ポケモンカードゲームの企画開発をはじめ、ポケモン関連のデジタルゲームの開発、ポケモンの3DCG制作などを手がける株式会社クリーチャーズ。ゲームの開発環境にAmazon Web Services(以下、AWS)やMicrosoft Azure(以下、Azure)を採用している同社は、マルチクラウド環境の統制強化や、アカウント払い出しの自動化、ユーザー管理設定の自動化などを推進し、運用効率化を実現しました。本プロジェクトについてお話をうかがいました。
マルチクラウド全体でガバナンスを統一し、標準的に運用できる基盤を目指す
「つくるひとがいきる会社」を理念に掲げるクリーチャーズは、1996年の設立以来、カードゲーム、デジタルゲーム、スマートデバイス用アプリをはじめ、映像作品や書籍に至るまで、幅広い領域でプロデュース・企画・開発などの事業を展開しています。
世界的なポケモン人気を背景に、急成長を続けている同社では、プロジェクト数の増加や業務の複雑化が進んでいました。ゲームの開発環境は事業部ごとに最適なITサービスを選択するため、AWS、Azure、Google Cloudなどのマルチクラウドで構成されています。その結果、全社レベルでの統制が難しくなり、クラウド利用に対する統一ルールやセキュリティの整備が追いついていない状況にありました。
また、全社のIT環境の整備と運用を担う情報システム部には、事業の拡大に伴いさまざまな要望が寄せられ、プロジェクトの品質管理や運用の負荷が増大していました。こうした課題を受け、同社はクラウド環境の統制やセキュリティを強化し、全社レベルでの運用最適化を図ることで、各事業部が安心して利用できる環境の整備に着手しました。
「マルチクラウド全体でガバナンスを統一し、どのクラウドサービスを選択しても標準的に運用できる基盤を目指しました」(三沢さん)
「先行して利用していたGoogle Cloudでは、一定のガードレールを整備し、社内にも知見の蓄積が進んでいました。そこで、他のクラウドにもGoogle Cloudと同様の統制を適用し、全体最適化を図る狙いがありました」(竹内さん)
AWSとAzureの両クラウドに対応できるクラスメソッドを採用
AWSとAzureの統制強化にあたり、クラウドサービス全般に関する知見を持つ情報システム部では、ベースとなる基盤を共同で構築しつつ、困った時に相談できるパートナーを求めていました。そこで複数のベンダーに声をかけて検討した結果、クラスメソッドを採用しました。
AWSに強みを持つベンダーは多数存在する一方、Azureまでカバーしているベンダーは限られており、AWSとAzureの両クラウドに対応できることが選定の決め手となりました。
「当初はAWS環境の整備を優先する計画でしたが、途中でAzureの優先度も高まり、急きょAzure環境の整備を進めることになりました。ベンダー各社にAzureも一緒にやりたいと相談した中で、フットワークよく『やります』と反応してくれたのがクラスメソッドでした。当時は、クラスメソッドの社内でもAzure支援の取り組みが始まったばかりとのことでしたが、共に学びながら成長していきましょうという前向きな姿勢に期待しました」(竹内さん)
AWSの設計思想を意識しながらAzure対応を実施
プロジェクトは2025年3月にスタートし、同年10月までにAWSとAzureのそれぞれにおいて、①アカウント基盤のベース設計・構築、②チャットアプリ(Slack)からのアカウント払い出しの自動化、③ID管理・統合認証ソリューション(Okta)と連携したユーザー管理の自動化、④ネットワーク設定の自動化の4項目を実施しました。
クラスメソッドとは、要件定義の段階から密に連携し、ゼロベースで予防的・発見的統制の取れた共通基盤の構築を進めました。
「将来的な運用の外部委託も見据え、マルチクラウド基盤の標準化・自動化に着手しました。そのためには、成長に耐えうる基盤を私たちのチームが内製で構築し、自社で運用・発展させていく必要があります。そこで、クラスメソッドには、社内体制の整備に向けた支援を重点的にお願いしました」(竹内さん)AWSとAzureそれぞれのガードレールを実装するプロジェクトにおいて、大きな壁となったのがAzureへの対応です。Azureの開発経験を持つ能勢さんにとっても、管理基盤の構築は初めての取り組みでした。
