アプリと予約サイト・会員管理の仕組みをつなぐのが難しく、アプリの計画が止まった例もあります。

LINEをふだん使っているお客様であれば、ホテルからの連絡も日常の連絡と同じ画面に届きます。新しくアプリを入れてもらう手間がないので、次の宿泊までの長いあいだをつなぐ窓口として使いやすい、というのがLINEを選ぶ理由です。

友だち追加のきっかけを決める

クーポンだけを理由に友だちを集めると、次回の予約にはつながりにくくなります。クーポンを使い終わると、そのアカウントを開く理由がなくなるからです。友だちの数は増えても、次の宿泊までつながっているとは限りません。

代わりに、チェックイン手続きの案内、館内・周辺の情報の問い合わせ窓口、チェックアウト後の忘れ物の確認など、宿泊そのものに関わる用件を友だち追加の理由にします。

LINE公式アカウントとLINEミニアプリの使い分け

使うものホテルでの使い道
LINE公式アカウント友だちへのメッセージ配信、リッチメニューからの各種案内、よくある質問への自動応答
LINEミニアプリLINEの中で動く画面として、宿泊予約、会員証、事前チェックイン、館内施設の予約を提供
LINEログイン自社の予約サイトや宿泊管理システムの会員情報と、お客様のLINEアカウントの紐づけ

LINEログインは、お客様のLINEアカウントと自社の会員IDを紐づける仕組みです。紐づけただけでは、リピーター比率や直販シフト率は測れません。宿泊管理システムにある予約の記録(OTA経由の予約も含む)と過去の宿泊の記録を、会員の情報と照らし合わせて同じお客様にまとめてはじめて、2回目以降の予約がどの経路から入ったかが分かります。測るときは、対象の期間と、対象にする予約(同じ施設か、チェーン全体か)を決めておきます。

ホテルでは、グループ共通の会員IDとホテルの予約システムのログインが別々で、お客様が予約と会員証で2回ログインしている例や、予約サイトの会員情報とフロントの宿泊の記録が別々に管理されている例があります。こうした施設では、LINEログインでの紐づけが会員データをまとめて使うための最初の作業になります。

LINEでできないこと・注意点

決済を伴う機能は別の契約が要る

館内での物販やクーポン販売までLINEミニアプリで行いたい場合、決済を伴う機能を追加するには、決済代行会社との契約が別に必要になります。ここが想定外の負担になって、企画が止まってしまうことがあります。決済のいらない機能(事前チェックイン・館内予約・案内・会員証)から始めて、決済が本当に必要になってから足す順番をおすすめしています。

既存の友だちのデータはすぐには使えない

LINE公式アカウントを導入すれば、既存の友だち全員のデータがすぐに使えるようになる、というわけではありません。友だちの一覧をまとめて取得できる機能は、認証済みアカウントかプレミアムアカウントに限られます。データが貯まっていくのは、連携した時点より後の行動からです。

OTA手数料と直販の使い分け

OTAをやめずに使い分ける

OTA経由の予約を、すべて直販に切り替える必要はありません。新規のお客様の獲得はOTAに任せ、一度泊まったお客様には次回の直接予約の理由を渡す、という使い分けが現実的です。ただし、LINEでつながればそれだけで直販に切り替わるわけではありません。誰に、いつ、何を届けるかは、マーケティングの担当者が宿泊者の状況を見ながら決め続ける部分です。

本部で追う数値と進め方

本部で追う数値は次の4つです。

  • OTA経由比率:予約全体のうち、OTA経由の予約の割合
  • リピーター比率:OTA経由の予約のうち、以前に泊まったことのあるお客様による予約の割合
  • LINEでつながっている宿泊者の数:友だち追加と会員情報の紐づけが済んだ宿泊者の数
  • 直販シフト率:リピーターの予約のうち、直接予約に移った割合

公式サイト経由の予約の割合を、本部の目標にしている施設もあります。まずは、OTA経由比率とリピーター比率が、自社でどこまで数字で見えているかを確かめるところから始めてください。そのうえで、いくつかの施設で接点づくりを試し、数字の変化を見てから、ほかの施設に広げる順番をおすすめします。

OTA手数料のよくある質問

OTA経由の予約は、すべて直販に切り替えるべきですか?
いいえ。新規のお客様を集める手段としては、OTAを使い続けるほうが合理的です。切り替えの対象にするのは、一度宿泊したあとのリピーターの予約です。
OTA手数料の料率は、どこで確かめればよいですか?
契約しているOTAとの契約書や、OTAの管理画面で確かめてください。送客実績に応じた費用に何が含まれるか(ポイント付与の負担など)と、カード決済の手数料や広告の費用があるかどうかも、あわせて確かめておくと試算が正確になります。
友だち追加のきっかけは、クーポン以外に何がありますか?
チェックインの案内、館内や周辺の情報の問い合わせ窓口、忘れ物の確認など、宿泊そのものに関わる用件です。便利さを理由にするほうが、宿泊後も関係が続きやすくなります。
LINE公式アカウントとLINEミニアプリは、どちらから始めるべきですか?
まず宿泊者との連絡の窓口としてLINE公式アカウントを整え、次に予約や会員証をLINEミニアプリで持つ順番が現実的です。すでに自社の予約サイトがある場合は、LINEログインでの会員情報の紐づけから始める方法もあります。
セルフチェックインを入れているので、LINEは要らないのでは?
むしろ逆だと考えています。フロントでの会話がなくなるぶん、次回の予約につながる接点が減ります。その接点を、滞在中に開いてもらうLINEミニアプリで補えます。
LINEミニアプリで館内の物販や決済までできますか?
できますが、決済を伴う機能には、決済代行会社との契約が別に必要です。決済のいらない機能から始めて、必要になってから足す順番をおすすめします。

まとめ

今回はホテルのOTA手数料のうち、リピーター分を減らす考え方を紹介しました。OTAは新規のお客様を集める手段として合理的な費用です。減らすべきなのはOTAそのものではなくリピーターにも払い続けているOTA手数料です。そのために、一度泊まったお客様との接点を、予約後・滞在中・チェックアウト後の3つの場面で自社に持ちます。まずは自社の数字で試算し、どの接点から手を付けるかを決めてみてください。

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