「基本的にはAWSの設計思想をAzureに適用する方針で進めたのですが、やってみてAWSと同じ考え方をそのまま適用させることは難しいことがわかりました。一方、AWSでは手作業で行っている設定が、Azureは標準で用意されているというものもあり、2つの違いを理解しながら進めることができたことは大きな学びとなりました」(能勢さん)
プロジェクトは2025年10月末までに完了し、その後11月と12月の2カ月で実装した各種機能に対する受入試験を実施しながら追加要件を取り込みました。そして、①Azureとオンプレミスを接続するためのAzure ExpressRouteの敷設、②既存AWSアカウントの集約(AWS Organizationsへの移行)、③クラウド利用ガイドラインの策定の3つについても新たに実施しています。
「これらのことを短期間で進めるためにはクラスメソッドとの密なコミュニケーションが不可欠でした。そのため、毎日朝と夕方の2回、それぞれ30分程度のミーティングで進捗や課題を整理し、仕様の確認などをスピーディに進めたことが成功につながりました」(能勢さん)
事業成長を見据えたマルチクラウド基盤の標準化・自動化
プロジェクトの遂行により、最大の成果は当初の狙いどおりマルチクラウド環境の標準化・自動化を実現し「運用可能な状態」に到達した点にあります。
「まだ完成形ではありませんが、クラウド利用者が増えていく中でも、AWSとAzureそれぞれ自分たちで運用を回しながら、成長に貢献する環境が構築できたことに大きな意味があります」(三沢さん)
特に、目に見える形で成果として表れたのが、アカウント払い出しの自動化、ユーザー権限設定の自動化、ネットワーク設定の自動化などによる運用の効率化です。アカウント発行や設定作業は自動化されており、成功率も100%を維持しています。「現在はユーザーからのリクエストに対して、当日中にアカウントを用意して環境を提供することができます。自動化されているため、私が手を動かすことはほとんどなく、対応時間は10分未満に抑えられています」(能勢さん)
また、AWS、Azure、Google Cloudの3つを対象とした利用ガイドラインを整備し、エンジニア向け・非エンジニア向けの2種類を用意したことで、クラウド未経験者を含む全社員が活用する基盤が整備されたことも成果のひとつです。
クラスメソッドの「最後までやり切る姿勢」を評価
クラスメソッドに対する評価として、3人が共通で挙げたのが「最後までやり切る姿勢」です。特に、Azureへの対応でその力が発揮されたといいます。
「AWSとAzureの両方を同時に進めるのは、決して楽なことではなかったと思います。その中でも機動力を発揮し、Azureへの技術対応から、プロジェクトマネジメントまですべてをやり切っていただきました。その姿勢が印象的でしたね」(竹内さん)
「情報を的確に整理して提供いただけたことにも助けられました。情報量の多いプロジェクトでしたが、私たちの質問に対して順序立てて説明していただいたり、わからないことは持ち帰って後日説明していただいたりしました。それらのやり取りの積み重ねが社内にナレッジとして蓄積され、大きな資産となっています」(能勢さん)
「さまざまな困難も含めて、最後まで力を発揮し、成果に結び付けていただいたことに感謝しています」(三沢さん)
SecOps/FinOpsによるさらなる高度化へ
今後は新たな取り組みとしてAWS、Azure、Google Cloudの3つのクラウドを対象に、セキュリティとIT運用を一体化したSecOpsや、クラウドコストを最適化するFinOpsを進めていきます。
さらに、今回のプロジェクトで構築した基盤をもとに、他のシステム環境においても高度化を進めていく予定です。
「クラウドは私たちが運用するシステムの一部に過ぎません。最終的にはSaaSやオンプレミス、ミドルウェアも含めた全社的な統制とセキュリティ強化を実現したいと考えています」(竹内さん)
そのため、クラスメソッドに対しては、パートナーシップの強化に向けてさらなる期待を寄せています。
「事業が拡大する中で、日々新たな課題が生まれています。クラスメソッドとは、将来に向けた新たな施策を共に探す取り組みを続けていきたいと思います」(能勢さん)
「さまざまな技術支援の実績を持つクラスメソッドとの共創を通して、新しいシナジーを創出していきます」(三沢さん)
マルチクラウド環境の本格整備に乗り出したクリーチャーズ。クラスメソッドは、今後も機動力と柔軟性を生かして、さまざまなニーズに対応してまいります。


